今回も、長いうえにポエム&ふざけが入っています。
気にならない方だけお付き合いください。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
322.40の衝撃からいまだ覚めていない私です。
演技が終わったあとは、緊張と興奮で体が冷たくなっていましたが、今はもっと別な思いがジワジワと沸き上がってきています。
結弦くんと同じ時代に生きられて良かった。
結弦くんの言っていることが、翻訳無しに、細かなニュアンスまでちゃんと理解出来る、同じ日本人で良かった。
震災の後ボランティアに行ってて良かった。
結弦くんのファンとして、恥ずかしくない行動をしてきて良かった。
趣味の合いそうなオカルト好きで良かった(笑)
本当に、羽生結弦という稀有な存在に気づけて、好きになって本当に良かったです。
そんな、私達ファンとは幾分違うでしょうが、世界中のフィギュア関係者達が、結弦くんがこの競技を高めてくれて、本当に感謝しているのも感じます。
各国のスケート関係者や解説者達の感動的な言葉と惜しみない賛辞に、彼らもまた喜び、感動し、フィギュアという、この、他の国ではマイナーなこの競技を愛してきたことを誇りに思っているのが伝わりました。
どうだ、これがフィギュアだぞ、と。
この素晴らしい演技こそがスポーツとしてのフィギュアなんだぞ、と。
ファンだけではなく、解説者も、ジャッジまでも涙を流していたと言います。
長年フィギュアに携わってきた人達が、フィギュアに対する愛情と誇りと情熱を捧げてきた人達が、あの演技で魂をえぐられるような感動に体を震わせていたのだと思います。
ラグビーワールドカップの南ア戦で、途中からずっと泣いているおじさんがいました。
きっと、若い頃にラグビーをやっていて、ラグビー一筋で生きてきたんだろうな。
今、夢に描いていた光景を見ているんだろうな、と、テレビで見ているこちらまでもらい泣きしたものですが、ジャッジや解説者にとっては結弦くんのあの演技こそが、「夢に描いた演技」だったのではないでしょうか。
(あのおじさんは、現在も現役でラグビーの選手をやられている骨の髄までラガーマンの方でした)
ファンが求めるものは「勝利の金メダル」ですが、彼らフィギュア関係者の求めるものは「夢に描いた演技」だったはずです。
それを追い求めて、フィギュアというマイナーな競技に情熱を注いできたのでしょう。
「素晴らしいジャンプっていうのはね…」
「質の良いスピンというのはね」
「難しいステップやターンはね」
こう言って教え子や選手達に説明してきた、イメージの全てがあの2つの演技の中にあったのではないでしょうか。
ユーロの解説者は「10点をつけたジャッジを探して握手を求めたい」と言い、あるジャッジは「なぜ10点をつけなかったのか」と後悔しているとも伝えられています。
今まで、高い点数が付くと大体、あれはホームアドバンテージだ、陰謀だという話が沸き上がるものですが、これ程までに解説者やスケート関係者が「あの点数は適正だ」と言ってくれているのも見たことがありませんでした。
マッシミリアーノさんなどは、ショートの得点発表の際、これが105点以下ならスキャンダルだ、とまで言っていました。
もちろん、ショートの4Sと、フリーの後半4Tの、このふたつのランディングだけこらえましたが、こらえただけです。
オーバーターンでもなければ回転不足でもありません。
ミスではありませんしマイナスにもなりません。
高い加点は貰えませんが、ステップアウトもしていないので十分加点に値します。
本当に、揺らいだのはそこだけで、あとは完璧な演技だったのです。
負けた選手も、2~3点差なら悔しいかもしれませんが、50点も差をつけられたら畏怖するしかないのではないでしょうか。
私は、直前にプログラムを変えて挑んできたことにはあまり驚きはありませんでした。
慣れれば大丈夫だと思ったからです。
ただ、変えてきたのはショートだけではありません。
ショートに連動する形でフリーも変えていました。
大きな点は、後半の
4T+2T
3A+3T
を、
4T+3T
3A+2T(タノ付)
に変えたところでしょうか。
何故フリーも変えたのかは簡単な理由でしょう。
ショートに4T+3Tを入れたので、効率良く練習するために同じ形にしただけだと思います。
