クリケットについて色々調べて書いていたら、雑誌「G2」でも取り上げられていましたね。
内容がかぶっているかもしれませんが、そこはご愛敬ってことでご容赦下さい(笑)

今回は、少しリアルでかなり下世話な話です。興味のない方はスルーして下さいね。



英語も読めないおばちゃんが、日本国内だけで得られる情報には限りがあるわけで、ワタクシ、今まで誤解していたことがたくさんありました。

その最たるものが「トロント クリケットスケーティング&カーリングクラブ」について、でしょうか。


私、少し前までは、クリケットというのはスケート選手を育てるフィギュア専門のスケートクラブだと思っていたんですよ。

んが!
調べていくと、クリケットというのは私が思っていたものとは全く違う存在でした。


アメリカやカナダには、スケートリンクがたくさんあります。

先日、「炎の体育会TV」でパトリックが練習拠点としている「デトロイト スケーティングクラブ」が出てきましたが、普通、トップクラスの選手はああいった、専用のスケート施設を使います。

そういったリンクは、だいたい何人かの有名なコーチが拠点として使っていて、そのコーチの教えを請いたい選手は、そこに通うしかありません。

日本も同じです。

モロゾフのように、拠点とするリンクを持たず、世界中を飛び回っているコーチもいますが、それはまれなことなのです。

しかし、クリケットは少し違います。

クリケットは、アスリート専用ではなく、普通の人が体力増強目的に利用してもいい、会員制の高級スポーツクラブだったのです。
(もちろん一般客とアスリートが同じクラスで練習することはありませんが、オーサーは子供達を教えることもあります)

アイスリンクは、数多くある施設の中のひとつにすぎず、できるスポーツも
クリケット
テニス
アイスホッケー
カーリング
水泳
スカッシュ
スケート
ジム
等々、充実の内容です。

なんと、結婚式場やレストランやキャンプ場もあります。

これがクリケットのHPです。

動画もあるのですが、結弦くんが練習しているリンクも、アスリート専用のスケートリンクというわけではなく、あくまで高級スポーツクラブの中のひとつだということがわかります。



クリケットの利点は、「高級」というだけあって、そのセキュリティやサポート力の高さにあるようです。

一般の人がウロウロ出来る場所ではないので、有名なアスリートも安心して通えるスポーツ施設、それがクリケットクラブです。


カナダでは何度もオーサーに対し
「何故カナダ人の選手を育てないのだ」
という不満の声も上がったそうですが、そのたびにオーサーは

「カナダ人の選手が僕のところに来ないからだよ。自分にとって外国人の選手を育てるのは、それがビジネスだからだ」

と答えていたようです。

その答えは間違っていません。

ブライアン オーサーは、リンクと契約している通常のコーチとは違い、クリケットというスポーツクラブが、スケート担当インストラクターとして雇っているコーチなのです。

聞こえは悪いかもしれませんが、そういうことです。


オーサーの元で指導を受けるには、一流のアスリートでなければいけないというわけではありません。
高額な入会金や会費を払えば、一般の人も教えてもらうことは可能というわけです。

とは言え、スポンサーもついていないスケーターでは、簡単に通うわけにはいかないのも現実でしょう。


実際、スケ連が結弦くんをクリケットに送り込んだのはかなりの英断です。

クリケットに行ったのは5月で、ANAと所属契約を発表したのは翌7月です。

スケ連が高橋大輔にメダルを取らせるべくチーム高橋を作り、ソチに向けて集中している時に、日本スケ連はクリケットに結弦くんを委ねたのです。

かかるお金のことを考えれば、スケ連の中に結弦くんの環境に心を砕いてくれていた人がいたのは想像に難くありません。

そういう点から、私は決してスケ連を非難したりはしません。
スケ連がどうのこうのと言う人はたくさんいますが、少なくとも、ひたむきにトップを目指す才能ある少年に対しては、ベストな環境を与えてくれたと感謝するばかりです。

日本にいたら金メダルを取れなかったことは確実でしょうし、あの子の精神的肉体的負担はカナダより日本のほうが悪かったと思うので、結弦くんを守るという意味でも、クリケットに送ってくれたスケ連には感謝したいと思っています。




通常、選手にとってコーチは1人です。

共同で指導に当たるアシスタントコーチを何人も抱えているコーチもいますが、メインコーチはだいたい一人です。
そもそも、何人もコーチをつけるとコーチ代も跳ね上がります(笑)

でもクリケットは違います。

コーチとしてトレーシーウィルソンもいましたし、トレーシーも決してオーサーのアシスタントではありません。

他にも、ジャンプ専門、スピン専門等のコーチがいて、それを束ねているのがオーサーというわけです。


元々アイスショーを中心に活動し、コーチ業に興味の無かったオーサーが、昔馴染みのトレーシーに「手伝って」と言われ、少しの間だけのつもりで手伝っていたというのが、オーサーとクリケットの馴れ初めです。

