激化する米中覇権争い | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 1月29日、アメリカ司法当局は華為(ファーウェイ)を起訴し、カナダ政府に対して孟晩舟CFOの身柄引き渡しを要請したが、これに中国政府は猛反発し、米中摩擦が激化している。

 これは、世界システム論から見ると、1945年に始まったアメリカ主導の国際システム(パックス・アメリカーナ)が、100年後の2045年には中国の天下(パックス・シニカ)に変わるのではないかということである。

 この国際政治理論は、歴史上の事実から「覇権の交代は約30年続く戦争をきっかけとする」と指摘している。今まさに米中が貿易「戦争」に突入しており、これが30年近く続いて、2045年頃には世界のトップの座がアメリカから中国に移行するというシナリオは荒唐無稽ではない。

 少し歴史を振り返ってみよう。19世紀はイギリスの世紀(パックス・ブリタニカ)であったが、そのイギリスの覇権に挑戦したのがドイツであった。この当時、今日の先端産業の象徴である半導体の役割を担ったのが鉄であった。その鉄の生産量について、1880~1913年の英独を比較すると、次のようになる。

(1)銑鉄生産量(単位100万トン:イギリス・ドイツ)

1880年(7.87・2.47)→1890年(8.03・4.10)→1900年(9.10・7.53)→1910年(10.17・13.11)→1913年(10.42・16.76)。

(2)鋼鉄生産量(単位100万トン:イギリス・ドイツ)

    1880年(1.32・0.73)→1890年(3.64・2.14)→1900年(4.98・6.40)→1910年(6.48・13.10)→1913年(7.79・17.60)。

 この統計を見れば、ドイツが猛烈な勢いでイギリスを追い上げたことがよく分かる。1900年までには鋼鉄で、1910年までには銑鉄で、ドイツはイギリスを追い抜くのである。そして、1914年には第一次世界大戦が勃発している。

 通信機器の分野で今起こっている国際競争は、19世紀から20世紀にかけての英独競争に似ており、中国がアメリカに追いつけ追い越せと熾烈な競争に挑んでいる。そして、その先兵がファーウェイでありZTEなのである。

 スマホの出荷台数では、①サムソン、②ファーウェイ、③アップル、④シャオミ(小米)、⑤オッポ(欧珀)で、②、④、⑤が中国、③がアメリカである。

2017年の特許の国際出願件数では、①ファーウェイ、②ZTE、③インテル、④三菱電機、⑤クアルコムで①、②が中国、③、⑤がアメリカである。

 さらに、通信基地局のシェアでも①ファーウエイ、②エリクソン、③ノキア、④ZTEとなっており、①、④が中国である。

 以上のようなデータを見れば、トランプ政権の危機感がよく理解できる。米中競争の行方は世界の今後のあり方を決める。