フリーでエレメンツを入れ変えましたが、点数は変わりません。
しかし、2Tでは両腕を上げ(タノジャンプ)更なる加点を要求しています。
まさに「ここまでやった挙げ句、さらにそれをやるか!」の状態です。
一分の隙もありません。
本人が言っているように
「高難度のエレメンツに加点がついたら誰も勝てない」
のです。
あのプログラムをもう一度同じレベルで滑った場合、同じ点数は付くでしょうか。
もし、あれが羽生結弦のノーマルモードとなったら、点数は若干下がるかもしれませんが、私は2~3点上がる可能性もある、と思っています。
あのフリーのプロトコルを見れば、どこにもマイナスはおろか0もついていないわけですが、スピンなどにはまだ1をつけているジャッジもいるのです。
10点をつけなかったことを後悔しているというジャッジは、きっと9.75をつけたのでしょう。
多分、10点をつける勇気がなかったのだと思います。
それが、蓋を開けてみたら13個も10点がついていたのですから、つける勇気のなかった自分を情けなく思ったかもしれません。
なので、私は、今と同じ演技をもう一度したら、325点までは可能だと思っています。
まあ、あの演技をもう一度やるのがそもそも難しいのですが…(笑)
そして、NHK杯の後、色々なインタビューなどから、何故ノーミス出来ていないのに難易度を上げたのかもわかってきました。
ハビに勝つためでもなく、ボーヤンに対抗するためでもなく、ただただ、結弦くんは自分に腹を立てていたんですね。
自分のミスと思い違いで2つのジャンプをノーカンにしてしまうという、本人にとっては前代未聞の大チョンボです。
「あ、羽生結弦ひと皮剥けたなと思われるくらいまで、ただただ強くなりたい」
「ただ強くなりたい。それだけです」
「絶対やってやると今思っています」
「やだよ!こんなところで負けたくない!」
カナダ大会後のインタビューで、自分に対する怒りが吹き出していました。
少し前に私は、「バラ1」の構成は結弦くんには簡単過ぎたんじゃないかな?と書きました。
簡単だから、余計なことを考えてミスを誘発するのではないか?ということです。
ギリギリの構成で、ヒリヒリするような緊張感にあって、初めて羽生結弦は覚醒するのじゃないかなと、なんとなくそんな風に思えたのですが、あながちそれは的外れでもなかったようです。
怒りに奮え、自分を追い込んで、初めて究極の「羽生結弦」が生まれるのでしょう。
今まで、凄い演技をした試合は、大体どこか怪我をしていました。
ヤバイ状態は、否応なしに集中力を高めてくれたのかもしれません。
では、体調に問題がない時はどうすれば自分を追い込めるのか…。
つまり、それがノーミスできていない演技の難易度を上げ自分を追い込むことだったのかもしれません。
前の試合で、オーサーの握手をはぐらかして笑っているのを見た瞬間、「あ、集中できてないな」と思ったものですが、否応なしに集中させるには、同じくらいの大きさの「不安」と「自信」の両方が必要だというわけです。
これは結弦くんにしかできないことです。
ネガティブな人間なら「不安」があっただけで潰れます。
その「不安」を限りなくゼロにし、「自信」を身につけられるように、皆、頑張って練習しているわけです。
それを
「誰かが悪い演技をした時に勝つのは嫌い」
「ボーヤン選手のスコアを見て『おっしゃあ!』って思って」
と、普通の選手ならマイナスに思うことを、逆に自分を燃え上がらせる材料に出来るのが、羽生結弦という人間の稀有な特性なのだと思います。
フィギュアはコンタクトスポーツじゃありません。
誰より素晴らしい演技ができる選手でも、ミスをしたら負けるのです。
フィジカルもメンタルも、自分自身でコントロールするしかありません。
全ては自分の努力で変えられるのです。というより、自分の努力で変えるしかないのです。
「こっちの方がいい演技だったのに、相手に有利なジャッジメンバーだった」
「ジャッジに嫌われているからいい点を貰えない」
などと選手の関係者が漏らすこともありますが、それがわかっているならジャッジを味方につける努力をすればいいのです。
人間が点数をつける以上、ジャッジに嫌われては点数が伸びないことは明白です。
お金でジャッジを買収するのではなく、笑顔と誠意と実力でジャッジに好感を持ってもらうのも、戦略として当然のことのように思います。
