【第2811回】



感情転移とは、来談者がかつて誰かに抱いていた感情を

カウンセラーに向けることである。

(中略)

父の愛を求めて得られなかった女性がカウンセラーに父の愛を求める、

母を恐れている来談者が女性のカウンセラーにびくびくする、

父を軽蔑している青年がカウンセラーにも類似の感情を向ける、

などがその例である。


感情移転をされたカウンセラーはそのことに気づかないと、

自分は愛されている、自分は馬鹿にされているとひとり合点しがちである。



(p.111「カウンセリングの技法」

 國分康孝 誠信書房 1979年)

 

 

 

引用は無意識の話です。


なので、数的な証明は

ありませんが、


根気よく会話を続ければ


人に対する気持ちや態度の

根本となる意識として


引用の様な経験が

出てくるのです。


他者から見て、

理不尽にも態度が

豹変する場合など


過去の体験との関連が

トリガーとなって

現れると言えます。





そのように考えれば

わかることですが、


感情転移は、

カウンセラーだけに

起こる事ではありません。


誰にでも関係を結ぶ事で

起きる問題です。


愛や恐怖や怒り、軽蔑など


実際の関係性からは

起きていないかもしれません。


依存的な態度を取る相手などは

確実にこのパターンです。


過去の清算されていない

関係性を


現在の関係性で

解消しようとしますが


そこに現実的な

差異があるが故

決して解消されません。


だから依存となるのです。


このことを理由に、

精神科医が患者と恋愛する

べきでもありません。


このテーマの前回の記事で

述べたような対抗感情転移


という患者に

「巻き込まれた」状態では

治療とは言えないでしょう。





それでは一般が

恋愛しようにも

どうにもならない


感じるかもしれませんが、


始めが依存であっても

構わないと思います。


2人の関係性は

現実的な問題によって

必ず試されるからです。


その時に、互いが

真に自分自身であることを

認め合うように


心掛けなければなりません。


もちろん、ただ生きていても

こんなことは容易に

解決できないでしょう。


だから引用の様な、学問が

必要になるのです。


大人として、

人生に向き合うなら

避けて通れません。


ご参考まで。