ダニエル・ゴールマン「SQ 生きかたの知能指数」読みました・・・その1 | 親愛なる人に-読書の薦め

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読んだ本の感想などを、本屋さんで見かける推薦文のように綴ります・・・お薦め度合いは、☆の数で評価します。親愛なる本好きの人たちに,このブログを届けたいです.

ダニエル ゴールマン, 土屋 京子
SQ生きかたの知能指数
☆☆☆☆+
2007年 1月 533p 日本経済新聞出版社 
ダニエル・ゴールマン著、土屋京子訳「SQ 生きかたの知能指数」本当の「頭の良さ」とは何か」 読みました。
*本書はアメブロからの依頼で読みました。http://vcount.ameba.jp/click/click.cgi?id=39559

この本は、1995年に世界的ベストセラー「EQこころの知能指数」(こちらは未読です)を書いた著者が、最新科学の研究成果を踏まえて、どうしてヒトはあんな行動を取るのか、どのような生き方がよいのか、説いた本です。


最新の研究では、オーラというわけではありませんが、脳にある理論的な考える部分より速い速度で、相手の表情などを察する能力がヒトには備わっているそうです。本書ではこれを「裏の道」と呼んでおり、ヒトがいろいろことを判断する際に、無意識にこの経路を使っているとのことのようです。


また、ヒトとヒトが会話をしたりしているとき、超能力というわけではありませんが、お互いの脳が刺激し合い活性化しあっているそうです。だからヒトは思っている以上に他人の気分に影響を受けたり、自分はもちろんのこと他人の感情が健康に影響を与えたりしているそうです。わたしたちが普段考えるより人間関係って大切なんだと再認識させられました。


人間関係はある意味、生き方にも通じるところがあります。著者が説く「良い生き方」は、感情的な面で他人とうまく付き合うということにつきます。それには相手を思いやり共感することが大事となります。「情けは人のためならず」なんてことわざがありますが、まさにこのことわざ通りなんですよね。


また、ギスギスした人間関係や拝金主義というのはやはり、脳科学的にみてもよろしくなさそうです。賢く健康に生きるためには、他人から愛される共感を呼ぶような品格=愛嬌が大事だということです。何かこの定義って、愛される芸能人、スポーツ選手の条件みたいです。。。


いずれにせよ、最新科学から見てヒトとヒトとの思いやりが大事と正面切って書かれているのは、うれしく思いました。これから、こういう知見が社会、経済にもだんだんフイードバックされていってほしいものです。


以下、覚え書きです。章ごとにまとめてあります。分量が多いので2回に分けたいと思います

後半部分はこちらです・・・
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プロローグ 新しくわかってきたこと
脳の画像処理装置fMRI(機能的時期共鳴断層撮影装置)を使った心理学者と神経科学者の共同研究によって、ヒトの脳と脳は連動することがわかってきました。ヒト同士が生体レベルで影響を及ぼしていることが解明された今、望ましい生き方に関する議論も次元が変わってくるといえます。


第1部 人間は関わり合って生きている
第1章 感情のプラス・マイナス
ヒトの感情は、他人に伝染します。そのとき脳の中の扁桃体が活性化します。この脳中の感情の経路を本書では「裏の道」と呼びます。対照的に「表の道」は理路整然と並んで意識的に働きます。「裏の道」は「表の道」より一瞬速く働きます。「裏の道」は他人の感情に影響を受けます。他人の悲しい話を聞いたとき、自分が悲しいことを経験したかのように脳が反応することも、最近のfMRI等の研究で判ってきました。


第2章 ラポールの秘訣
ラポール(rapport)とは、ヒトとヒトとの間で心が感じ合うと感じるときの同調性の気持ちを表す臨床心理学の用語です。ラポールによる同調は理屈無しで喜びを感じるものであり、マスゲームやダンスのように集団が大きければ大きいほど喜びも大きくなります。この能力は赤ちゃんにも備わっていて、お母さんと赤ちゃんは言葉にならない原初的会話をし、赤ちゃんは他者とのつきあい方を初めて習います。大人になってからのコミュニケーションにおいても原初的会話は基本となり、他の全ての人間関係を支える基礎となり、あらゆる相互関係における前提となります。