そこにキムヨナが来て、トップアスリートを育てる楽しさにハマってしまって現在に至っているということだそうです。

キムヨナはオーサーに、自分の専属コーチになるよう熱望したようなのですが、オーサーは決して専属コーチというわけではありませんでした。

当時も今もそうですが、オーサーは、クリケットで学ぶ全ての選手のコーチなのです。


クリケットには有名な振付師のディビッド ウィルソンもいますので、日本人選手も夏になると何人も振付けをしてもらいにクリケットに行きます。

かつて、キムヨナが日本人選手に練習を邪魔されたと訴えたことがありますが、彼女の目から見たら、高いお金を出している自分の城に、日本人選手がまるでうるさい観光客のように現れ、自分のテリトリーを荒らしているように映ったのかもしれません。


当時はわからなかったバックボーンが少しずつ見えてくると、キムヨナとオーサーのトラブルも少しずつ理解できるような気がしてきました。

キムヨナはオーサーに高いお金を払っていると言い、オーサーはそんなに貰っていないと言っていたのも、キムヨナがコーチ代として払っていた金額の全額が、オーサーに支払われるわけではないということを理解すれば、どちらの言うことも嘘ではなかったということがわかるのです。

しかも、オーサーはクリケットと直接契約しているわけではありません。

長年アイスショーに携わっているオーサーは、世界最大のアスリートマネジメント会社IMGに所属しており、金銭的なことはこの会社が窓口なのです。

オーサーとキムヨナのトラブルは、キムヨナの個人事務所が巨大マネジメント会社のIMGとトラブルを起こしたことが原因なので、オーサー個人に問題があったわけではないと私は理解しています。

今では2大会連続して金メダルを取らせた名伯楽と言われているオーサーですが、キムヨナのコーチについた時は、コーチとしての実績など無いに等しい人物でした。

しかも、間にクリケットとIMGが入り、その他にも何人ものコーチがいたのです。
貰っていたコーチ代は、本当にオーサーの言う通りの1時間110ドルだったのでしょう。

キムヨナとのことがあったため、今でもオーサーに否定的な人はたくさんいますが、私個人は「スケートを愛しているスケーター、を愛する優しいオジオバさん」
という感覚でオーサーを捕らえています。

ゲイのオーサーからは、男性的な荒々しさより、女性的な細やかさを感じるからです(笑)


で、先ほども少し書きましたが、クリケットでスケートをするのはお金がかかります。
その支援として、ANAの存在は決して切り離すことができません。

んが、ここで誤解されやすいのは、「所属」と「スポンサー」は違うということです。

「所属」の場合の支援には二通りあります。
その企業の社員になる場合とならない場合です。

その企業に運動部があって、選手は全員その企業の社員で、午前中は仕事をし、午後は練習をするというようなシステムになっている場合と、活動費を一部(もしくは全部)支援するという場合の二通りです。

結弦くんは後者です。

1社の支援しか受けていないので「所属=ANA」扱いになっています。


因みに、スキージャンプの葛西選手も「土屋ホーム」の「所属」で部長待遇になっているそうですが、決して会社の仕事をすることはありません。
結弦くんと同じく、活動費用の援助という形だとネットニュースで読んだことがあります。


スポンサーは、一括でガツンと大金を支払ってくれますが、契約によっては色々な仕事をさせられたり、それなりに縛りがあります。

また、複数の支援を受けた場合、1社の「所属」となるわけにはいかないため、浅田選手や高橋選手のように大学名を「所属」にする場合もあります。
(もちろん、企業の支援を受けていない選手は、学校の名前か所属しているスポーツクラブの名前を所属先にしたりします。そのあたりは様々です)


所属契約の場合、活動費用の全てに対し、無条件でお金を出してくれるとは限りません。

結弦くんとANAの場合、基本的な支援は移動費用の援助でした。

もちろんその後、クリケットの費用や衣装にかかる費用など必要な経費を計算し、トータルな費用の援助という形になっていると思いますが、それでもあくまで「スケートをするのに必要な費用」を援助するのであって、スポンサー契約のように、何に使ってもいい大金をポンとくれるわけではないはずです。

それでも、その援助のおかげでクリケットに行けたと私は思っているので、ファンとしてはANAには本当に感謝するばかりです。

オリンピックで金メダルを取ったことで、結弦くんはいくつかのCMに出演することになりましたが、ロッテのCMで結弦くん側にお金が入るのかどうか、私は疑問に思っています。

