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 ミシェル・テヴォー『アール・ブリュット−野性芸術の真髄』(人文書院、2017年)

 

 アール・ブリュット(Art Brut)の古典的名著が邦訳された。フランス語の原著が出版されたのは、私がパリ大学に留学中の1975年である。40年以上も前のことを思い出すと、まずはフランスの作家、ジャン・デュビュッフェ(1901〜1985)の作品に出会ったことが、嬉しいショックだった。私は彼の抽象的作品が好きになり、自分で模写・模造して楽しんだが、実は彼こそが、アール・ブリュットという名称の創始者なのである。提唱したのは1945年である。このフランス語は、直訳すれば「生の芸術」であるが、正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した絵画や造形であり、既成の流派やモードにとらわれないものである。

 本書は、精神病院に入っていたようなマージナルな人が、自分の楽しみだけのために生み出した作品の数々を図版で紹介している。ヴェルフリ、アロイーズ、トリビエ、アントン=ミュラーらがその例である。「子供、狂人、原始人」の作品と言っても良い。

  本書には、社会学的な考察も多数散りばめられている。視力のない者について、私たちの文化には「可視性へのフェティシズム」が存在する(116p)。アール・ブリュットは「意味と表象のシステムをぐらつかせる」(142p )。精神病院制度は社会的紛争を医療化し、社会的関係の中で直視することを妨げる(p156)。

 上記のアール・ブリュット作家をブラック、ピカソ、クレーなどを比べると、貧困層の出身、無教養、高齢になってから作品を作る、拘留、社会的成功への興味喪失などが特色である(212~214P)。アール・ブリュットは定義と無関係であり、定義によって縛られないものの名前なのである(224p)。

 ヴェルフリの作品に見られるように、アール・ブリュットは「反精神医学的」であるが、私はパリ留学中に精神医学批判の第一人者であるミシェル・フーコーの研究室を訪ね懇談したことがある。若い研究者の私には大きな刺激となったが、当時の精神医学変革の分野にも詳しい杉村昌昭氏が翻訳者であることも評価したい。マージナルな立場から現代社会を見ると違った世界が見えてくる。フーコーのファンにも読んでほしい本だ。

 いずれにしても、本書を読めば、アール・ブリュットの全体像を把握することができる。名著の邦訳を喜びたい。

 

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