キャッシュレス比率(2016年)は、韓国(96.4%)、イギリス(68.7%)、中国(正確な数字はないが、60%超)、スウェーデン(51.5%)、アメリカ(46.0%)、フランス(40.0%)、日本(19.8%)、ドイツ(15.6%)となっている。
政府は2027年6月までにキャッシュレス比率を40%に引き上げる計画であるが、日本では偽札がないこともあって、現金に対する信頼度が高い。また、日本は治安が良く、犯罪が少ないので、現金を持っていても安全だ。
店舗側にとってはカード加盟店になるには、導入コストも手数料も高すぎる。日本では手数料が4〜7%であるが、中国の銀聯の場合、0~0.55%にすぎない。また、利用控えなどの紙を発行する手間も余分である。しかも、現金化できるまで半年〜1ヶ月待たねばならないことも問題である。
消費者にとっては、カードなどを扱っていない店舗があるのは不便である。また、大規模通信障害のような事態になると、使えなくなってしまう。カードの場合、年会費なども発生する。
また、中国と違って決済会社の数も多いし、様々な決済手段があり、中国のようにスマホだけで全て済むというような便利さがない。多様な決済手段があっても、それらが相互に使えるようになっていれば使い勝手がよいが、個々バラバラの現状であり、利便性に欠ける。
以上のような点を考慮に入れると、日本では現金に軍配が上がってしまうのである。日本はATMがどこにでもあり、容易に現金が手に入るが、ATM 維持のために、金融機関には年間2兆円のコストがかかっている。
まとめると、キャッシュレスが進まない理由の第一は、カード会費、手数料などがかかることである。とくにデフレ下では、このコストを凌駕するプラスがなければ誰も使わない。ポイント還元セールが終わったら、また元の現金決済に戻るであろう。
第二は、カードやQRコード決済の安全性に関する不信である。ハッキングやシステム障害などが起こった場合に、個人では防ぎようがない。
第三に、プライバシー保護である。収入を税務省が把握するのは当然だが、どのように自分のお金を使うかは個人の自由である。おかみに支出データまで管理されるのを容認する日本人はいない。皮肉を言えば、もともと政府が個人データを管理する中国だからこそ、モバイル決済が進んだのかもしれない。
第四に、お年玉やお賽銭まで、QRコード決済することに心理的違和感があるのではないか。北海道に生活拠点を置いたとき、香典に領収書を発行する習慣に面食らったが、それと同じような感覚である。
キャッシュレス化には多くのメリットがあるし、ニーズもある。しかし、ポイント還元政策のみでキャッシュレス化が進むわけではないし、政府が強制的に国民に押しつけるべきものでもない。金融機関やキャッシュレス決済事業者の一層の努力が前提である。