厚労省の不正事件を機に、“統計調査省”の設立を! | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム

本日は、うずら様の寄稿コラムです!

基幹統計府政問題は極めて深刻な問題ですが、有識者などの中には真正面から受け止められない人たちが多くいるようです。

おそらくドミナントストーリーとして「緊縮財政」が前提条件にあるからではないでしょうか?

本日はうずら様が、切れ味鋭く基幹統計府政問題を論じておられます。ぜひとも、じっくりとご覧ください。

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厚労省の不正事件を機に、“統計調査省”の設立を!~うずら様

厚労省の毎月勤労統計不正事件の発覚により、安倍政権や与党支持者たちによる“史上空前の賃金爆上げはアベノミクスの大成果”という宣伝文句が、ただの悪質な偽装であったことが明らかになりました。

こうした事態を受けて、識者から、“2013~2015年の実質賃金下落幅は累計4.3ポイントと2007~2009年のリーマン・ショック級(▲5.2ポイント)の大暴落だった”、“アベノミクスの賃金偽装が露見した”との指摘もあります。
【参照先】
衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた』(中原圭介 経済アナリスト)

早くから、安倍首相や自民党の緊縮主義&新自由主義的経済政策運営を手厳しく批判してきた進撃の庶民のコラムニストや読者の皆様からすると、アベノミクスの賃金偽装や失業率改善偽装、GDP偽装の類いは、すでに「常識レベル」ですよね。

まぁ、今回の不正事件が明るみとなり、遅まきながらマスコミも、「アベノミクス=アゲゾコノミクス」だったという事実を認めて、我が国はいまだ深刻な不況下にあると報じざるを得なくなったことは一歩前進なんでしょう。

ですが、政・官・財・学・報をはじめ国民が、このまま正しい事実認定を受け容れ、経済政策の舵を本来向かうべき方向へと切れるのかという点には、大いに不安を抱いています。

今回の事件で明らかになったのは、

①緊縮政策による統計関連予算や人員の大幅な削減が、統計不正の真因であること

②アベノミクスの実態を糊塗すべく、賃金データをはじめ各種経済指標のデータが偽装された疑いが濃厚であること

③日本経済は相変わらず不況の病床にあること

という点です。

よって、必要になるのは、

❶統計関連予算や人材の大幅な拡充

❷安倍政権の経済運営に対する強い批判と退陣要求

❸不況脱却に向けた思い切った景気対策の実施

であるべきです。

なのに、実際に沸き起こるのは、「厚労省の役人はけしからん。奴らの行動を厳しく監視しろ!」とか、「全員の給料が増えても実質賃金が下がることもある」、「やっぱり不景気だよな…。みんな苦労してるんだから、国も無駄遣いをなくせ!」といった見当違いな意見ばかりでウンザリです。

そんなウンザリ事例の一つがこれです。↓
統計問題「ミスで生じた200億の諸経費は国民負担」に潜む“騙しのテクニック” 舛添氏が厚労省を糾弾

舛添氏は、Abema的ニュースショーに出演し、元厚労大臣の肩書を自慢しつつ、今回の不正統計事件を次のように批判しています。

・厚労省は三流官庁。東大法学部を出たキャリアは、成績の良い順に財務省、経産省へ配置されるので厚労省のキャリアは質が低い。

・統計所管部署は日の当たらない閑職。

・オレが大臣時代に大改革の末、統計法に統計の重要性を書き込ませたのに守られていない。

・会計監査員のように、統計の不正を指摘する統計検査院が必要。

・今の日本は失業者がいなくて、さらに外国人労働者をどんどん増やさないといけない状況。つまり、失業用の雇用保険はジャブジャブ余っている。それが、役人の隠し金庫になっている

彼の発言を聞くにつけ、都知事時代に政治資金を私的流用し漫画や掛け軸を買っていたセコいネズミ男風情が偉そうに何を言うかと呆れるばかりです。

まず、社会経験や業務スキルの優劣ではなく、学卒時の席次順でキャリアの質を推し量るのは無能の極みです。
国家一種試験の成績順だけで、その先40年近いキャリア官僚としてスキルや質を決めてしまうなんて、ただのバカですよ。
それが正解なら、プロ野球の世界でドラ1入団の選手が消えてしまうのは、いったいどういうわけなんでしょうね?

また、彼は、自分は統計の重要性にいち早く気づき、法に明記させたと自慢気に語っていますが、それなら、なぜ、厚労省の統計部門は左遷部屋にも等しい閑職のままになっているのでしょうか?

