【タイトル】
ボラーレ! ―ベスト・オブ・ジプシー・キングス
【アーティスト】
Gipsy Kings
【リリース】
1999/8/7
【トラック】
[1]Volare
[2]Bamboleo
[3]Bem, Bem, Maria
[4]Vamos A Bailar
[5]Allegria (Live)※
[6]Un Amor
[7]Inspiration ※
[8]Ternuras
[9]Quieto Saber (LIVE)
[10]Camino
[11]Hotel California
[12]A Mi Manera
[13]Oy
[14]Mujer
[15]A Tu Vera
[16]Este Mundo
[17]La Rumba De Nicolas
[18]I've Got No Strings
[19]Oh Eh Oh Eh      ※…Instrumetal

【総合評価】3.7


 御存知ジプキン…と高らかに言いたいが、ジプシー・キングスというグループも今の若い世代に伝わるかどうか分からない。『Volare』あたりは大多数の人間が一度は聴いた事があるはずで、知らず知らず《ジプキン》には触れている。


 そもそも正体が知られていない、よく知られていない上に間違ったイメージを持たれている可能性がある。当然ながらその構成も知られていない。

 グループはフラメンコの大家ホセ・レイエスの息子5人と、ホセがヴォーカルを務めたグループを率いていたフラメンコギターの名手マニタス・デ・プラタの親族であるバリアルド兄弟3人、そしてホセ・レイエスの娘婿チコで構成。現在チコは既に脱退し、別グループで活動している。

 当方の情報は無論寄せ集めだが、この辺の詳細が閲覧するページによって実にバラバラ。曲ばかりが先行してBGMとして重宝されるあまり、大事な所が伝わっていないのは残念である。

 基本スペイン語なのでメキシコもしくはスペインと思われがちだが不正解。正解はフランス、フランスと言うよりは南仏と表現するのが取り敢えず正答。メンバーのルーツが移動民族型の一族でそれらの一族を総称して「ロマ」というのだが、英語になると「ジプシー」の呼称になるらしい。ジプシー全てがロマの範疇に入るという訳でもなく、尚且つジプシーという表現は差別的という意見も出ている事情は何とも複雑過ぎる。一般にはジプシーの広義をそれとなく知ってもらえればそれで良い、南仏であるのにスペイン語というのはそういった背景にある。

 スペイン語とは言うがその中でも独特の言い回しが混じる特異な言語なので曲によっては聴き取りづらい、故にタモリ倶楽部「空耳アワー」の常連。このアルバムにも何曲か入っている。


 『Volare』はほぼ触れる必要が無いとは思うのだが、この楽曲がジプシー・キングスのオリジナルだと思う方がいるのなら説明が増えてしまう。

 このグループは名手のサラブレッドが集まった音楽集団である、故にカヴァーしたところであたかも自分達の楽曲であるかのように聴こえてしまうという「幻術」を持っている。楽曲一覧を見れば英語のタイトルは明らかに不自然、『Hotel California』などは明らかにカヴァーだというのは判別できる。しかしながら聴けばイーグルス(The Eagles)の『Hotel California』ではなくジプシー・キングスの『Hotel California』なのである。それでいて元々の曲の骨組みは決して壊されていない、恐るべしジプキン・マジック。


 『Bamboleo』『Un Amor』『Oy』なども良いが、個人としては『Inspiration』が断然の最高評価。TVドラマ「鬼平犯科帳」への贔屓もあるが、こんなに時代劇と化学反応を起こした洋楽が他にあっただろうか。『Inspiration』が流れるエンディングでは毎回江戸の四季が見られるのだが、自分としてはフェードアウトでエンディングが終わる直前の「冬」が一番ピタリとくる。

 言い忘れるところであったが『Inspiration』は二代目中村吉右衛門が主役の長谷川平蔵を演じた平成以降の鬼平犯科帳、それ以前のシリーズも面白いが『Inspiration』は流れない。


 ボリュームとしては十分な楽曲数であると個人的には思うが『ジョビ・ジョバ(Djobi Djoba)』あたりもあれば『Volare』以外知らないという人間には良かったのかなとも思う。店に赴けばジプシー・キングスという棚に多くのアルバムがある、ワールドミュージックというのは曲名がよく解らなくなって探すのに適当になってしまいがちだが予め数曲はピックアップしておいてもらいたい。(完)