夕暮れのスクランブル交差点ですれ違う
あのころ君がしていた
香水の匂い
振り返れば
名も知らぬ人々の長い影
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忘れてしまったと思っていたのに
その匂いに触れた瞬間に
体中に衝撃が走ったようだった
四方八方から人が雪崩れ込む
スクランブル交差点
たくさんの人と揉み合うようにすれ違う
君が好んで付けていた
淡い柑橘系のような香り
その香りに弾かれたように
今歩いてきた方向を振り返ってみる
だけどもう、その香りの主は判別のしようも無い
いま触れた匂いを思い出す
目の奥には
あの頃の君との想い出が
鮮明に甦る
交差点の向こうには
大きな夕陽
たくさんの人々の長い影が
交差点を横切っている
穏やかな都会の黄昏に
君の記憶も
ゆるやかな残像となって
僕の中で輝いていた