岸田文雄という政治家 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 岸田文雄とは、国会議員や閣僚のときに一緒に仕事をした。第一次安倍改造内閣、福田内閣では、彼が内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、規制改革、国民生活、科学技術政策)で私が厚労大臣だった。

 物腰も柔らかで、そつがなく、論戦を好まず、まさに紳士といった感じであった。政策能力も抜群で優秀であるが、とにかく目立たない。

 野人が多い政界では、例外である。閣議の席でも、岸田が重要な発言をしたという記憶がない。野人が多い政界では、例外である。

 いま思い出しても、石破や菅とは違って、言い争ったり、喧嘩したこともない。端的に言えば、岸田とは「面白いエピソードがない」のがエピソードである。

 岸田の伯父は宮沢喜一元総理である。宮沢首相にはたいへんお世話になり、酒の席もよく一緒にしたことがあるが、岸田の父君、岸田文武元衆議院議員も同席することがあった。宮沢がいつも「文武さん、文武さん」と言って語りかけていたのを思い出すが、「文武さん」も大人しい政治家だった。

 宮沢一族は酒が強い。文男もまたよく飲む。祖父も衆議院議員だったので、彼は3代目で、まさにサラブレッドである。衆議院議員の宮沢洋一は従兄弟である。

 第二次安倍政権になって外務大臣に抜擢され、長い間その職に止まった。河野太郎のような政治家なら、外務大臣というポストを自己アピールの材料として使い、目立つことをする。しかし、岸田は、外務官僚の用意した原稿をそのまま読み、一字の間違いもないし、アドリブなどはもちろんない。役人は喜ぶが国民受けはしない。

 岸田の洗練された感じは、世界各国と外交を行うのには最適であったろう。しかし、それが宏池会の「お公家集団」の欠陥とも言われる。岸田は、まさに宏池会を絵に描いたような存在である。政治思想もリベラルであり、先輩の古賀誠のような護憲的色彩も強い。

 私は、福岡県の出身なので、古賀誠、麻生太郎、山崎拓という一癖も二癖もあるような政治家と同じ地元である。この三人の抗争は県政のみならず国政をも動かしてきた。今回、麻生が管支持に回ったのも、古賀との因縁もあるようだ。

 先の参議院選挙で、岸田派の溝手顕正という現職議員が立候補するのに、河井案里という官邸に近い候補の擁立を許してしまった。派閥の長としては、これは阻止せねばならなかった。今、河井克行夫妻の公職選挙法違反で逮捕されているは周知の事実である。

 彼の広島の選挙区に応援に入ったこともあるが、市の繁華街で毎日地道に街頭演説を行っていたことが印象に残っている。まありマスコミなどで目立ったパフォーマンスはせずに、地味な地元活動をおこなっているのが印象深かった。

 岸田は国民的人気はない。しかし、イデオロギー過剰の安倍時代の次には、パフォーマンス先行ではない彼のような人がトップに立つと、日本の政治が変わるのではないかと思う。小池都知事に代表されるようなポピュリズムが政治を歪ませているからである。

 極右が横行する世界や日本では、岸田のようなリベラルな政治家が必要である。