没落するほどキモチイイ現象【ヤンの地雷】 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム

本日はヤン様の寄稿コラムの日です!

 

「没落するほどキモチイイ現象」とは、斬新な視点かつ、日本の現状を的確に捉えている言葉だと思います。

 

ヤン様もプロの言論人を超えました。日本の出版社の方々は、進撃界隈に目をつけないなんて、何をしているんでしょうか。

 

それではヤン様コラムをどうぞ!

 

人気ブログランキングへ


『没落するほどキモチイイ現象【ヤンの地雷】』

 

新古典派経済学が衰えないわけは?

 世の中なんだか相変わらずデフレですし格差の拡大も止まる気配はなし、北朝鮮問題では日本政府は有効な手立てを何一つ打てず、中国や韓国のグローバル企業に日本企業はシェアを奪われつつあり、また技術立国といっていたのも数年前まで。今では日本発の大ヒット製品といわれても思いつかないような有様です。

 

 これらは例えば経済論とイノベーション論として、もしくは国力論と国際政治論として論理的に「なぜそうなったのか?」という説明は可能です。端的にいえば国家が国土にたいする投資をケチり、デフレを放置し、相対的に国力は低下し、国内投資が減少し、というように説明できましょう。

 ではなぜその説明が根付かないのか?一説には例えば経済学者が新古典派経済学であり、それが主流であり、その思想が政界、メディア、国民にまで広がっているからといわれます。本当でしょうか?

 少なくとも大きな視点で見た場合に、これだけ辻褄の合わない経済学が「一旦思想として広まったから、矛盾を放置し続けて根付いている」と本当にいえるんでしょうか?

 じつは他の理由があるのではないか?それは大衆化、衆愚化という現象があるからではないのか?という視点から本日は議論を展開したいと思います。

 

 なおこの議論はかなり悲観的になりそうですし、また処方箋を示せといわれてすぐに示せるたぐいのものではないでしょうが、まずは現実認識としてこのような解釈があり得るとご提示差し上げたいわけです。

没落するほど「キモチイイ」

 見出しに「おいおい、麻薬ジャンキーかなにかの議論か?」と驚かれるでしょう。順を追ってご説明差し上げます。

 

 日本ではここ20年間、格差は相対的には緩やかですがそれでも拡大の一方であり、非正規の問題、もしくは少子高齢化の問題など、マクロで見れば数々の問題を抱えております。その殆どの問題は財政出動の一択で解消が可能であるものですが、一向に解消される気配はありません。

 国民の生活は高齢者であれば年金を減らされ、若者であれば安定した職を得るのが1990年代よりは難しく、ワーキングプアやブラック企業等々の問題が国民を苦しめております。

 国外を見れば間近でいえば北朝鮮問題、そしてそれに付随するアメリカの動かなさ、もしくは台頭する中国への対処の不可能性等々。まさに内憂外患とはこのとこでしょう。

 

 このような状況が日本国民に抱かせる感情とは何か?ある種の諦観、もしくは劣等感や劣情でしょう。とくに後者の劣等感を抱く人が多いのではないでしょうか?なぜならばほんの10年前までは「日本の技術はすごい!」と信じて市場原理の自由競争に身を晒していたわけですから。

 また2008年辺りまでは「日本と中国が戦争しても負けることはない。日本の自衛隊の実力はすごい」と信じ込んていた人も多くおりましたし、筆者もその頃はその一人でした。

 しかし現在の現実を見ると日本の大企業は世界のシェア争いに破れ、日本政府は北朝鮮にすら何も有効な手立てを打てない。これで劣等感、劣情を抱かないわけがないでしょう。

 

 しかしこの劣等感、劣情が良い方向にバネとして作用すればよいのですが、隆盛したあとで凋落していく最中というのは人間はとかく現実を認めたがらないものです。重箱の隅をつつくように「我が国が他より勝っている理由探し」に明け暮れるわけですね。

 なぜこの「勝っている理由を探すか?」というと、抱いている劣等感を慰め、いっときの優越感を得たいがためです。

 このような大衆感情の作用というのは、とにかく優越感を得られれば相手は誰でも良いというように流れ、それは国内勢力にも及びます。

 例えばネトウヨが攻撃するサヨク、マスメディアなどの例は典型的ですし、もしくは農協、郵政、医師会ととにかくなんでも良いわけです。

 なぜ攻撃するのか?いっときの優越感を得たいがため、つまりは「キモチイイ」になりたいがためと私は診断します。

 なぜそう診断できるのか?これらの現象を引き起こす主体の言説に、論理性、一貫性などが全く認められないためです。

 

 上述したような現象が、上述したような作用として働いているとするのならば、それはつまり「没落すればするほどに劣等感が増し、優越感を求めて攻撃的になり、キモチイイを求めるようになる」わけですから、極論すれば「没落するほどキモチイイ現象」と仮称します。

