「ねえ、のり君、飲んでる?
 何だったら、ワインも有るよ」

「いや、このシャンパンだって、高級品だよね。
 オレ、酒飲みだから、分かるんだよ。
 今日はさ、由香さんにとっては、大切な日だよね。
 それなのに、オレと言ったら、
 詰まらない話しばっかりして、ごめんね…」

「ねえ、何で、のり君が泣くのよ~。
 わたし、言ったでしょ。
 のり君が、来てくれただけで、凄く嬉しいって!
 ねえ、泣かないでよ~、のり君、男でしょう」

「ごめん、泣いてなんか居ないよ。
 オレもね、由香さんと話したい事が、たくさん有ったんだ」

「何?
 なんでも言って?」

「由香さん、引っ越しするって、本当?
 こんなにさ、便利なところに住んでいて、
 どうして、引っ越ししなきゃいけないの?
 その事だけは、どうしても聞きたかったんだ」


「のり君、ごめんね。
 ちゃんと説明しなかった、わたしが悪かったわ。
 確かにね、ここは、とても便利なのよ。
 でもさ、今のわたしには、
 こんな便利さは、必要無いって思ったの」

「のり君さ、佐和子の家を、憶えているでしょう?
 決して、札幌の中心部って訳じゃ無いよね。
 でもさ、暮らして行く分には、何の不自由も無いでしょ。
 今のわたしにとって、
 都心部に住む意味なんて、何も無いんだと思うのよね」

「そう言えばさ、3~4日前に佐和子から、連絡が来たよ。
 のり君の事を、絶賛していたよ。
 あんなに、イイ人は、他に居ないって。
 のり君の言葉に、凄く勇気を貰いましたって言っていたよ。
 のり君、佐和子に、何て言ったの?」

「ねえ、のり君、起きているの?」


「由香さんさ、本当に、おいらの愛人に成ってくれる?」

「だから、わたしは、のり君の愛人に成るって、
 言っているでしょう?」

「本当に、信じてもイイんだよね?
 どうして、マンションを引っ越すの?」

「だからねえ、のり君の近くに、
 住んでいたいんだってば~」

「由香さん、おいらの事が、本当に好き?
 好きだって言って」

「のり君の事が、本当に好きだよ」

「由香さんの、オマ〇コを舐めたい。
 ねえ、舐めさせてくれる?」

「のり君、本当に、わたしのオマ〇コを舐めたいの?
 …いいよ。
 ねえ、二階に行こう」


…一番、肝心な時だったはずなのに、
そこから、先の事は、ほとんど憶えていないのです。

そもそも、オレが今、どうしてここ(湯河原)に居るのか?
まったく、理解が出来ない。


まだ、始発が動いている時間じゃ無い!
って言う事は、終電までに帰って来た事は、確かなのだ。

でも、由香さんは、どこへ行ってしまったんだろうか?
まったく、記憶に無いのです。


余りにも、おかしい!
おかしい事は、確かなのだ。

今、一番、先にすべき事!
それは、由香さんに電話する事。

それは、確かなんだけれど、
今は、いったい、何時なんだ?

どうして、こんな時間なんだ?


(終わり)
 

 

 

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