元三大師関連寺院(一)【4】浮岳山 深大寺(東京都調布市)No.2 | 遊行聖の寺社巡り三昧                            Yugyohijiri no Jishameguri Zanmai

私は鬼大師像を拝観した後、寺内で撮影した親友の背後に、『元三大師』という文字と日干しになった飛蝗の妖しいシルエットを発見したのです。

「はて、どこかで見たような?」

それが同年初頭、上野寛永寺両大師(前述)に貼られていた角大師だと気づくのに時間はかかりませんでした。

もちろん鬼大師も元三大師良源の変身形態なのですが、このふざけた姿の角大師が都内でも著名な深大寺と上野寛永寺で祀られていることに驚きを禁じ得ませんでした。

「角大師とは一体何者?」

いくら信心に不熱心だったとは言え、60年も生きて来て、これだけ不思議な姿をしたお大師様を知らなかったのは汗顔の至りです。

そもそも大師なるものは、関東においては川崎大師、年末年始にテレビのCMで観る西新井大師、佐野厄除大師ぐらいで、大師自体が何者であるかも気にも留めていませんでした。

ここから元三大師研究の旅がはじまったのです。

「言われてみれば確かに気になる」『タモリ倶楽部』のノリだったかもしれません。

しかし研究者たる者、まずは資料や文献の類を収集することから始めなければなりませんので、直ぐに授与品売り場へ行って角大師グッズを捜すことにしました。

これは絵馬ですが、厄除元三大師として吃驚お目目のとぼけた角大師が描かれています。

この目の描き方は先に出した上野寛永寺の角大師とほぼ同一なのですが、本来の深大寺に祀られる角大師は、下のシール護符に描かれたパターンが多く見受けられます。

おそらくこちらが旧式の護符の描き方で、絵馬の角大師御姿は寛永寺に倣って、近年少し可愛らしい姿に変えたのではないかと私は想像しています。

みうらじゅん氏が命名した「ゆるキャラ」ブームに乗っかろうとする深大寺側の思惑が見え隠れします。

しかもここで新たな難敵となる豆大師が忽然と姿を現したのです。

後に上野寛永寺にも豆大師護符があることを知るのですが、この時はたくさん並んだ坊さんに何の意味があるのか全くわかりませんでした。

どちらも元三大師の名があり、その後に「降魔札」と「利生札」と書かれています。

降魔とは釈迦八相の一つで悪魔を降伏させること、利生とは仏や菩薩が衆生を救うことを言うのですが、深大寺では角大師と豆大師が対になって機能することを知りました。

降魔である角大師は魔物を家に入れないため玄関の外に貼り、利生である豆大師は家内に福をもたらすよう玄関の内に貼ると書かれています。

角大師と豆大師の護符をセットにしている寺院は多いのですが、明確に意味と貼り方を指示しているのは深大寺ぐらいで、双方とも外に貼ったりする地域もあるようです。