『震災復興に必要な事』 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム
水曜日は、みぬさ よりかず氏による経世済民・建築論です!


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経世済民・建築論『震災復興に必要な事』

早い物で東日本大震災からもう直ぐ5年です。現在被災地では復興が進んでいますが、何か活気のある話は伝わって来ません。昨年5月に宮城県の被災地を廻りましたが、瓦礫が片付き、本格復興はこれからという印象でした。

庶民から集めた政治資金の横領疑惑で捜査されている田母神氏ですが、彼の主張で今も傾聴に値するのが震災復興の考え方です。つまり先ずは原状回復を優先し、本格的な復興は時間を掛けて行うべきとの意見です。これは敵に攻撃を受けた際、自陣を復旧する自衛隊の考え方がベースとなっています。

多くの方が同じ印象を持っていると思いますが、津波に襲われた被災地の状況は、大東亜戦争で米軍に空襲を受けて焼け野原になったかつての日本と同じでした。いわば、現代における大規模自然災害とは、かつての総力戦の惨状そのものです。この基本を押さえない限り震災復興の問題解決は困難です。

というのも、例え小さな建物をひとつ作るにも、大変な労力と時間が掛かる訳ですが、被災地では、建物どころか地域全体が壊滅した場所もあります。復興の為に必要な時間と労力は、その地域が形作られたのと同じ天文学的なエネルギーとなるのです。

そのような観点で考えると、現時点で被災地の復興が進まないのも当然でしょう。原状回復を飛ばして復興を目指す姿勢には大いに疑問です。また、急いで復興した地域が、魅力的な場所ならない方が普通です。現在、東北の被災地で復興と称している街づくりは、失敗が確約されています。

そのような被災地の現状に対して、またしても無駄な公共事業という批判とレッテル張りに勢いを与える事にもなる事も懸念します。私は、大規模自然際が発生した地域では、先ずは、その地域が再び津波などの被害の可能性があろうとも住民が望まない場合を除いて、先ずは原状復旧だけ実施すべきです。

千年に一度の震災と考えれば、同規模の津波の発生までの時間はあります。大東亜戦争で空襲を受けて焼け野原になった、かつての日本でも、先ずはバラックを建てて、つまり仮設住宅を作り、徐々に街づくりを行いました。震災の場合も同じ手法を取れば良いだけです。

私が非常に疑問を抱くのは、津波の被害を受けた地域を無人地帯にして、高台移転を進めている点です。住民の方が恐ろしい津波を受けた二度と場所に住みたく無いと望んでいるのなら別ですが、臨海部に生活拠点を設けたのも利点があるからでしょう。それを無理に移住させれば地域の活力が失われます。

私が現状復旧に拘っているのも、実は、日本の殆ど地域で、多くの国民が臨海部で生活しているからです。実際に南海トラフ地震では、東日本大震災を上回る津波被害が想定されています。その場合、津波の被害を受けた地域では、東北と同様に臨海部を日本人が捨てて高台移転を強要するのでしょうか?

例えば、鎌倉の大仏には、奈良の大仏と異なり大仏殿がありませんが、当初は大仏殿があり、後に津波で流された記録に残っています。あの周囲には沢山の民家があり、巨大津波が発生すれば、甚大な被害が予想されます。東北で高台移転を強制するのなら、今から鎌倉でも同じことをすべきでは無いでしょうか?

もちろん、私の意見は、高台移転をすべきでは無いというものです。例えば、高知県で計画されているというシェルターを各住戸に設置する。避難用のタワーを建設する。巨大な堤防を築き、景観に配慮する様にもっとコストを掛けて緑化しするなど方法は様々です。

今、都内ではスーパー堤防の工事が始まっています。鬼怒川の堤防決壊で注目を集めているスーパー堤防ですが、百年単位の時間を掛けて徐々に街づくりと合わせて行うのがポイントです。仮に被災地で高台移転を行うにしても、同じくらいの時間を掛けるべきでは無いでしょうか?

私が地方都市を訪れた時に、街づくりに失敗したなと感じるのは、大抵、急いで再開発を行った地域です。一人一人の人間の知恵など大したことは無いのです。地方で公共投資を積極的に行う事は大賛成ですが、時間を掛けてひとつひとつ丁寧に行う必要があるでしょう。時間を掛けるのはリスク軽減の一つの手段です。

また時間を掛ける事で、将来的にも地域に仕事が発生するのですから、地域の未来にも希望が持てます。期待を発生させるのは、金融緩和などでは無く、具体的な事業の長期計画であり、人々が地域で暮らす事の後押しにもなるでしょう。

ところで同時多発テロを受けたNYの被災地の隣に新しい駅が完成したのですが、当初の建設予算は約2300億円が、工事が遅れた事もあり最終的な工事費は約4400億円まで膨らみ、世界で「最も高価な」駅になったそうです。ド派手なデザインの駅舎が特徴ですが、日本も新国立でカネをケチっている場合じゃ無いです。

重要なのはカネでは無く、モノだと思うのですが、モノの質に拘れば時間が掛かり、時間が掛かればカネも掛かります。カネは日本政府が通貨発行益を駆使すれば幾らでも無尽蔵に用意出来ます。その場合、問題なのはインフレですが、今の日本はデフレであり全く大丈夫なのです。むしろモノの供給力の毀損の方が問題です。

結局、今、東北被災地で行われているのは、一種のショックドクトリンです。形を変えた革命による破壊が被災地で起きているのです。それ故、震災復興の問題点を検証し、様々な改善を加えるのは、とても重要です。日本全国で東北と同じ震災のリクスがある以上、震災復興は他人事ではありません。明日は我が身なのです。



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