ロッテはスケート連盟のスポンサーだからです。

今まで真央ちゃんがCMに起用されていましたが、真央ちゃんが今季休養ということで、結弦くんが代わりに出ることになっただけではないかと、そう私は思っているのです。

でも、それはきっと、今まで誰かがやってきたことを引き継いだだけで、これからも継続して支援してもらうためには誰かがやらなきゃいけないことなのだと思います。

味の素のアミノバイタルのCMも同じ。
味の素さんにはオリンピックの前からずいぶんサポートしていただいたので、CM出演はそのご恩返しのようなものなんでしょうね。

スケート連盟にお金を出してくれる企業だって、そのくらいしてもらわないとお金を出すメリットがありませんしね。

オリンピックのシンボルアスリートとしての仕事は、既にP&GとdocomoのCMをやっていますが、これはあくまで「オリンピックのシンボルアスリート」としての仕事なので、先シーズンのものだったのかもしれません。

今シーズンになってからのCMは、ロッテ(ガーナ、キシリトール)、AJINOMOTO(アミノバイタル)、CAPCOM(モンスターハンター4G)が公になっていますが、ネットの情報が正しいのなら枠はあと二つです。

私は、アンダーアーマー以外認めません!(←しつこい)


何にしても、スケ連のスポンサーには全ての選手がそれなりお世話になっているわけですし、これからのジュニア達の為の強化費用も必要です。

人気のある選手が次の世代の為にお金を稼ぐのは必然だと思うのです。


CMに出ても満額選手の懐に入るわけでないのはアマチュアの常です。

プロ選手とは違うのです。


特にフィギュアは、ジュニアの頃から海外の試合に数多くの子供達を送り出し、試合の経験を積ませるなど、費用のかかる強化を続けてきました。

コーチの費用は選手の自腹になりますが、選手の費用はスケ連が出してくれるので、スケ連もそれなりお金は稼がないといけないのです。

一人あたり何十万とかかる異動と滞在の費用が、税金だけで賄われるはずがないことくらい、子供達だって分かっているハズです。

自分がCMに出る立場になった時には、喜んで出てくれるものと思います。



3月の世界選手権で、スケ連に何億ものお金が入ったと、スケ連の金満振りを取り上げる週刊誌もありましたが、全ての大会が稼げるわけではありません。

東日本大会とか東京大会とか、家族しか来ないような大会もたくさんあるのです。
選手が納める参加費だけでは絶対に運営できません。

全日本とかの黒字になりそうな大会も、全国各地を回ります。

さいたまスーパーアリーナや代々木体育館のように、1万人を超える収容人数のリンクばかりとは限らないので、毎回何億もの利益を産むわけではないと私は思っています。

だからといって毎回さいアリや代々木ばかりでは、全国への普及になりません。たとえ収容人数が少なくても、全国をまわらなければいけないのです。

氷を張るだけでも、お客のいない体育館を何日も借りていなければいけないのですから、経費もそれなりかかっているはずです。

NHK杯は、昼12時から夜8時くらいまで見ることができて、一番高い席で12000円でした。
普通のミュージカルなどなら2回転はお客を入れ替えることができる長い時間ですから、決してべらぼうに高いわけではないと私は思うのです。

一部の、お金が稼げる大会のみを取り上げて、スケ連は私腹を肥やしている、ファンや選手は搾取されていると騒ぐのは意味がありません。

ノービスやジュニアの大会、全国の予選大会のリンク代。
山野辺合宿の費用。
子供達の憧れとプライドを表すジャパンウエア。

全てにお金がかかります。

アイスショーの出演料で練習費用を賄っている選手も大勢います。

土日の公演のために1週間会場を借り切り、1回の公演毎にトータルで何百万もの出演料が、世界中の選手達に支払われているのです。


フィギュアには確かにお金がかかります。
選手もファンも、です。

何もないところにリンクを作る、それだけでお金がかかるのですから、チケット代の高さは言っても仕方ありません。

私達ファンにできるのは、できるだけ会場に足を運び、転んでも転んでも立ち上がって私達を感動させてくれる選手達にエールを送ることだけです。

何よりも、スケート連盟が運営している大会は、フィギュアだけではなく、スピードスケートとショートトラックもあります。

フィギュアで稼いだお金はフィギュアを潤しているだけじゃないのです。

スケ連の運営の良し悪しや、スポンサーがどういう企業かなんて、私にとってはぶっちゃけどうでもいいことです。

そんなことに苦言を呈するより、ファンは選手に心配をかけるような行動を慎み、選手が何の心配もなく自分の目指す世界に到達できるよう、心からの応援に努めるべきだと思います。

ファンにできることはそれだけです。
それ以外にありません。

選手の代弁をしてクレームをつけようとか、自分達が守ってあげようとか、そんな考えはファンの奢りです。

なので、私はこれからも、フィギュアというスポーツと、結弦くんを始めとする選手の方々を、
ひっそりと、しかしガッツリと、応援していきたいと思います。


さあ、明日はジャパンオープンです。
ハビの新プロ楽しみだなぁ。


以上