松田さんのブログに乗馬の話が載っていたので、モンゴルの話を少し…。
何年か前になりますが、友人と、一週間馬だけでモンゴルを移動するという、ヘヴィなツアーに参加したことがあります。
二人でその数年前に乗馬初級は取っていましたが、いかんせんペーパーホースライダー。ほとんど初心者と変わりありません。
にもかかわらず、そんなヘヴィなツアーを選んだのは
能天気な私が何も考えなかったからです
他にも楽しそうなツアーはいっぱいあったのですが、なんつーか、「あ、このツアー、いっぱい馬に乗れるんじゃん?」って単純に決めてしまったんですね。
ええ、いっぱい馬に乗れましたよ。っつーか、ケツが痛かろうが馬乳酒飲んで下痢をしようが落馬しようが…
馬しか移動の手段はなかったのです!
(ある意味地獄、笑)
落馬して体中が悲鳴を上げていても、キャンプに戻る手段は馬!
これはもう笑うしかありません。
そのツアーでは、キャンプに出発する前に、一日馬に乗って、その人間の体力や適性をなどを見て、その上で現地の方が各人に合った馬を連れて来てくれるのです。つまり、その馬がそれから数日間の、自分のバディになるという訳です。
しかし、脚力がなく、一人で馬にヒラリと乗ることの出来なかった私の前に連れてこられたのは…
ミドリノマキバオーことウンコタレゾーでした
「ちっちぇーっ! 私のだけ仔馬?私だけポニー?この馬でみんなについて行けんの~?」
仕方がない!現地の人が私の適性を見て選んでくれた馬だ。文句は言うまい。
もともとモンゴル馬は道産子のように体が小さいのですが、それでも馬は馬。三歳になるまで人は乗せません。つまりタレちゃんも、体が小さいというだけでちゃんと大人の馬なのです。
そして、日本で取得した乗馬初級は
モンゴルでは何の役にも立ちませんでした(笑)
乗馬クラブで教える乗り方はブリティッシュスタイル。ベタッと座るカウボーイなどはウエスタンスタイル。モンゴルは基本、ほとんど立ちっぱなしというモンゴルスタイルです。
まあ、私たちは初心者なので、ツアー会社のしおり通り、スノボ用のお尻プロテクターなどをはいたりして痛みに備えたのですが、これもまた何の役にも立ちません。
「そもそもお尻にプロテクター着けても意味ないじゃん!当たるのは股だよ!股!」
「痛い~!私一日でギブアップ~!」
「何言ってんの!キャンプは明日からだよ!」
「だって股痛いんだも~ん!」
ということで私は、前のツアー客が置いて行った座布団を鞍につけてもらいました。それが、後に悲劇を呼ぶとも知らずに
座布団をつけたタレちゃんに乗って颯爽と草原をいく私達。
馬は走る気満々ですが、私達は歩く気満々です。
「ちょっと~、凄い馬糞だらけ~」
「一メートル四方に五個はある~」
「あっ!これなんか牛糞だよ!北海道出身者の眼は騙されないぜ!つーか、ここで落馬したら死ぬな。精神的に!人間として終わるよ!」
そんなヘタレた事を言っていた私達ですが、そこはもちろんモンゴルブートキャンプ!甘えは許されません。
「チョーッ!チョーッ!」
という、馬を走らせる掛け声を習い
「いざ!行くぜ!チョーッッ!」
……タレちゃん全く走りません。
「チョーッ!チョーッ!」
私達の掛け声だけが草原に響き渡ります。
そんなヘタレどもを見かねて、お馬の先生が、私達のため、ロープを結んで即席のムチを作ってくれました。
「馬は鈍いので、少し強めにお尻を叩いてください」
はい!分かりました!
ピシッ!
「チョーッッ!」
……タレちゃん、走りません
ピシッ!
ビクッ!!
「あ~れ~っ!」
ところが、馬というやつは、尻は鈍いが耳がすごくいいので、隣の馬が叩かれた音を自分が叩かれたと勘違いし、いきなり走り出したのです!
「こら~!誰が走れと言った~! まず並足!なみあしからだって~!ぎゃ~助けて~!」
そんな事を繰り返し、走っては歩き、昼食を食べたら昼寝をし、夕方には次の目的地へ行って夕飯食べてテントで寝る。そんな生活にもすぐに慣れた私達。トイレも青空トイレ!気持ちいい!360°丸見えだ~
しかし、のんびり歩いている時、空になっていた馬が私の背後からそーっと近付き
「あ”っ!」
「ああっ!!」
いきなり私の背中に鼻水をなすり付けやがったのです
「くっそう!やりやがったな~!こらー!着替えあんまり持ってきてないんだぞ~!」
「うわ~!ハナジルハナジル~(←ガイド)」
白いTシャツの背中にくっきりと緑色のハナジル…。
やられました。みんな大爆笑です。
その後先生はベテランの方に変わり、さらに走りを鍛えられる私達。しかし、草原はただの草っぱらだけというわけではありません。岩があったり穴があったり、結構危険です。
ある時、走っている目の前に岩が見えてきました。
危ないっ!と思った瞬間!馬は
ヒラリッ!
「うっそ~!障害は習ってない~~~っ!」
そして、着地と同時に
スカッ!
あぶみから右足が外れました!
「ギャ~~ッ!」
体勢を立て直そうとする努力もむなしく
スポッ!
左足も外れました
ズルッ!
「あ~れ~~!」
私は思いっきり、真横になったまま落ちました。
「いや~、座布団は滑るから危険なんだよね~(←ガイド)」
おいっ!そんなことは落ちる前に言え!落ちる前に
そんなヘタレな私が相手では馬もストレスがたまるだろうと、キャンプに戻ってから先生が私のタレちゃんを思い切り走らせていたのですが、戻るなり先生はこう言いました。
「この馬は速い!この中で一番いい馬だ」
マジっすか?
タレちゃんは、本当にマキバオーだったんすかーっ?
つか、そんな馬、私には危険だったんじゃないんですかー?
そのツアー、たった4人しか参加メンバーがいなかったこともあり(ガイド一人先生一人、食事の用意やテントを運んでくれる家族が3人。合計でも9人)まるで家族のように和気あいあいとしたキャンプでした。
草原にじゅうたんを敷き卓袱台をだしてお母さんの作ってくれる手作り料理を食べてテントで寝る。死ぬほど過酷でしたが、とにかく楽しかった思い出に間違いありません
まだまだいっぱいエピソードはありますが、それは又、いつか別の機会で。