ものすごい人がいました。昨夜は露出の目的ではなく、半分仕事で深夜のハンバーガ屋さんにいました。ボーとしながら、ときどきメモをする程度です。家にいると本を読んだり、テレビを見たりしてしまうので、本当に集中したいときには、そうして外に出るんです。もちろん、露出のチャンスを待つというのもあるんだとは思います。
 私が入ったときには、お店には数人のお客さんがありました。ところが、二杯目のコーヒーを注文しにカウンターに行ったときには、私と女の子と中年の業界系の男の人の三人だけになっていました。
 テーブルは違うのですが、私たちは横一列に並んでいます。女の子は携帯と格闘中でした。
 向かいの席も空いてはいたのですが、いまさらかわるのもおかしいと思い、そのまま自分の席にもどりました。
 そのときに見えたのです。男の人の下半身です。一瞬、目を疑いました。オチンチンではありません。下半身すべてが見えたのです。足の先まで見たのですが、素足なんです。
 私はあわててカウンターに目をやりました。お店の人は気づいているのかと思ったからです。でも、カウンターからはテーブルで死角になっているようなのです。
 男の人は私がその状態に気がついたことを知りません。彼は私よりも、さらに近い席にいる若い女の子に夢中だったからです。私と男の人の間には五人分の椅子があります。しかし、女の子と男の人の席は隣で、わずか椅子一人分しか離れていません。
 男の人が私のほうを向くより一瞬早く、私はテーブルに座り、コーヒーのふたを開けました。なるほどテーブルに座り、肘をテーブルに置いた状態では見え難いようなのです。
 私はベンチ型の椅子の席を横に移動し男の人から離れました。距離は離れるけど、斜めに座る形になるので、今度は横が見やすくなります。
 男の人には悟られないよう、ゆっくりとそれをしました。そして、まずはオチンチンではなく、周囲を見たのです。でも、ないんです。どこに脱いだのかパンツがないんです。
 下半身スッポンポンのまま、男の人は女の子のほうを見ながらオナニーしていました。ゆっくりと右手を上下に動かしています。オチンチンは大きな男の人の片手にすっぽりと隠れるほどの大きさです。あまり大きいほうではないと思います。
 手の白い男の人なのにオチンチンは対照的に黒く、先端まで黒い皮がおおっていました。
 私のほうを振り返りましたが私はもう平気でした。じっと彼を見ていました。コーヒーを口にしながら。ただ、その目は男の人の行動に驚いてどうしていいか分からないという雰囲気を漂わせています。少なくとも私はそのつもりでした。
 男の人は、空のカップを左手でつかみ、オチンチンの先端に持って行きました。そして、射精したのです。驚きました。私の目を見てニコッと笑い、人差し指をたてて口のところに持っていきます。私に黙っていてと合図しているかのようでした。
 そんなことがすぐ隣で起こっているのに、女の子にはまったく気づく様子がないのです。メールでも打っているのでしょうか、相変わらず携帯に熱中しているようでした。
 男の人は器用にテーブルの下でスウェットのパンツをはきました。彼のお尻の下にそれはあったのです。
 そして、そっとカップを女の子のテーブルに置くと、出て行きました。
 私には、それを教える勇気はありません。別に男の人が私と同じ露出趣味らしいから味方をしたというわけではありません。何もできなかったのです。
 しばらくボーとしていましたが、その間に数組みのお客があり、いつの間にか彼女はいなくなっていました。テーブルの上のカップもありません。誰れがいつ捨てたのかは見損ないました。