プロトコルに話を戻すと、演技構成点(PCS)で10点がついているのは、5つある項目のうち下の3つだけです。
上の2つ、「スケート技術(SS)」と「要素のつなぎ(TR)」は10点がついていません。
でも、この二つの項目は10点がつけられない項目だと私は思います。
「スケート技術」と「要素のつなぎ」には限界がないからです。
結弦くん自身、もっと伸び代があります。
4Loだって跳ぶかもしれませんし、もっと複雑なつなぎを入れてくるかもしれません。
なので、この二つの項目は、9.75が満点だと思っていいと思います。
にもかかわらず、SSは9.68、TRは9.46がついています。
これは、シングルスケートにおける最高点だと思っていいのではないでしょうか。
SSとTRに10点がつくのはアイスダンスのメリチャリとテサモエくらいでしょう。
アイスダンスのスコアはシングルとは別物のように10点満点が並ぶのですが、ジャンプのないアイスダンスはミスの確率が低く、スケーティング勝負になるからなのでしょう。
ジャンプのあるシングルで、このPCSは、本人も言うように「異次元」です。
それだけ、どこにもマイナスするところがなかったということです。
結弦くんは映像記憶型の人間です。
今回の演技の映像を何度も見れば、そのうちあれが標準になります。
世界中の記者やファン達は、羽生は次は4Loを入れてくる、いやいや4Aだ、と夢を語っていますが、ことはそんなに簡単じゃないと私は思っています。
2種類の4回転を入れるのは難しいと結弦くんも言っていますが、新しいジャンプを入れると全てのジャンプに影響してきます。
3Aが得意な結弦くんは2Aが跳べないと言っています。
4Aを練習して3Aが崩れたら大変です。
「ショートでルッツをリストラしちゃった」
と言っていましたが、結弦くんは別にルッツが苦手だったわけじゃありません。
かつて「!」マークをつけられていたのはフリップなので、もし4Loを入れることがあるなら、前半の3Fが四回転になるのだと思います。
そういった、構成を上げることで点数を伸ばすことは可能かもしれませんが、それはそう簡単なことではないのです。
今まで、他の選手には良く「世界一のスケーティング」「世界一のステップ」と代名詞のように実況が説明するのを見てきましたが、結弦くんはそういった「世界一」と名付けられるものがありません。
なぜなら、全てのエレメンツがほぼ世界一のクオリティを持つからです。
ジャンプ、スピン、ステップ…全てが高難度でさらにこれ以上ないほどにしなやかで美しいのです。
他の選手が、どれかひとつ結弦くんより上手いものを持っていたとしても、全てを兼ね備えているわけじゃありません。
中でも、結弦くんの音ハメの才能は誰にもマネできません。
太鼓の「ズン」という音、バチで叩く「カカッ」という音、「チーン」という鐘の音…その全てに振り付けが合っています。
これは凄いことなんです。
つまり、何度演じても、全て同じに動いているということです。
あれだけぎちぎちにターンやステップを入れても、全て同じ時間で動けるということなのです。
曲が終わってもまだスピンが終わっていない選手には見習って欲しいものです。
私はシーズン前、今シーズンには必ず300点超えをすると書いてきましたが、想定していた点数は大体105点+200点で、305点くらいでした。
そんなシロートの想像など、軽く超えてしまう結弦くんですが、今季あれを超えることはできるのでしょうか…。
私は、不可能ではないと思っています。
なにやらルーティンも変えたみたいですし、一瞬で集中するコツを掴めば、300点台を出し続けることも可能だと思っています。
もちろん、ピークを外せばボロる可能性もあると思うので、オーサーにはしっかり管理していただきたいと、心から思っています。
で、長々と書いてきましたが、NHK杯の楽しさはこれだけじゃありません。
ここからは私の(笑いの?)ツボの話です。
今回、後からインタビューなどを見て知ったことも色々ありました。
まず、ルッツの後のガッツポーズ(笑)
あれは、ガッツポーズまでを含めてイメトレしていたそうですね。
成功する姿をイメージするのはスピリチュアルの世界では普通のことです。
映像記憶型の結弦くんなら、なおのこと効果的だったと思います。
そして、演技が終わった後の、オーサーとの親子コント&プーさん芸(笑)
