学校文法では[will+do]、[be going to]、現在進行形[am/is/are+doing]を未来表現と位置付けるように、これらはいずれも予定を述べる時に使います。それに加えて、未来進行形と呼ばれる[will+be+doing]という表現もあります。

 現在進行形だけでも予定を表すのに、[will+be+doing]というさらに複雑な構造を使った表現を使うには理由があります。それを読み解くには、法助動詞will、現在進行形の表す未来がどのような性質のものかを知ることが必要です。その鍵は言語変化にあります。

 

 言葉は長いスパンで見ると変わっていくものですが、それは必ずしもイレギュラーでとらえられないものではありません。英語の場合、古英語期には豊富だった動詞語尾の屈折が徐々に失われていき1500年ごろまでにほぼ消失します。その過程で内容語の一部が文法性を示す機能語に特化(文法化)し、屈折に代わる文法手段として発達します。

 単純相である原形動詞[do]は屈折を失い無標化した動詞形なので自由度が高く様々な用法に汎用されます。進行相[be+doing]は単純相の相aspectを変換し、意味をより限定した有標の表現です。進行相はprogressiveあるいはcontinuousと呼ばれるように、無標の原形動詞の相を「事態が進行していく」「事態が継続する」という意味へ変換します。

 

 例えば、動詞goの主要な用法は、LDCEによると①to move away from the speaker、②to be in or pass into a paticular state、②to start to do something or to do somethingとなっています。このうち①にはleave、go and do sth、visit、moveなどの語義があります。

 このときleave、visitは瞬間的に達成されることです。これはWhat time did you leave the office?(LECD)のように言うことができることから分かります。瞬間だから具体的な時刻を示すことができるのです。瞬間的達成されることは継続することcontinuousとは馴染みません。進行相へ変換するとprogressive「達成する瞬間へ向けて事態が進行していく」という意味になります。

 

   They're leaving for Rome in the morning――LCDE

 

 このように瞬間的に達成されることを表す語の進行相は、しばしば予定を意味します。goの進行相である現在進行形[am/is/are+going]が予定を表すときに、すでに約束や段取りができているという意味で使われるのは、達成する瞬間へ向けて事態が動いていることが含意されるからだと考えられます。

 

 しかし、言葉は変化します。元々文字通りの意味が「前もって事態が進んでいる予定」であっても「出発する予定」が、近々あるいは直ぐという場合に使われるようになっても不思議ではありません。in the moringがnowに置き換われば、出発するまでに時間はないので「前もって」の意味がなくなります。

  I'm leaving now.(もう、私は行くよ)

  下のグラフは、これらが20世紀ごろに使用が広がり始め、世紀の終わり近くになって急速に発達してきた新興表現であることを示唆しています。

 I’m leaving forという表現が先行し、まもなくI'm leaving nowの使用頻度が上がり始めています。その頻度は辞書にあったThey’re leaving forよりも高いことが確かめられます。

 

 語義の1つにleaveがあった動詞goに、同じような変化が起こっても不思議ではないでしょう。実際に「その場で起きた事態に対応して決めたこと」を現在進行形を使って示す例を取り上げている文法書があります。

 ここには「時間と場所が決められたpersonal arrangemnts and fixed plansとしての予定」の他に、「移動を示す動詞の現在進行形がまさに始めようとする行為について述べる」用法を挙げています。

 

 ここに引用した用例を裏付けるために、ChatGPTにI'm just going、I'm takingを使った用例を作成させてみました。

 

1)a. A: I need to borrow a wrench. Do you think the neighbor has     one?    

   B: I'll check. I'm just going next door. Back in a minute.

   (A: レンチを借りたいんだけど。隣の人、持ってるかな?)

   (B: 見てくるよ。今隣に行ってくるから、1分で戻るね。)

                                                             

   b. A: I've got this persistent headache, and it won't go away.                 

       B: Don't ignore it. Get your coat on! I'm taking you down to the

           doctor!         

