突然青少年のための大人の短編小説

タイトル「ペニスバンド・ロックンロール」

監督の指示が飛んだ。
高崎はあんなにカッコつけたクセに、ベンチに呼ばれて蒸し暑い梅雨時期の6月にベンチコートを羽織らされた。
いや、そんな事より今僕は監督が居たことに物凄く驚いている。

「お前、いけ」

真新しいユニフォームに適度な洗剤を混ぜてヌルヌルさせ、万全の状態で僕は試合に出場する事となった。
と言っても、大事な選手交代のカードの一枚として僕が切られたわけだ。
ここで僕がメンバーの足を引っ張っては申し訳ない。

そう思った僕はその緊張感から、終始消極的なプレイを繰り返した。

「おい!今オレが絶妙のクロスを挙げたのに、何でチンポ出してねぇんだよ!」

レフトサイドルチャドールのトルネコ先輩が青筋を立てて怒り狂っている。
もちろん、チンポの話だ。

それでも試合は新プッシーアナライザーの杉浦先輩の「浄水器販売」の前にヘルレイザーズ攻撃陣は完全に浮き足立っている様子で、今日もレフトアタッカー鮫島先輩の「女工哀史」が立て続けに決まり、完全に龍艦砲ペースで進んでいた。

気付けば92-0の完全勝利。

翌日のスポーツ新聞には「完全無欠!龍艦砲!」の文字とフリー60分6000円という格安料金の広告が躍り、3日後の姉妹校対決に両陣営の気運も高まっていた。

東京都予選の決勝は、タイトルマッチである。
決勝前夜、私達は調印式の会場である赤坂プリンスホテルからほどよく離れた電灯の明かりが物悲しい公園にいた。
龍原砲の口だけ番長と呼ばれるレフトヴァージンブレイカー金子が

「試合に勝ったら、ロードを熱唱します!」

と宣言すれば、ウチのトシちゃん…失礼、田原俊彦先輩も

「試合に勝ったら、哀愁でいとを熱唱します!」

と負けてはいない。
両校の『ペニスびんびん物語』はいよいよ最終章を迎えようとしていた。

僕は準決勝の醜態を、試合後誰からも非難される事は無かった。
前日に渡された年賀状にはスターティングオーダーが書かれてあり、僕の名前も記されてあった。
これは公式ルールブックによる公式ルールである。

そのような事実が、僕をさらに追い込んだ。
俯いて、何も語らずに萎んでしまえればどれだけ楽な事だろうか。
僕の選択肢は何とかして上を向き、結果を出す事しか残されてはいなかった。
誰の助けも借りず、たった一人で…。

真っ白な頭と真っ暗な未来のコントラストが絶妙だった大荒れの天気の試合前日、僕は軋むベッドの上でパイプカットという荒療治を施したのだった…。