いつもはオーサーに持たせるプーさんを自分が抱いていたのは、いつもより緊張&興奮していたからかもしれません。
プーは結弦くんの心を落ち着け、癒してくれる守り神みたいな存在ですから(笑)
お腹の前に何かを抱えるのは、無意識の防御態勢ですからね。
そして、そのプーの手を取って「やったーやったー」みたいにバンザイさせる可愛らしさ(笑)
さらに、私はここが一番のツボだったのですが、点数が出た後、アンビリーバボーというようにムンクの叫び的な顔をしながら、一瞬プーにも同じ顔をさせ、すぐに何もしなかったようにオーサーの方を向くんですよね(笑)
本当に、ごく自然に(笑)
つまり、いつもこんなことをやってるんだろうなぁというのが垣間見えて、可愛やらトホホやらで大爆笑です。
他にも、突然
「世界選手権の時のハビ覚えてる?こんなだったよね?」
と言うと、オーサーと二人で「アア~アア~」とハビのモノマネです(笑)
あの時のハビの気持ちがわかったということです。
顔を手で押さえていたのもハビに似ていると言われていましたが、私は、あれは変顔にならないために押さえていたのだと思います(笑)
結弦くん、福岡ファイナルで初優勝した時や、さいたまワールドでまっちーに勝った時、笑ってちょっと変顔になったじゃないですか。
笑う時は目をつぶらないとちょっと変顔になっちゃうので、変顔にならないようにしていたんじゃないでしょうか(笑)
まあ、真実はわかりませんが、鬼の顔も次からはやめるかもしれませんよ(笑)
他にもね、演技とは関係ないところでもツボがいっぱい。
表彰式の前、ボーヤンに話し掛けていた言葉が
「君のジャンプ凄いよ!いいと思うよ!」
っていう内容だったんですよね?
ネット時代だから、中国杯のボーヤンのルッツは見ていたのでしょうし、それに発奮した部分もあったのでしょうが、あんなにストレートに自分に向かってくる後輩を褒め讃えるチャンピオンって、今までいなかったんじゃないでしょうか。
追い上げられてビビッたPちゃんなんか「羽生は悪魔のようだった」とか言っていましたからね。
マイクを向けられると後輩を「凄いです」と持ち上げる先輩っていくらでもいますが、それをストレートに、あんなにあっけらかんと本人に伝えるチャンピオンは初めて見たように思います。
ただ、惜しむらくは、ボーヤンが英語を理解していないようで、ちょっとポカーンに見えたことかな?(笑)
何せ場慣れしていないボーヤン。
結弦くんと無良くんが、特設ブースのノブとアッコちゃんに花束を差し出している時も
「ナルト!そこは花束の返却場所じゃないからね!あなたは渡さなくてもいいんだからね!」
と、ちょっとハラハラして見ていました。
ノブに花束を渡したシーンも笑えるというかなんというか(笑)
「え?いいの?」
と言うノブに対し、結弦くんの顔が
「うむ、受け取りなさい」
って言ってるようで、どっちが先輩なんだかって感じだったり(笑)
テンション高く「絶対王者」なんて口にする結弦くんを見て、またアンチは騒ぐんだろうなあと思いつつも、まあリアル少年ジャンプなんだから仕方ないよね~?と思ったり(笑)
いや、最初見た時は「絶対王者」なんて言うのはラオウくらいだ、なんて思っていましたが、少したって考えが変わりました。
どちらかと言うと
「絶対王者に、俺はなるっ!」(byルフィ)
ですかねですかね?
さしずめノブはバルトロメオ(笑)
シューゾーとの対談も好きでした。
「やっちゃったって感じ」
とか
「これどうするよ。この次どうやって、何を求める!」
「今の自分これ以上できねぇぞ」
とか、やんちゃな坊ちゃんそのままの、可愛い台詞がテンコ盛り(笑)
結弦くんはシューゾーが大好きだから、スケカナで不甲斐ない姿を見せてしまって本当に自分が情けなかったと思うんですよ。
それで、血の滲む努力をして自分を鍛え上げ、とんでもないスコアを出してウッキウキとシューゾーの前で「褒めて褒めてオーラ」を発散している結弦くん(笑)
いやあ、本当に面白い。
もう、語りだすと終わりませんね。
というわけで、最後にもう一つ。
フリーはチョコチョコ振付を変えていたので、ハイドロのところも変えたのかと思っていたのですが、エキシビ見たら腕を上げていませんでしたよね?
ってことはあれか?
この部分はつまりこういうこと?
ジャッジに対するアピール?