         (A: ずっと頭痛がするんだけど、治らないんだ。)                            

         (B: 放っておかないで。コートを着て、行くよ!医者のところに連れて行って

          やるから。)

 

 文脈から、これらの現在進行形を使ったこれからの行動が、「その場で起きた事態に対処して決めたこと」であると分かります。

 

  さらに「その場で決めたこれからの行動」を現在進行形で表す用例は、アニメなどでもふつうに出てきます。

Sister:“It feels like summer.”

Brother:“Hey let's play baseball”

Sister: “And soccer.”

Papa:“Or when was the last time we all went down to the swimming hole

    for a family swim.”

Brother: “Swimming? But it's the end of October, Papa.”

Sister:“Yes. It's almost winter.”

Mama: “Not according to good old Mr. Sun. Who's given us the gift of an

     unusually warm day”

Papa:“Well come on then. Get your swimsuits on.”

Brother:“We're going swimming”

  ――Berenstain Bears | Bears For All Seasons

 

Sis.:「夏のような感じがするわ。」

Bro.:「ねえ、野球しようよ。」

Sis.:「それとサッカーも。」

Papa:「あるいは、家族で泳ぎに行ったのはいつだったか、泳ぎの場に行こうじゃないか。」

Bro.:「泳ぎ?でも、10月の終わりだよ、パパ。」

Sis.:「そうよ。もうすぐ冬だもの。」

Mama:「でも、古き良き太陽さんによれば、普段にはない暖かい日をくれているんだから。」

Papa:「まあ、さあ。水着を着て。」

Bro.:「泳ぎに行くぞ!」

 

  Brotherは、当初は、野球をしようと思っていて、10月に泳ぎに行く?と疑問に思っています。Mama、Papaに言われて考えを変え、泳ぎに行くと決めます。文脈から、この場で決めたことだと分かります。

 よく知られたReady go!という表現があるように、goの語義③にはstartの意味もあります。また口語ではLet's get going(さあ、始めよう)という言い方もあります。goの現在進行形が予定について述べる場合には、起きた事態に対処してその場できめたことも表します。

 現在進行形が表す未来は、元々は客観的な事実として、個人的な約束があったり段どりが済んでいるような場合でした。しかし、使われるうちに意味が広くなり、客観的な事実だけではなく意思を表す用法が発達してきたのです。

 

 今回取り上げた現在進行形[am/is/are+doing]と未来進行形[will+be+doing]を使い分けるのは、現在進行形が主語の意思を表す用法が発達したという点が重要になります。

 アニメの用例で確認します。

  Simonが砂遊びをしていて、向こうで凧あげをしているところを見つけたときのやりとりです。

  Simon: “Hey, are you coming, Caspard? Let's go and see the kite. ”

  Gaspard:“No no, I want to finish my castle.”

  Simon: “Okay but I'm going.

                                                                 ――Simon | I Can DO IT

       「ねぇ、ガスパール、行ってみる?凧を見に行こうよ。」

       「いやいや、僕は自分の城を完成させたいんだ。」

       「わかった、でも僕は行くね。」

 

  凧あげをしているところを偶然見つけてどうするかその場で気決める場面です。一緒に砂遊びをしていたGasparlは I want to~(~したい)と意思を示しています。それに対してSimonはI’m going.(僕は行く)と言っています。これは、意志と解釈することが妥当でしょう。実際には表情などを含めてみると意思であることはより明確に分かります。

 

 現在進行形の他に学校文法があげる未来表現[will+do]、[be going to do]も同じ様な文脈で使われることがあります。アニメの用例で確認します。

 コンテストで子供たちがそれぞれ1つずつの雪像を造りました。ところが大雪が降ってきて作った雪像が埋もれてしまいます。雪が止んだ後に掘り起こしてみましたが、雪像は台無しになっていました。結局、初めに作ったものとは違う雪像を造ることにします。

   以下の用例は、そのときに子供たちが創りたいものを言いながら新たな雪像を造っていく場面です。

 

Cupcake“I’m gonna shape snow into a beautiful crown for a princess.”

Cookie “I’m making a snow rocket ship.”

 Boris   “I’ll make a snow clown.”