 

 この没落するほどキモチイイ現象とは、例えば出来る仕事のライバルがトラブルを起こしてしまったときに、詰問するという気持ちに似ているかもしれません。相手が100%悪い(と大衆が仮定する)場合には、自分は圧倒的優位な立場で相手を「イジメられる」のですから、自分は殆ど何をしても傷つかないという前提のもとに正義の旗を掲げながら相手を糾弾できるわけです。

 でも会社ではやりすぎると当然ながら相手をかばう人が出てきますし、やりすぎたらその人の評価が常識的にはまわりからは落ちるでしょう。

 政治の場合は「まわりからの評価」ではなく、自身で政策を誤り、自身の首を絞めるという結果になるわけです。そしてさらなる劣等感を抱いてという悪循環が繰り返されるわけです。

20年の経路依存性

 上述したように診断し議論してみたわけですが、ここで経路依存性の問題を語らねばなりません。経路依存性とは物理の慣性の法則のようなもので、一度その方向に振れてしまうと一定の勢いを持ってその方向が継続するという概念です。この場合、その方向が正しいかどうか?は一切の関係がないといえましょう。

 とすると日本は少なくとも1998年から20年間、このような悪循環を続けてきたわけですから、経路は強化されて強固になっているわけです。

 

 藤井聡内閣参謀関与は昔、「新しいストーリーを示してやることが必要だ」という議論を展開されましたし、私もこの議論自体には異論はありません。しかし問題は劣等感の裏返しとして攻撃的になっている「没落するほどキモチイイ現象」の人たちが、その新しいストーリーを受け入れる余地があるのかどうか?ということです。

 一般的にいって例えば何かしらのコンプレックスを持っている人に、そのコンプレックスを解消する方法を提示するというのは有効でしょう。

 しかし「没落するほどキモチイイ現象」の人たちは、抱いている劣等感そのものが優越感に変じるわけですから、劣等感を解消しようとしたら優越感まで解消されてしまうわけですね。これは尋常ならざる課題でありましょう。

没落するほどキモチイイに大義を与える経済学

 経済問題的にいえばこの「没落するほどキモチイイ現象」とは、何らかの経済学的大義を必要とします。たとえば農協の解体は「既得権益だ!自由競争しろ!民営化!」などですね。これらをわかりやすく、ワンフレーズで与えてくれるのが新古典派経済学、グローバリズム、新自由主義といえましょう。

 断っておきますとここでは学問的な誤りを指摘しているのではなく、大衆論的に非常に分かりやすい大義をこれらの思想と主義が与えたということです。

※まあ、学問的にも誤ってるんですけどね(笑)

 

 グローバリズムの問題点として指摘されるのは「合理的個人などいないのに、個人へと解体して共同体やコミュニティ、常識や伝統、文化を解体する」という点ですが、現在の「没落するほどキモチイイ現象」を見ておりますと、この問題点の指摘は非常に正しかったといえるでしょう。

 なんのことはない。主流派経済学は原子論的個人の生成に成功し、その原子論的個人というのは社会科学的にいわれる大衆であった。その大衆が自身の劣等感のために主流派経済学の言説を付け焼き刃で身につけて、大義として利用するという循環が生まれたのが、現在という時代なのだと思うわけです。

 

 この循環を断ち切り、良い方向に転換する策はないものでしょうか?ひとつだけ思いつくとしたら・・・ネット環境がなくなったら、この循環もなくなるかもねと(笑)

 まあ、それは土台無理な話なので脇に置くとして。このようなおそるべき状況が現代日本である、という認識は必要かと思います。最後にこのことを裏付けるような記事をご紹介。

10・21 安倍首相、秋葉原演説会ルポ 政策より「敵たたき」に喝采(毎日新聞)

 それにしても、5年前にさかのぼり「看板を替えても3年3カ月の責任は消えないんです!」「高速道路無償化もできなかった!」といった旧民主党批判は、さすがに食傷気味だろう、と思いきや、聴衆が一番盛り上がったのはこの話題であった。

 首相が旧民主党政権や、同党の元所属議員らで作った新党を批判するたび、声をそろえて「そうだ!」と合いの手が入り、日の丸の小旗が波打つ。少子高齢化対策は聞き流す感じ。合いの手も少ない。政策を聞きたいのではなく、「敵」と位置づけた人とその失敗を、安倍首相がたたく痛快さを味わいたいかのようだ。

 ね?

 

 

(了)

 

 

ヤン様の記事をもっと読みたい方は下記ブログへ! ↓  ↓  ↓ 

コテヤン基地 http://ameblo.jp/yangh-wenly/

 

発信力強化の為、↓クリックお願い致します!



人気ブログランキングへ