五行詩(239) | 五行詩人の散策

五行詩人の散策

ありふれた日常の中でふと思うこと、嬉しかったこと、切ない気持ちを五行で書いております。

夕暮れのスクランブル交差点ですれ違う

あのころ君がしていた
香水の匂い

振り返れば
名も知らぬ人々の長い影


=====

忘れてしまったと思っていたのに

その匂いに触れた瞬間に

体中に衝撃が走ったようだった


四方八方から人が雪崩れ込む

スクランブル交差点

たくさんの人と揉み合うようにすれ違う


君が好んで付けていた

淡い柑橘系のような香り


その香りに弾かれたように

今歩いてきた方向を振り返ってみる

だけどもう、その香りの主は判別のしようも無い


いま触れた匂いを思い出す

目の奥には

あの頃の君との想い出が

鮮明に甦る


交差点の向こうには

大きな夕陽


たくさんの人々の長い影が

交差点を横切っている


穏やかな都会の黄昏に

君の記憶も

ゆるやかな残像となって

僕の中で輝いていた




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