点数ちょ~だ~い~!
以上
気にならない方だけお付き合いください。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
322.40の衝撃からいまだ覚めていない私です。
演技が終わったあとは、緊張と興奮で体が冷たくなっていましたが、今はもっと別な思いがジワジワと沸き上がってきています。
結弦くんと同じ時代に生きられて良かった。
結弦くんの言っていることが、翻訳無しに、細かなニュアンスまでちゃんと理解出来る、同じ日本人で良かった。
震災の後ボランティアに行ってて良かった。
結弦くんのファンとして、恥ずかしくない行動をしてきて良かった。
趣味の合いそうなオカルト好きで良かった(笑)
本当に、羽生結弦という稀有な存在に気づけて、好きになって本当に良かったです。
そんな、私達ファンとは幾分違うでしょうが、世界中のフィギュア関係者達が、結弦くんがこの競技を高めてくれて、本当に感謝しているのも感じます。
各国のスケート関係者や解説者達の感動的な言葉と惜しみない賛辞に、彼らもまた喜び、感動し、フィギュアという、この、他の国ではマイナーなこの競技を愛してきたことを誇りに思っているのが伝わりました。
どうだ、これがフィギュアだぞ、と。
この素晴らしい演技こそがスポーツとしてのフィギュアなんだぞ、と。
ファンだけではなく、解説者も、ジャッジまでも涙を流していたと言います。
長年フィギュアに携わってきた人達が、フィギュアに対する愛情と誇りと情熱を捧げてきた人達が、あの演技で魂をえぐられるような感動に体を震わせていたのだと思います。
ラグビーワールドカップの南ア戦で、途中からずっと泣いているおじさんがいました。
きっと、若い頃にラグビーをやっていて、ラグビー一筋で生きてきたんだろうな。
今、夢に描いていた光景を見ているんだろうな、と、テレビで見ているこちらまでもらい泣きしたものですが、ジャッジや解説者にとっては結弦くんのあの演技こそが、「夢に描いた演技」だったのではないでしょうか。
(あのおじさんは、現在も現役でラグビーの選手をやられている骨の髄までラガーマンの方でした)
ファンが求めるものは「勝利の金メダル」ですが、彼らフィギュア関係者の求めるものは「夢に描いた演技」だったはずです。
それを追い求めて、フィギュアというマイナーな競技に情熱を注いできたのでしょう。
「素晴らしいジャンプっていうのはね…」
「質の良いスピンというのはね」
「難しいステップやターンはね」
こう言って教え子や選手達に説明してきた、イメージの全てがあの2つの演技の中にあったのではないでしょうか。
ユーロの解説者は「10点をつけたジャッジを探して握手を求めたい」と言い、あるジャッジは「なぜ10点をつけなかったのか」と後悔しているとも伝えられています。
今まで、高い点数が付くと大体、あれはホームアドバンテージだ、陰謀だという話が沸き上がるものですが、これ程までに解説者やスケート関係者が「あの点数は適正だ」と言ってくれているのも見たことがありませんでした。
マッシミリアーノさんなどは、ショートの得点発表の際、これが105点以下ならスキャンダルだ、とまで言っていました。
もちろん、ショートの4Sと、フリーの後半4Tの、このふたつのランディングだけこらえましたが、こらえただけです。
オーバーターンでもなければ回転不足でもありません。
ミスではありませんしマイナスにもなりません。
高い加点は貰えませんが、ステップアウトもしていないので十分加点に値します。
本当に、揺らいだのはそこだけで、あとは完璧な演技だったのです。
負けた選手も、2~3点差なら悔しいかもしれませんが、50点も差をつけられたら畏怖するしかないのではないでしょうか。
私は、直前にプログラムを変えて挑んできたことにはあまり驚きはありませんでした。
慣れれば大丈夫だと思ったからです。
ただ、変えてきたのはショートだけではありません。
ショートに連動する形でフリーも変えていました。
大きな点は、後半の
4T+2T
3A+3T
を、
4T+3T
3A+2T(タノ付)
に変えたところでしょうか。
何故フリーも変えたのかは簡単な理由でしょう。
ショートに4T+3Tを入れたので、効率良く練習するために同じ形にしただけだと思います。
フリーでエレメンツを入れ変えましたが、点数は変わりません。