さらに、統計部門の予算や人員不足という病根の治癒をガン無視し、不正摘発強化でシバキ上げようとするヒステリックなオバちゃんレベルの発想には失笑を禁じえません。
この程度のおっさんが大臣や都知事にまで上り詰めたのかと思うと、政界の人材不足は極めて深刻です。

総務省のHPには、統計の重要性について、次のように謳われています。
『統計は、行政施策の企画・立案・評価のための基礎的情報を提供するもの。最近では、政策効果の事前・事後評価を行うためにも、統計の重要性が増大。また、社会・経済の状況が大きく変化する中で、個々の世帯や企業が的確な意思決定を行っていく上でも統計の重要性が増大』

統計は、社会の現実や実状を正しく映しだす鏡の役割を担う極めて重要な行政行為ですから、精緻かつ長期的なデータの収集・分析は、適切な政策立案に不可欠です。

にもかかわらず、厚労省のみならず、各省庁の統計部門は、長年続いた緊縮政策のせいで、予算・人員ともに削減される一方で、見るも無残な状態です。

国の統計職員数は、平成21年の3,916人から平成30年には1,940人と半分以下にまで減らされています。
特に、警察庁や法務省なんて、たったの8人しかいません。
また、統計関連予算も、国勢調査期を除くと平成11年/451億円→3平成30年/350億円へと激減しています。
こんな体たらくでは、ロクなデータがとれるわけありませんよね。
【参照先】http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/2-2.htm

時の政権の顔色を窺いデータ偽装が横行する統計不正を二度と起こすまいと考えるのなら、本来やるべき政策は、統計部門への監視強化ではなく、予算や人員の大規模な拡充です。

私は、新たに「統計調査省」を設立し、各省庁に分断された統計部門や職員を統合したうえで、予算や人員を大幅に増やすべきだと考えています。

人員規模1~1.5万人、予算規模3,000~4,000億円程度を確保し、特に、調査担当職員を大幅に増やして、物価動向などに関して日計データを収集するなど、より生活実感に近い調査体制を構築することが必要です。
また、企業や商店、医療機関、教育機関、各家庭などといった調査対象に、統計調査への協力を強く義務付ける法的なバックアップも必要になるでしょう。

こういった問題が起きた際に、ただ単に役人の怠慢を糺して溜飲を下ろそうとするのは、情緒不安定な愚民の所業にすぎません。
問題の根源を正しく捉え、解決に向けた具体策を導き出そうとするのが賢者の態度です。

舛添氏のような愚物は、「いまの日本には失業者などいない」とトンデモナイ大嘘を吐きますが、日本の完全失業者数は160万人近くいますし、統計に漏れた潜在的失業者は400万人規模にも上ると言われます。
彼は何を根拠にいい加減なことを言っているのでしょうか?

また、彼は、失業者がいないから雇用保険がジャブジャブ余っているなんてアホなことも言っていますが、雇用保険の積立残高が平成16年以降急激に積みあがってきたのは、失業給付の受給資格を持たない非正規雇用の横行や失業給付日数の削減といった“失業者締め出し策”のせいなのは明白です。

雇用保険の余剰が役人の隠し金庫になっていると文句を言う前に、例えば、自己都合や会社都合のかかわりなく失業保険給付日数の上限を倍増させるなど、失業給付金の拡充策を具体的に提案すべきです。

起こしてはならぬ不正の発覚を契機により抜本的な改善を図る、つまり、「災い転じて福となす」という当たり前のことができなくなったことに、我が国のトップエリート層の質の劣化を感じます。

厚労省の不正統計事件を追及する者は、口では「今回の事件を単なる厚労省や担当部局の問題に矮小化してはならない」と偉そうに言うものの、実際にやっていることは、舛添氏みたいに厚労省の役人いじめの域を出ない、オバちゃんの井戸端会議レベルの批判がほとんどです。

こういった類いの議論が、常に非建設的な結果に収斂する原因は、緊縮主義的発想で財源にキャップをはめ、新自由主義的発想から行政の主導力を弱体化させようとするからにほかなりません。

おそらく、今回の事件も、各省庁の統計部局に対する綱紀粛正の締め付けと監視のためのくだらぬ審議会の乱立、そして関連予算のカットで決着するでしょう。
そして、数年先に、再度統計不正の第二幕が開くのは火を見るより明らかです。

(了)


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