福の神
 
むかしむかし
あるところに羽振りの良い長者がいました。
この長者のところには、毎日毎日たくさんのお客が訪れました。
長者は、お客の相手ばかりしなくてはならなかったため、だんだんと疲れがたまってきました。
そこで、ある易者にどうすればお客がこなくなるか、占ってもらうことにしました。
易者は言いました。
「明日の朝、屋敷の東側に扇をもって踊りを踊っている男がいる。そのひとを矢でいれば、お客はこなくなるだろう」
 
次の日の朝。
長者が東の方を見ると、なるほど、朝日に向かって扇踊りをしている男がいます。
長者は、易者に言われたとおり、その男に向かって矢を放ちました。
矢は見事、男に当たり、男は
「ぎゃ!」
と叫んでそのまま逃げていきました。
 
実は、その男はこの家にとりついている福の神でした。
福の神を追い出してしまったため、長者の家運は傾き、あっというまに衰えてしまいました。
こうして、貧乏になった長者は誰からも見向きされなくなり、あんなに来ていたお客も、まったくこなくなってしまった、ということです。
 
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皮肉のきいたお話です。
本末転倒ですね。
でも、みなさんこの長者を笑えますか?
誰でも経験があるのではないでしょうか?
なにかを改善しようとして、一番大切なところをダメにしてしまう、という失敗を。