しかし、2Tでは両腕を上げ(タノジャンプ)更なる加点を要求しています。
まさに「ここまでやった挙げ句、さらにそれをやるか!」の状態です。
一分の隙もありません。
本人が言っているように
「高難度のエレメンツに加点がついたら誰も勝てない」
のです。
あのプログラムをもう一度同じレベルで滑った場合、同じ点数は付くでしょうか。
もし、あれが羽生結弦のノーマルモードとなったら、点数は若干下がるかもしれませんが、私は2~3点上がる可能性もある、と思っています。
あのフリーのプロトコルを見れば、どこにもマイナスはおろか0もついていないわけですが、スピンなどにはまだ1をつけているジャッジもいるのです。
10点をつけなかったことを後悔しているというジャッジは、きっと9.75をつけたのでしょう。
多分、10点をつける勇気がなかったのだと思います。
それが、蓋を開けてみたら13個も10点がついていたのですから、つける勇気のなかった自分を情けなく思ったかもしれません。
なので、私は、今と同じ演技をもう一度したら、325点までは可能だと思っています。
まあ、あの演技をもう一度やるのがそもそも難しいのですが…(笑)
そして、NHK杯の後、色々なインタビューなどから、何故ノーミス出来ていないのに難易度を上げたのかもわかってきました。
ハビに勝つためでもなく、ボーヤンに対抗するためでもなく、ただただ、結弦くんは自分に腹を立てていたんですね。
自分のミスと思い違いで2つのジャンプをノーカンにしてしまうという、本人にとっては前代未聞の大チョンボです。
「あ、羽生結弦ひと皮剥けたなと思われるくらいまで、ただただ強くなりたい」
「ただ強くなりたい。それだけです」
「絶対やってやると今思っています」
「やだよ!こんなところで負けたくない!」
カナダ大会後のインタビューで、自分に対する怒りが吹き出していました。
少し前に私は、「バラ1」の構成は結弦くんには簡単過ぎたんじゃないかな?と書きました。
簡単だから、余計なことを考えてミスを誘発するのではないか?ということです。
ギリギリの構成で、ヒリヒリするような緊張感にあって、初めて羽生結弦は覚醒するのじゃないかなと、なんとなくそんな風に思えたのですが、あながちそれは的外れでもなかったようです。
怒りに奮え、自分を追い込んで、初めて究極の「羽生結弦」が生まれるのでしょう。
今まで、凄い演技をした試合は、大体どこか怪我をしていました。
ヤバイ状態は、否応なしに集中力を高めてくれたのかもしれません。
では、体調に問題がない時はどうすれば自分を追い込めるのか…。
つまり、それがノーミスできていない演技の難易度を上げ自分を追い込むことだったのかもしれません。
前の試合で、オーサーの握手をはぐらかして笑っているのを見た瞬間、「あ、集中できてないな」と思ったものですが、否応なしに集中させるには、同じくらいの大きさの「不安」と「自信」の両方が必要だというわけです。
これは結弦くんにしかできないことです。
ネガティブな人間なら「不安」があっただけで潰れます。
その「不安」を限りなくゼロにし、「自信」を身につけられるように、皆、頑張って練習しているわけです。
それを
「誰かが悪い演技をした時に勝つのは嫌い」
「ボーヤン選手のスコアを見て『おっしゃあ!』って思って」
と、普通の選手ならマイナスに思うことを、逆に自分を燃え上がらせる材料に出来るのが、羽生結弦という人間の稀有な特性なのだと思います。
フィギュアはコンタクトスポーツじゃありません。
誰より素晴らしい演技ができる選手でも、ミスをしたら負けるのです。
フィジカルもメンタルも、自分自身でコントロールするしかありません。
全ては自分の努力で変えられるのです。というより、自分の努力で変えるしかないのです。
「こっちの方がいい演技だったのに、相手に有利なジャッジメンバーだった」
「ジャッジに嫌われているからいい点を貰えない」
などと選手の関係者が漏らすこともありますが、それがわかっているならジャッジを味方につける努力をすればいいのです。
人間が点数をつける以上、ジャッジに嫌われては点数が伸びないことは明白です。
お金でジャッジを買収するのではなく、笑顔と誠意と実力でジャッジに好感を持ってもらうのも、戦略として当然のことのように思います。
