《at 少佐の書斎》
少: ワレギエナがベルリンの
シャリテー大学病院にいたのか
R: ベネシュというスロバキア人の
病室にいたそうです
少: ベネシュ...
少佐 パソコンに向かう カチャカチャ
R: ローザ女史が見かけたのは
一日だけだったそうです
少: ヴィート・ベネシュ
またの名をミハイル・シードロフ
こいつだ
R パソコンを覗き込む
少: スロバキア人ではあるが、
冷戦時代からロシアの核開発に
関わっている
お前 アダモフ事件は知っているな
R: この間スイス当局に逮捕された
ロシアの元原子力相ですか
少: フム
そいつは米国の国際手配に基づいて
逮捕されたんだが
R: 米国の対露援助の
一部横領の疑いでしたね
一部といっても900万ドル(10億円)
でしたっけ
〖今なら約13億5ooo万円〗
少: アダモフはロシアの原子力、
核分野の内情を
熟知する立場にあったから
ロシアはアダモフの
身柄引き渡し阻止に必死だ
R: で、このシードロフって?
少: アダモフが設立した会社の責任者だ
R: ということはアダモフの会社を通して
イランへ流された核関連情報が
どういうものか、
シードロフも知っている
ということですね
少: そうだ
アダモフに関しては
米国への引き渡し阻止が困難なら
情報機関による暗殺もやむなし、
という声がある
ロシアの安全保障に関わってくる
R: ではこのシードロフにも暗殺命令が?
少: シードロフの入院の理由は?
R: 毒物性肝炎だそうです 多分ヒ素による
少: なんと東欧的な
R: シードロフの病室に Nadia...
Why was she in the hospital?
少佐 Rを見る
少: そこが問題なのだが ひと息いれよう
ワインでも飲むか?
R: いえ 飲みたくありません
少: そうか じゃあ、コーヒーだ
執事に入れさせよう
《at 客間》
テーブルにコーヒーとパンケーキがある
少佐 タバコを吸っている
執: Rさん じゃがいものパンケーキは
お嫌いですか?
R: いえ そんなことは..
執: 私が焼いたのですが
R: いただきます
R ひと口食べる
R: ・・・
執:シナモンシュガーではなく、
リンゴソースの方がよろしいですか?
R: あ いえ なんか.. 胸がいっぱいで
少: ワレギエナのことが気になって
ケーキも口に入らんのか
R: は.. あ
執事 退室
少: スロバキアはシードロフを
生かすつもりか 殺すつもりか
生かすとしたら、どう取り扱うか
政治的に利用してアメリカに
恩を売るつもりか
それともロシア側に配慮するか
R: スロバキアはEUに加盟して
近い将来の NATO加盟も
視野に入れてますから
アメリカへの協力を優先するのでは
少: そうとは限らんぞ
現に毒を盛られとるんだ
体制が変わったからといって、
人間が全て入れ替わる訳ではない
シードロフはアダモフの会社の金庫番だ
安全保障問題に関わらず、
ロシアやスロバキアの政財界の中には
シードロフからしゃべられたら
不都合な連中が少なからずいるだろ
ましてスロバキアの情報機関は
ロシア寄りだ
R: でも Nadiaはシードロフを
暗殺していません
少: まだ暗殺してないとも言える
ワレギエナの目的は暗殺か 護衛か
いずれにしても
ドイツに来るという危険を
冒してまでの任務ということだな
R: 少佐.. 少佐は Nadiaのことを
空軍に連絡しますか?
少: ・・・
R: 少佐?
少: うむ 難しいところだな..
R: ・・・
少: NATO情報部としては
シードロフの暗殺阻止を優先させるが
R: “ほっ!”
あの.. 少佐のお手持ちの
スロバキアの情報を教えては..
いただけませんでしょうか?
少: ・・・
R: 出来る範囲で
少: 聞いてどうするんだ?
R: あ いえ どうもしませんが...
ただ気になって
少: フン!
少佐 タバコ スパスパ スパ
R: 駄目ならいいんですが
少: ローマ法王があさってからケルンに来る
R: あ? はい 初めての外遊でしたね
少: BとCが食中毒だ
R: 食中毒...
少: この時期 食い物には気をつけろよ
R: 分かりました ケルンに行きます
(交換条件か)
少: フム 休暇の残りは改めて取ってもらうが
《at 再び 少佐の書斎》
少佐 パソコンを操作
R: これベルリンの市街地図ですね
地図 アップ
少: 旧東ドイツの中心部にあたる
ミッテ地区だ
この地図の北側
パソコンを操作 カチャ カチャ
R: この辺 大通りは新しくなったけど、
少し横道に入ると
東ドイツ時代の
古い町並みなんですよね
少: フム まあ..
ドイツ経済が失速しとるからな
..と ここだ
画面に古い建物が出る
R: ここは?
少: スロバキア航空のオフィスが入っとる
同じ建物にスロバキアの
人材派遣会社も入っとる
R: 人材派遣会社..
少: スロバキア人の就業斡旋をする が、
会社の半分以上の人間は
情報関係の仕事をしている
たいして目立った動きはなかったが
半年前 ある女が所長になってから、
活動が急に活発になった
R: やり手の女所長ですか (ドッキン!)
少佐 再びパソコンを操作
画面に黒髪にほくろの女の写真が出る
R: Nadiaじゃない.. (ホッ..)
少: おれはこの女に会ったことがある
R: 何処でですか?
少: イフラバのバスターミナルだ
R: あ..
少: その時はブロンドでほくろもなかったが
R: パープルパンサー
執事 時計を手にして
書斎のドアをトントン
少: 入れ
執: Rさん そろそろ出かけないと
飛行機に遅れますよ
時計を指す
R: 今日はミュンヘンには
帰らないことになりました
執: 双子さんのお見舞いは?
R: またの機会に
(ママ、怒るだろうな)
少: R 夕めし いっしょに食っていけ
執: それはいいですね
いただいた白ソーセージと
レバーケーゼをお出ししましょう
ご主人さま ワインは何を?
少: フランケンワイン
R: じゃ 私 スープでも作ります
執: それはありがたい
R: さっきお庭でスープによさげな食材を
見つけたんですけど
少: (ドキッ!)
執: 庭で?
少: R! 食材は厨房にあるものに限る
これは命令だ!
R: は.. はい
執事 R 退室 パタン
少: 全く 油断も隙もあったもんじゃない
何を見つけたんだか..
と、言いながら 携帯 ピッ ピッ ピッ!
少: ...Aか おれだ
BとCの代わりにDとEを入れると
言ったがDを外してRを入れる
休暇中? 話はついとる
...おれか?
おれは明日からDとベルリンへ行く
携帯 ピッ
少佐 タバコを取り出して
少: Rのやつ このまま休暇を取らせたら、
一人でベルリンへ行きかねん
当分ベルリンからは遠ざけておくに限る
タバコに火をつけて カチッ
窓際へ
少: アダモフの方は身柄を巡って、
アメリカとロシアが必死の駆け引きを
しているが..
ヴィート・ベネシュか
こいつがドイツにいる間に両国とも
何らかの手を打ちたいと
思っているはずだ
しかしこれに
スロバキアの思惑が絡むとなると...
ベルリンでの仕事は微妙に難しくなる
少佐 窓から庭を見て
少: スープにしてうまい食材って.. 何だ?
To be continued