【第2991回】



マツコ・デラックスさんが


映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

(2000年)をベストワン映画だ

と称したことで


少し話題になっていました。


いわゆる「鬱映画」という

評判の高い映画で


ネタバレは一切なしで

見てもらいたいですが


僕がこの映画をスゴイ

と思う点は以下です。


まず、ミュージカルという

概念をストーリーに

一切矛盾なく挟むことに


成功していること。


つまり、映画の

現実感にまったく損傷を

加えていないので


心像のリアルさが

一層、際立っています。


そしてもちろんのこと

ビョークの演技が度を越して

そのものになっており、


彼女の楽曲の素晴らしさが


そのままストーリーの

苦しさを倍加させるのです。


見る人によっては、

ムカつくストーリーであって


僕も「二度と見ない」と思う

人間のひとりになります。


ただし、その印象は

鮮明にこびりつくので


二度見ないとわからない

という感覚がないだけです。

 

 

(ちなみに、これは

 

重要なことですが

 

以前、この映画の監督を指して、

 

ビョークが酷いセクハラに

 

さらされたことを告白しています。

 

よって、この映画の感動は

 

ビョークというアーティストによって

 

もたらされたと考えています)





マツコさんが「ベストワン」

と言う理由もわかるのは


好きでゲイとして

生きているわけではない


彼女の生き方と合致している

のだろう、というところです。


この映画の主人公同様


率直に生きることが

そのまま罰になるような

人生にとって


想像の世界だけが

救いになるという悲しさは

深すぎます。


そういう意味で、

彼女がベストワンと宣言する


気持ちを解釈しても

良いでしょう。





僕にとっては、


ビョークという

天才ミュージシャンが

映画の主人公になったことで


翌年「ヴェスパタイン」

という大傑作アルバムを


完成させたことが

大きく感じます。


彼女の歌声の素晴らしさ、


楽曲「ペイガン・ポエトリー」や

「オーロラ」の宇宙観は

飛びぬけており、


最近流行りの歌姫らなど

しょせん能力が高いだけだと

思わされるのです。


映画自体をどう位置付けるか

人によって様々でしょうが


僕にとっては大事な

このアルバムのための


貴重な体験だったのだろう

と思います。


個人的な意見として

ご参考まで。