プロトコルに話を戻すと、演技構成点(PCS)で10点がついているのは、5つある項目のうち下の3つだけです。
上の2つ、「スケート技術(SS)」と「要素のつなぎ(TR)」は10点がついていません。
でも、この二つの項目は10点がつけられない項目だと私は思います。
「スケート技術」と「要素のつなぎ」には限界がないからです。
結弦くん自身、もっと伸び代があります。
4Loだって跳ぶかもしれませんし、もっと複雑なつなぎを入れてくるかもしれません。
なので、この二つの項目は、9.75が満点だと思っていいと思います。
にもかかわらず、SSは9.68、TRは9.46がついています。
これは、シングルスケートにおける最高点だと思っていいのではないでしょうか。
SSとTRに10点がつくのはアイスダンスのメリチャリとテサモエくらいでしょう。
アイスダンスのスコアはシングルとは別物のように10点満点が並ぶのですが、ジャンプのないアイスダンスはミスの確率が低く、スケーティング勝負になるからなのでしょう。
ジャンプのあるシングルで、このPCSは、本人も言うように「異次元」です。
それだけ、どこにもマイナスするところがなかったということです。
結弦くんは映像記憶型の人間です。
今回の演技の映像を何度も見れば、そのうちあれが標準になります。
世界中の記者やファン達は、羽生は次は4Loを入れてくる、いやいや4Aだ、と夢を語っていますが、ことはそんなに簡単じゃないと私は思っています。
2種類の4回転を入れるのは難しいと結弦くんも言っていますが、新しいジャンプを入れると全てのジャンプに影響してきます。
3Aが得意な結弦くんは2Aが跳べないと言っています。
4Aを練習して3Aが崩れたら大変です。
「ショートでルッツをリストラしちゃった」
と言っていましたが、結弦くんは別にルッツが苦手だったわけじゃありません。
かつて「!」マークをつけられていたのはフリップなので、もし4Loを入れることがあるなら、前半の3Fが四回転になるのだと思います。
そういった、構成を上げることで点数を伸ばすことは可能かもしれませんが、それはそう簡単なことではないのです。
今まで、他の選手には良く「世界一のスケーティング」「世界一のステップ」と代名詞のように実況が説明するのを見てきましたが、結弦くんはそういった「世界一」と名付けられるものがありません。
なぜなら、全てのエレメンツがほぼ世界一のクオリティを持つからです。
ジャンプ、スピン、ステップ…全てが高難度でさらにこれ以上ないほどにしなやかで美しいのです。
他の選手が、どれかひとつ結弦くんより上手いものを持っていたとしても、全てを兼ね備えているわけじゃありません。
中でも、結弦くんの音ハメの才能は誰にもマネできません。
太鼓の「ズン」という音、バチで叩く「カカッ」という音、「チーン」という鐘の音…その全てに振り付けが合っています。
これは凄いことなんです。
つまり、何度演じても、全て同じに動いているということです。
あれだけぎちぎちにターンやステップを入れても、全て同じ時間で動けるということなのです。
曲が終わってもまだスピンが終わっていない選手には見習って欲しいものです。
私はシーズン前、今シーズンには必ず300点超えをすると書いてきましたが、想定していた点数は大体105点+200点で、305点くらいでした。
そんなシロートの想像など、軽く超えてしまう結弦くんですが、今季あれを超えることはできるのでしょうか…。
私は、不可能ではないと思っています。
なにやらルーティンも変えたみたいですし、一瞬で集中するコツを掴めば、300点台を出し続けることも可能だと思っています。
もちろん、ピークを外せばボロる可能性もあると思うので、オーサーにはしっかり管理していただきたいと、心から思っています。
で、長々と書いてきましたが、NHK杯の楽しさはこれだけじゃありません。
ここからは私の(笑いの?)ツボの話です。
今回、後からインタビューなどを見て知ったことも色々ありました。
まず、ルッツの後のガッツポーズ(笑)
あれは、ガッツポーズまでを含めてイメトレしていたそうですね。
成功する姿をイメージするのはスピリチュアルの世界では普通のことです。
映像記憶型の結弦くんなら、なおのこと効果的だったと思います。
そして、演技が終わった後の、オーサーとの親子コント&プーさん芸(笑)
