おふくろ上京 | 竹原慎二 オフィシャルブログ

おふくろ上京


4月15日 広島からおふくろが上京してきた 

僕はなかなか自分で病気のことを言えずにいて結局 女房から話してもらっていた



女房が品川駅まで迎えに行った
おふくろは一人でくるものだとばかり思っていたら初老の男性と若い女性を連れてきた


初老の名刺にはホリスティック医学と書かれていた 女性は助手だという  

僕は家を新築したばかりだった やっと完成し年末に引っ越した矢先 血尿が出た

本来なら新築祝いでも開いておふくろを新居に招きたかったところだが 僕のお見舞いって形での上京となってしまった

おふくろは新築した家を一度
見てもらった方がいいからと風水なのか気学なのか? 

僕はその辺全く気にしない性格なので良くわからないが どうもそれを見てもらうために連れてきたようだった

その初老は家の中を順番に見ていきながら 逆さ柱だという場所を助手に指示して10円玉くらいのシールを貼らせた

助手は新築の壁に容赦なく数メートルおきにそのシールをペタペタと貼っていく


おいおい 


まぁ それでもこれでおふくろの気が済むならいいかと黙って見ていた


以前おふくろが送ってきた神棚があったのだが 僕は目立たない寝室のウォークインクローゼットの中に置いていた  


初老はその神棚をダイニングの壁に打ち付けると言った 


女房がえっ… それはちょっと…打ち付けますか?ここじゃないとまずいですか? と抵抗すると 

お?ここはイヤかい? ならばこの辺でもいいかと出窓に置いた
  
こんなにもあっさりと代案が出るとは 言ってみるもんだ




それから僕の身体に気功みたいなものを送った
 

「大丈夫 これであなたは治ります 」



僕はこの手のものをあんまり信じない方なのだが 心身共にずっと苦しい状況にいると「大丈夫 治りますよ」というささやきに悪い気はしなかった

というか正直かなり心地よかった 
 

寝具をマメに干し清潔にしなさいといい ベランダに僕の布団や枕を干した


まぁこれはいいことかもしれない


だが最後に初老は言った 


絶対に手術をしてはいけない 
西洋医学はすぐに切りたがる
癌は切ってはいけないのだ
手術なんかしたら死にます


あぁ…言っちゃった



西洋医学全否定

なんてこと言ってくれるんだよ


僕も西洋医学が癌を治せるとは思っちゃいない

癌は元々 自分の細胞がミスコピーを起こしそれを免疫力で抑えきれなかったために出来たものだ
だから治せる人は自分しかいない

だが今 僕の身体の中ではものすごい勢いでそのミスコピーが増殖している今すぐこれを止めなくてはならない そのための西洋医学だ 

だから手術をしたら治療はそこで終わりではない
むしろそこからが癌治療のスタートなんだ



まぁ僕はこの時その初老には何にも言わなかったけど

 
そのあと大森にある僕のジムにも行った そしてまたシールを貼った
  
このあとどうします?
 昼飯でも一緒に食べますか?
と一応誘ったのだが いやここから品川駅まですぐだからこのまま広島へ戻りますと初老と助手は早々に帰って行った



それからおふくろと女房とでうちに戻って昼飯を食べていたら 
前歯の差し歯が取れた



あーこんな時に…



夕方  徳持歯医者に行って仮歯を入れてもらった 



夕食は自宅近くの薬膳鍋を食べに行った 



帰りにケーキを買い家に戻ってから家族みんなで食べた

そのあと大事な話があるからと娘に席を外させ僕とおふくろと女房の3人で話をした 


病気の詳しい状況はあんまり話していなかったのだが おふくろは同居している兄嫁にインターネットで色々調べてもらっていたようで思っていた以上によく知っていた


今までいくつもの病院をまわり やっと治療先を見つけた 
今は抗がん剤治療をしているがこれは手術に向けての準備なんだ 
さっきの先生は手術をしない方がいいって言ったけど手術以外にもう道はないんだ 

手術をしたからって絶対に大丈夫という保証もないんだけれど それでもよく考えて決めた結論なんだ  

手術はする


僕はおふくろにそう言った


おふくろは元々楽観的な性格だ 

うん わかった  慎二が決めたんならそれでいい   あの先生が言ったこともいい事だけ信じりゃそれでいいけ と言った



よかった すぐに納得してくれた 


それからおふくろは
私は手術の日には東京に来んけぇ 
私が来ても右も左もわからんけぇまた迎えに来てもらわんにゃならんし
迷惑かけるだけじゃけ 広島から手術の無事を祈っとる 


そう言って僕のことをお願いね  慎二のことお願いねと女房に何度も頼んでいた


おふくろは仕事もあるしその頃あまり体調が良くなかった親父を残してきたからと言って次の日の昼の新幹線ですぐに広島へ帰って行った




僕は体調が良かったので一緒に車に乗って品川駅まで見送りに行った








つづく








じゃあの。