ネパール紀行(5)パシュパティナート寺院 | 良田 寛(ペンネーム) 新老いらくの記

良田 寛(ペンネーム) 新老いらくの記

いつのまにか「老いらくの記」という言葉が似合う、それなりの歳になってしまいました。
精一杯生きてきた事を何かに残したい、足跡を何かの形で残したいと思っています。

 カトマンズにあるシヴァ神を祭るネパール最大のヒンズー教寺院。もちろん世界遺産に指定されている。ネパール国内だけではなく、インドからも巡礼者がこの寺院を訪問する。ただし中に入れるのはヒンズー教徒だけであり、我々は入る事ができない。従い、建物の中がどのようになっているのかは分からない。

 この寺院が有名なのは、古く大きな寺院であるという事もあるが、裏手、バグマティ川(ガンジス川の支流)の川沿いに火葬台があるというのも大きな要因だろう。ヒンズー教徒は輪廻転生を信じ墓を作らない。ここで火葬され灰になって川に流されていく。そしてまた生まれ変わる。
 異教徒にとってはショッキングなシーンが繰り広げられている。事前の情報では、橋の上もしくは対岸から火葬の風景を見る事ができる。広い川を想像していたが、川幅は5〜6mほど。対岸とはいえ目と鼻の先で火葬が行われている。いくつもの煙や火柱が上がっている。その煙やにおいが風向きによってはやってくる。そして新たな遺体が運ばれてくる。
 見えるか見えないかの違いはあるが、ある意味日本で行われている火葬と同じもの。ただボタンを押すだけの日本のシステムとは違い、人の生活が死に直結している。こういう場面を観光客の目にさらしてよいのだろうか・・・という考え方もあるが、ヒンズー教徒に限らず、この風景を見た人は間違いなく生と死をよく考えるだろう。

 どのくらい昔かは分からないが、日本もこのような光景があたりまえだったのではないか。
(補足)日本では江戸時代後期から明治時代初期に火葬が一般的になった