由香さんが、引っ越して来たマンションに、
初めて行って来た。

仕事が忙しくて、引っ越しを手伝いには行けなかった。

最初から、そうは言っていたのだけれど、
何とか時間を作って、手伝いに行くつもりだった。

でも結局、時間は作れなかった。
その事を、詫びに行くつもりだった。

「引っ越しの手伝いに来れなくて、ごめんね」
ってね。


由香さんの顔を見た途端に、愛おしい気持ちが込み上げて来て、
何も言えないまま抱きしめてしまった。

由香さんも、何も言わないまま、くちびるを求めて来たので、
そのまま、二人共、動物のように成ってしまった。


「ねえ、奥さんと上手く行っていないの?」

「そんな事は無いよ。
 梅子さんとは、仲良くしているよ」

「だってさ、凄く激しかったんだもの。
 まあ、いつもそうなんだけれどさ。
 もしかして、奥さんとは、して無いんじゃないの?」

「それは、由香さんが、凄く愛おしかったせいだよ。
 オレって、すけべじじいだろ?
 オレが求めたら、梅子さんはほとんど必ず応じてくれる。
 でもさ、解かるんだよね。
 梅子さんは、そんなにセックスが好きじゃ無いんだよね」

「なに何?
 それって、どう言う事?」

「梅子さんはさ、きっと古風な女性なんだと思う。
 旦那が求めて来たら、
 応じなきゃいけないんだと、思っているんだと思う。
 だから、オレが求めたら、応じてはくれるんだけど、
 本当は、余りしたくは無いんじゃないのかなってね」

「何それっ?
 奥さんは、感じないの?」

「いや、そんな訳じゃ無いよ。
 由香さんと同じように、梅子さんも感じてはいるんだ。
 ただね、元々そんなにセックスが好きじゃ無いと思うんだ」

「ちょっと、言ってる事が、良く分からないわ」

「ごめんね、変な話しに成ってしまった。
 でもさ、オレって、セックスが大好きな男でしょ?
 由香さんも、割とそうだよね。
 男だとか女だとか、関係なくてさ、
 こんなにセックスが好きな人間って、珍しいのかも知れない」

「ねえ、今晩は泊まっていける?
 一緒に、お酒でも飲もうか?
 いろいろと話したいわ」

「そうだね。
 しばらく、一緒に飲んでないよね」

そうして、長い夜が、始まったのだ。
 

 

 

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