第3章 ミラー・ニューロン
ヒトは本能的に周囲の人間の表情(特に恐怖など)に注意を払います(「裏の道」が使われます)。これは原始時代のヒトが、群れを作って多数の目と耳を確保することによって、単独で行動するより危険に対応することができたとからと考えられます。相手が微笑むと自然に笑みが漏れたりします。これは脳の中でミラー・ニューロンが働いたからです。ミラー・ニューロンは微笑みだけでなく、ヒトが抱く感情に対しても反応します。ヒト(子供)はミラー・ニューロンによって、感情、行動、社会の仕組みを学んでいきます。また仲の良い夫婦は内面の思考、感情、記憶などが相似して相手と同じように考え感じるようになります。逆にフーリガンなどの集団は、共通した感情が群衆に広がる生理的同調といえます。優れた俳優や音楽家は優れたパフォーマンスによって場内を魅了し、聴衆を共通な幸福な感情に染め上げる力を持っています。ヒトとの感情、人数に問わず伝染するのですね。。。優れた作家の作品に感動したりするというのも、このような生理的同調ともいえるのではないでしょうか。


第4章 思いやりは人間の本性
誰かを助けたり、その事実を聞いただけで、温かい気持ちが高まるなどの感化作用が生まれます。このような心の高揚には伝染力があり、「裏の道」が関与していると考えられます。相手に注意を集中し共感すれば相手の内面を察することができますが、ストレスが多ければそのような共感能力は落ちます。ヒトはその気になれば困っているヒトを無視することもできますが、そのような冷たい反応は仲間を助けようとする原始的で反射的な衝動を抑えて受けた結果です。ヒトの脳には他者の苦痛に同情して行動を起こす、ミラー・ニューロンが関与する反応回路がしっかり組み込まれており、他者に共感すればするほど助けたいという気持ちが強くなります。これらの原理は東洋家の孟子にも通じるところがあります。


第5章 キスの神経解剖学
ヒトを好きになったり、ビジネスパートナーを決めるときなど、瞬間的にヒトは判断しています。その判断は紡錘細胞が「裏の道」経路で判別します。行動経済学者が行う「最後通牒ゲーム」で、ヒトが合理的な理由でない行動を取るのも、「裏の道」が働いていると考えられます。○○恐怖症のような原因も「裏の道」が働いているといえますが、訓練次第で、「表の道」が関与し、○○恐怖症が克服され、理性的な行動を取れるようになります。


第6章 社会的知性
社会的知性は社会的意識と社会的才覚で考えることができます。社会的意識は、人の感情に寄り添う原共感、相手に波長を合わせる情動チューニング、他者を理解する共感的正確性、社会の仕組みを知る社会的認知能力などの能力が含まれます。また、豊かな人間関係を築くためには、社会的意識だけでなく、社会的才覚同調性、自己表現力、影響力、関心)も必要です。筆者は、人間関係を育むこれらの要素を排除してしまえば、社会的知性の概念は計算高い知性ばかりを評価するものになってしまうと危惧しています。


第2部 壊れたきずな
第7章 「汝」と「それ」

人はそれとして扱われると深く傷つきます。「汝」としてみてもらえれば、満足感が得られます。中島みゆきの「顔のない街の中で」を思い出しました。

第8章 ナルシシスト、マキアベリ主義者、反社会的人格障害者
ナルシシストは共感が欠如しているので自己中心的な言動が他人からどのような反感を買っているかわかりません。また批判を受け入れられず自惚れ、栄光の空想を夢想します。マキアベリ主義者は冷徹な頭で社会的計算をしますが、感情面での結びつきには興味がありません。反社会的人格障害者にとって、他者は常に「それ」で他者の苦痛に共感する力が皆無で、社会的情動が欠如しており、懲罰が抑止力になりません。何か自分の周りの困ったちゃんたちに、当てはまりそうな事例だったりして。。。


第9章 心の行間を読む能力
他者の気持ちを察したり考えを推測したりする能力=マインドサイトは、共感の基礎となる能力です。マインドサイトがないと、モノを相手にするのと変わらない空虚な人間関係しか結べません。


以下は、次回に続きます・・・(1月28日の予定です)


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