北方領土を武力で奪還できるか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 丸山穂高議員が戦争で北方領土を取り返すという発言をして、物議を醸しているが、日露交渉の現状をしっかりと把握しておく必要がある。

 ロシア側は、北方領土は、第二次大戦の結果、ロシア(当時のソ連)が獲得したものであり、不法な占拠ではないと主張している。ラブロフ外相は、「北方領土」という呼称も批判しているし、1月16日の記者会見では、国連憲章107条(旧敵国条項)に言及し、「日本は第二次世界大戦の結果を認めない唯一の国」と批判した。そして、日露関係は「国際関係でパートナーと呼ぶにはほど遠い」と厳しい見方をした。

 このようなロシアが二島を日本側に引き渡すのは、一つの恩恵を与えることを意味し、経済支援など何らかの見返りが必要だとロシア側が考えて当然である。この論理を突き詰めれば、かつてアラスカをアメリカに売ったように、自らの領土を売却するということになる。

 二島の引き渡しにしても、歯舞島には軍関係者しかいないが、色丹島には約三千人のロシア人が住んでおり、土地の所有権をはじめ、彼らの処遇をどうするのか、旧日本人住民の権利や賠償をどうするのかといった様々な問題が出てくる。

 北方領土解決策としては、従来の四島一括返還論と「二島+α」論がある。後者は、「平和条約締結後に歯舞・色丹二島が返還される、その後、国後・択捉については協議を進め、共同で開発を進めたり、日本人の自由往来を可能にする措置をとったりする」という考え方である。

 四島一括論を弊履のように捨て去ると、それは他の領土問題にも影響する。竹島や尖閣諸島は、それぞれ韓国と中国が領有権を主張している。日本は容易に主張を撤回する国と見られれば、韓国や中国はますます態度を硬化させるであろう。

 しかし、四島一括返還に固執すれば、一島たりとも永遠に戻ってこないという観測もまた成り立つ。つまり、時間が経てば経つほど、北方領土のロシア化が進み、返還はますます困難になる。従って、二島だけでも帰ってくるときにチャンスを逃すなというわけである。

 いずれにしても、平和条約締結・北方領土問題の解決はロシアという相手との交渉次第である。両国の国民世論をはじめ、乗り越えなければならないハードルが山積している。戦争で取り返せるような状況ではない。