トランプ大統領は、就任以来、次々と様々な新政策を打ち出している。中でも、相互関税を始めとする関税攻勢は、世界経済を混乱に陥れている。
韓国では、4月4日、憲法裁判所は、尹錫悦大統領の弾劾を妥当とする決定を下した。その結果、大統領は失職し、60日以内に大統領選挙が行われることになった。
アメリカと韓国に共通する問題は何か。
アメリカの共和党の基本的な考え方は、「小さな政府」である。経済など、民間のことは民間に任せ、政府の介入をできるだけ減らそうとしている。
「小さな政府」の典型は夜警国家である。政府の役割を国防や治安維持などに限定するというものである。
アメリカの国際的影響力についても、トランプは、低下させるような政策を提案している。アメリカの偉大さは、戦争や災害のときに世界中に迅速に駆けつける意思と能力を持っていることにある。
ところが、トランプはUSAID(国際開発局)を解体してしまった。この組織は、東日本大震災のときにも日本に救援に駆けつけた。今回のミャンマーの地震で、アメリカの出動が遅れたのには、USAID解体の影響もある。メリーランド州の連邦地裁は、3月18日、USAIDの解体を違憲とする判断を下している。
4月4日、韓国の憲法裁判所は、尹錫悦大統領の弾劾は妥当だとする判断を裁判官全員の一致で下した。大統領側は、この判断を「政治的」だとして批判しているが、この決定を受けて、大統領は失職し、60日以内に大統領選挙が行われる。
相変わらず、韓国政治の伝統的な混乱が繰り返されている。政権交代したら、前政権を徹底的に叩く。こうして、韓国は左右に二分されてしまっている。新政権は、前政権と真逆なことをやることに意義を見いだす。
この点は、アメリカも同じで、トランプはバイデン政権の政策を否定することに全力を挙げている。地球温暖化対策のパリ協定から離脱したり、LGBTを否定したりしているのが、その典型的な例である。
アメリカも韓国も大統領に巨大な権限が集中している。トランプの独裁者ぶりは、プーチン大統領や習近平主席も顔負けするくらいである。政治制度として、大統領制に問題があるのではないか。
モンテスキューは、三権分立を唱えて、立法府や司法府が行政府の独走にブレーキをかける仕組みを想定した。しかし、行政府と同じ政治勢力が立法府を支配する今のトランプ政権のような状況では、議会に期待できない。最高裁判所もトランプが任命した保守色の強い判事が多数派を占めると、チェック&バランスが効かなくなる。
その点、日本やアメリカのような議院内閣制のほうが、ブレーキが効く。間接民主主義のほうが安心である。
ポピュリズムが跋扈する中で、直接民主主義の危険性は高まっている。民主主義は現代のロベスピエールの出現を阻止できるのであろうか。