  ――Kid-E-Cats | Snow Sculptures(3:28~)

 Cupcake「私は雪でお姫様の美しい冠をつくるわ」

  Cookie「僕はロケット宇宙船をつくるんだ」

  Boris 「僕はクラウンをつくる」

 

 ここの場面では、3つの未来表現がそれぞれ使われています。現代英語では、その場で決めて今からすることを言うときには、いずれの表現も使います。

 一般に流布している使い分けに「willはその場で決めたことに使い、他は前もって決めたことに使う」というのがあります。この単純化規則は使用実態に合いません。現在進行形が予定に使うことが広がったのは20世紀の終わり近くになってからです。言語変化の途上にある表現を、刹那の使用実態をもとに単純化規則にすると容易に陳腐化します。変化の途上にある表現は視野を広げて、変化の仕方そのものを見ることが大切です。

 

 [be going to]はgoの現在進行形を含んだ表現です。元は文字通り「事態が進行して~へ向かう」という客観的な意味を持っていました。文法化が進行して「(起こった事態から)必然的に~になる」という主観的な判断を帯びます。また「(起こった事態に対応して)必ず~する」という意思を示すようになります。

 goの進行相は「行く」という内容が保持されています。それに対して、[be going to]はI'm gonnaと弱音化することが示しているように、元のgoという意味内容を失って漂白化が進んでいます。文法化が進み法助動詞に相当する語句として定型句化しているのです。これまでwillが示していた領域に浸潤しつつあります。

 

 法助動詞willは、元はhopeなどと同じような「意思を持っている」と具体的な意味内容を持った動詞でした。その後、屈折を失い無標となった動詞の原形に文法性を与える語へと文法化します。今日では法助動詞と呼ばれ[will+do(動詞の原形)]の型で使われます。

 元の動詞が示していた意味内容である「意思」から汎用される機能語として一般化します。「きっと(必ず)~する」という強い意思から「きっと(必ず)~になる」という予測や確信を示すようになり、さらには意味の漂白化が進み「(将来)~になる」という広く未来のことを表すようになったのです。

 

 生じた事態に咄嗟に反応してI'll get it.(私が対処する)というような表現を「その場の決心」と説明されることがあります。この-'llは、「強い意志」を明確に示すwillが弱音化した語です。だから「決心」というほどの意味はありません。「きっと~する」の意味が薄なり、きっぱり言い切るようなニュアンスを残した定型的な表現です。

 実は、[be going to]が「その場で起きた事態に使えない」とする根拠を次のように説明する辞書や文法書があります。

 I'll get it.は「その場で起きたことに対処して決めたことをしめす表現」でこのときwillを置き換えてI am going to get it.とは言わないから、[be going to]はその場で気決めたことには使えない。

 この論法は全く的外れです。I'll get it.定形化した表現です。定型化した表現の一部が変わらないのは当たり前のことです。

 例えば I can say that again!(その通り)は定型化した表現です。このときcanの代わりにmayを使うことはありません。定型句で置き換えができないから、mayは許可の意味を表さないと言えるでしょうか?文字通りの意味「それも一度行ってもいいよ」であればmayに替えることもできます。

 定型句で置き換えられないことことを根拠に一般的な用法の使用の可否を判断するのは適切ではありません。一般的な用法の違いは、一般的な用例を比べて判定すべきものなのです。

 

 では、以上の検討をもとに、未来進行形の表す未来の性質を読み解いていきましょう。

 論文の記述を引用します。

 

「未来進行形には2つの用法がある 。その一つは、基本的用法と呼ぶことができるもので、 (2a,b) のように、進行相が持つ「進行中(in progress) という意味に従って、未来の特定の時点において、何かが進行中であるということを表す (Leech2004: 66, Swan 2005: 195)。

 

2) a. This time next week they will be sailing across the North Sea.

 

    b. Don't phone me at 7 o'clock ― I'll be watching my favorite TV

        programme.                                             ――Leech (2004: 66)

                       

  未来進行形のもう一つの用法は、進行相を含まない用法で、 Leech(2004: 67) はこの用法を「当然の未来J(PUTURE-AS-A-MATTER-OF-COURESE) と名づけている。 (3a-c) を見てみよう。

 

3) a. I'll be writing to you soon.

