今日観たのは戦時中の映画!

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この画像だけでも、当時の日本がどれだけ領土を広げていたかが分かりますね。

『阿片戦争』(1943年)。
監督はマキノ正弘、特殊技術は円谷英二!

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ご存じ、イギリスと中国の戦争ですが…
当時はイギリスと戦争中の日本ですがから、徹底的に悪者に描いてます。
要するに国策映画。プロパガンダです。

イギリス国旗もご覧のとおり。

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海賊旗っ!!

中国へアヘンをどんどん輸出していた英国印度総督府。
本国はこれを良しとせず非難していたが、せっかくの金づるを手放すわけもなく、さらに買ってもらおうとチャールズ・エリオット(青山杉作)とその弟で海軍将校のジョージ・エリオット(鈴木伝明)は広東へ。

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戦時中で外人を使うワケにもいかず、みんな日本人俳優っす(^^;

中国ではアヘン禁止令が出て、アヘンは重罪でしたが、裏社会では蔓延。
その最大市場が丁徐伯(小杉義男)が経営するアヘン窟。
阿片監視局局長である許沈伯(清川荘司)までもこのありさま。

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アヘンを万病の薬と信じる姉妹の姿も。
盲目の妹・麗蘭(高峰秀子)を直したい一心の姉・愛蘭(原節子)。

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ある日、皇帝の命を受け林則徐(市川猿之助)が広東総督府に派遣されてきた。
彼はさっそく身分を隠してアヘン窟に潜入。
総督府の堕落ぶりを目の辺りにする。

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自分の身分を明かす林則徐(右)

いよいよ林則徐の取り締まりも厳しくなります。
部下の穆資英(河津清三郎)と陳南田(坂東好太郎)も張り切ります。

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混乱の中、姉妹の前でアヘン中毒の浮浪者・林牙梁(丸山定夫)が倒れた。
水…みず…
苦しむ男を助けようと、愛蘭は水を探しに。

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その隙に、林牙梁は麗蘭が持っていた薬(アヘン)を奪ってしまう。
さらに麗蘭を拉致。
もっとアヘンが欲しい林牙梁は丁徐伯の元を訪ね、麗蘭とアヘンを交換してしまう!

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ちなみに丁徐伯を演じる小杉義男(↑左端)は特撮ファンならご存知ですね~
『キングコング対ゴジラ』ではファロ島の酋長、『モスラ対ゴジラ』ではインファント島の長老。
『ウルトラQ』の「悪魔っ子」では魔術団の団長と、あの恐い顔は一度見たら忘れられません(^^
のちに『キングコング対ゴジラ』でキングコングのスーツアクターを務める広瀬正一さんが、この頃ソロモン海戦で激戦の真っただ中だったと思うと、人生分かりませんね。

一方、愛蘭は広東総督府に助けられていた。
エリオット兄弟らを招待した宴席で舞を披露する愛蘭。

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そして林則徐はエリオット兄弟たちにもうひとつ余興を用意していた。
それは…

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印度総督府が隠していたアヘンをすべて燃やしたのだ!

こうして英国商館がある十三行からイギリス人たちは洋上の英国船に移った。
そして丁徐伯らアヘン売買に関わった中国人は捕えられ死刑に…

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麗蘭も丁徐伯らと一緒に捕えられたが銃殺ギリギリのところで救出!

林則徐は十三行の警備を徹底するよう指示するが…

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アヘン中毒者が十三行に放火してしまった!
計画がご破算になってしまった林則徐…

怒ったエリオットはじめイギリス人たちはついに洋上から攻撃を開始。
こうしてアヘン戦争は幕を開けてしまったのでした…


さて、中毒浮浪者・林牙梁を演じた丸山定夫。

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戦前からエノケンらとともに活躍し、文豪・太宰治とも親交あった名優です。
この作品の2年後の1945年(昭和20年)、内閣情報局が奨励していた移動慰問劇団を結成。その名も「移動演劇 桜隊」!
全国の人々を励ました彼等を悲劇が襲います。
8月6日、桜隊のメンバーは広島市堀川町に滞在していました。
そこで原爆の被害に巻き込まれました。
即死は免れたものの、原爆症は体を蝕み、8月16日に亡くなりました。享年44歳。

ほかにもメンバーの高山象三が8月20日(21歳)、園井恵子(32歳)が高山と同じ病院で翌21日に、仲みどりも24日に死去(36歳)。
仲みどりは、死後ただちに解剖され「医学上認定された人類史上初の原爆症患者」となりました。
ほかにも5人のメンバーがいましたが、原爆により即死だったそうです。
広島平和大通りには桜隊殉難碑が立っています。

園井恵子は岩手県出身の元タカラジェンヌ。
以前紹介しましたが、彼女の故郷には園井恵子の像があります。

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ちなみに、多々良純も桜隊のメンバーでしたが召集されたため無事でした。
その後も名バイプレーヤーとして活躍しましたね。
特撮系だと『帰ってきたウルトラマン』『10-4・10-10』『キカイダー』『ギャバン』などなど。

だいぶ話が反れちゃったけど、日本映画史にはこういう悲しい出来事もあったってことを知っていただけたらとおもいます。


最後にもうひとつ。
この映画の冒頭。東宝マークの前に出てくるのがこの映像。

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この映画を配給した「映画配給社(映配)」。
戦時統制により設立された会社で、すべての映画はこの映配を通してしか上映することができませんでした。
とにかく戦時下では映画も厳しい監視のもと作られてたんですね。

結局、戦争はイカンのです。