いつもはオーサーに持たせるプーさんを自分が抱いていたのは、いつもより緊張&興奮していたからかもしれません。
プーは結弦くんの心を落ち着け、癒してくれる守り神みたいな存在ですから(笑)
お腹の前に何かを抱えるのは、無意識の防御態勢ですからね。
そして、そのプーの手を取って「やったーやったー」みたいにバンザイさせる可愛らしさ(笑)
さらに、私はここが一番のツボだったのですが、点数が出た後、アンビリーバボーというようにムンクの叫び的な顔をしながら、一瞬プーにも同じ顔をさせ、すぐに何もしなかったようにオーサーの方を向くんですよね(笑)
本当に、ごく自然に(笑)
つまり、いつもこんなことをやってるんだろうなぁというのが垣間見えて、可愛やらトホホやらで大爆笑です。
他にも、突然
「世界選手権の時のハビ覚えてる?こんなだったよね?」
と言うと、オーサーと二人で「アア~アア~」とハビのモノマネです(笑)
あの時のハビの気持ちがわかったということです。
顔を手で押さえていたのもハビに似ていると言われていましたが、私は、あれは変顔にならないために押さえていたのだと思います(笑)
結弦くん、福岡ファイナルで初優勝した時や、さいたまワールドでまっちーに勝った時、笑ってちょっと変顔になったじゃないですか。
笑う時は目をつぶらないとちょっと変顔になっちゃうので、変顔にならないようにしていたんじゃないでしょうか(笑)
まあ、真実はわかりませんが、鬼の顔も次からはやめるかもしれませんよ(笑)
他にもね、演技とは関係ないところでもツボがいっぱい。
表彰式の前、ボーヤンに話し掛けていた言葉が
「君のジャンプ凄いよ!いいと思うよ!」
っていう内容だったんですよね?
ネット時代だから、中国杯のボーヤンのルッツは見ていたのでしょうし、それに発奮した部分もあったのでしょうが、あんなにストレートに自分に向かってくる後輩を褒め讃えるチャンピオンって、今までいなかったんじゃないでしょうか。
追い上げられてビビッたPちゃんなんか「羽生は悪魔のようだった」とか言っていましたからね。
マイクを向けられると後輩を「凄いです」と持ち上げる先輩っていくらでもいますが、それをストレートに、あんなにあっけらかんと本人に伝えるチャンピオンは初めて見たように思います。
ただ、惜しむらくは、ボーヤンが英語を理解していないようで、ちょっとポカーンに見えたことかな?(笑)
何せ場慣れしていないボーヤン。
結弦くんと無良くんが、特設ブースのノブとアッコちゃんに花束を差し出している時も
「ナルト!そこは花束の返却場所じゃないからね!あなたは渡さなくてもいいんだからね!」
と、ちょっとハラハラして見ていました。
ノブに花束を渡したシーンも笑えるというかなんというか(笑)
「え?いいの?」
と言うノブに対し、結弦くんの顔が
「うむ、受け取りなさい」
って言ってるようで、どっちが先輩なんだかって感じだったり(笑)
テンション高く「絶対王者」なんて口にする結弦くんを見て、またアンチは騒ぐんだろうなあと思いつつも、まあリアル少年ジャンプなんだから仕方ないよね~?と思ったり(笑)
いや、最初見た時は「絶対王者」なんて言うのはラオウくらいだ、なんて思っていましたが、少したって考えが変わりました。
どちらかと言うと
「絶対王者に、俺はなるっ!」(byルフィ)
ですかねですかね?
さしずめノブはバルトロメオ(笑)
シューゾーとの対談も好きでした。
「やっちゃったって感じ」
とか
「これどうするよ。この次どうやって、何を求める!」
「今の自分これ以上できねぇぞ」
とか、やんちゃな坊ちゃんそのままの、可愛い台詞がテンコ盛り(笑)
結弦くんはシューゾーが大好きだから、スケカナで不甲斐ない姿を見せてしまって本当に自分が情けなかったと思うんですよ。
それで、血の滲む努力をして自分を鍛え上げ、とんでもないスコアを出してウッキウキとシューゾーの前で「褒めて褒めてオーラ」を発散している結弦くん(笑)
いやあ、本当に面白い。
もう、語りだすと終わりませんね。
というわけで、最後にもう一つ。
フリーはチョコチョコ振付を変えていたので、ハイドロのところも変えたのかと思っていたのですが、エキシビ見たら腕を上げていませんでしたよね?
ってことはあれか?
この部分はつまりこういうこと?
ジャッジに対するアピール?
点数ちょ~だ~い~!
以上