ほととぎす
 
むかしむかし
あるところに兄と弟が一緒にくらしていました。
弟は兄思いで、いつも芋のやわらかいところは兄にやり、自分は筋の多く固いところばかり食べていました。
しかも、兄が見たら気を使うだろうから、といつも隠れて食べていました。
しかし、兄はそんな弟を見て
「いつも隠れて食べているのは、きっといいものを独り占めしているにちがいない」
と思うようになりました。
日がたつごとにその思いは強くなり、ある日、とうとう包丁で弟の腹を刺して殺してしまいました。
すると、割いた腹の中から、筋ばかりの芋が出てきました。
それをみて、兄ははじめて弟の気持ちをしりました。
自分のしでかしてしまったことを悔やんだあには、
「弟恋しい、弟恋しい」
と叫びながら山を走り回りました。
そして、いつしか一羽の鳥になってしまいました。
それがホトトギスです。
その声をきくと、
「オトットコイシ」
と聞こえるのです。
 
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東北や北陸など、寒い地方に伝わるお話で、地方によっては兄と弟の役割が逆になっていたりします。
現代の感覚では、「なんで芋くらいで」と思うかもしれませんが、当時の北国や雪国では食料が乏しく、芋ひとつでもものすごいご馳走だったのです。まさに、命がけで食べたいくらいの。
ある意味、生きることへの執念が感じられるお話です。