 

    b. Will you be moving to your new house?

 

    c. Next week we'll be studying Byron's narrative poems.

                                                                         ―― Leech (2004: 67)

  Leech (2004: 67) によると、これらの文の未来進行形は、予測された出来事が関係者の意志や意図とは無関係に起こるだろうということを表している。

  また、 Declerck(1991: 116) もLeechと同じような意味規定をしており、未来進行形は、 (a) 進行相が合意されず、 (b)純粋な未来を表し、意図 (intention)、計画 (plan)、意志(volition) の含意はなく、 (c) 未来の状況が出来事の当然の成り行きや通常の経過として、すなわち出来事の通常のパターンの一部として起こることを表すと述べている。

   そして Leech(2004: 67) は、この未来進行形の意味は、助動詞 willの「予測の意味と、進行形の「進行中(in progress) の意味を組み合わせたものではなく、むしろ、 willの「予測」の意味と、未来時を表す現在進行形が持つ「取り決め(arrangement) の意味を組み合わせたものであると述べている。」

                            松井真人『英語における未来時を表す進行形の意味』2012

 

 いくつかの論文や文法書を見ると、似たように用法解説があります。結局はこの論文に出てくるLeechやDeclerckから引っ張ってきているので、1つの意見ということです。しかし、文法規則を掘り下げて取材すると、たいていは誰かが言い出したことが、伝言ゲームのように伝わっているということはよくあります。

 後者の用法が進行相を含むかどうかは、進行相の定義によります。それを「進行中in progressive」として狭くとらえればそこから外れた用法は進行相ではないということになります。元々現在進行形が未来のことを示すようになったのは、達成する瞬間に向けて事態が進行すること、つまりprogressiveの延長です。言語変化の中で見るろ、進行相ではなく未来だ区別することに対して意味はありません。

 もっとも相aspectという概念自体は英語本来のものではなく、スラブ系の言語から借用したものです。だから相にこだわる必要もないかもしれません。

  

  ポイントは、機能語は内容語の意味を限定するということと言語が変化することです。それぞれの未来表現を、無標のdoの意味を機能語will、be、-ingで意味を限定詞した型ととらえます。元々の意味では[will+do]と進行形[am/is/are+doing]はそれぞれの表す意味は限定されていました。しかし文法化が進み意味が一般化して用法が広がります。

 willは「きっと(必ず)~する」(強い意思)から「きっと(必ず)~になる」(予測/確信)へ、さらに漂白化して「(将来)~になる」という未来標識へと用法を広げます。一方で未来表現とされる現在進行形は「現実的に事態が~へ向かって進行している」から「(将来)~へ向かう」(予定)へ、さらには「(気持ちが)~へ向かう」(意思)へと用法が広がります。[be going to do]は進行形のgoの意味が漂泊化しwillと同様に未来標識と認識され、意志を表す用法へと広がります。

 これら表現では意味が広がり、もともとの機能語による制限が効かなくなっているのです。どれも意思を示すという点では使い分けることができません。そこで、より多くの機能語を使った[will+be+-ing]という型で、意志を含まないという意味に限定したととらえられます。機能語は意味を制限するので、より多くを組み合わせることで意味を区別するということです。

 

 [will+be+-ing]の型は「事態が進むと(当然)そういう結果になる(なっている)」という客観性を帯びた意味であると解せます。使い分けのポイントは進行相かどうかという分類よりも、主観的な「意志」の意味を制限して無意思であることを示す点だと思います。

 

 用例で確認します。映画『シャレード』からの引用です。

 

4) We'll be breaking the law and since we didn't steal it.…

                          ――Charade1963

    (僕たちが法を犯すことになるよ。盗んだわけではないが…)

 

 この場面は、事件に巻き込まれてお金を手にすることについて、今の状況だとそういうことになってしまうと言っています。意図して法を犯すわけではなく、成り行きでそうなることを含意する表現として[will+be+doing]を選択していると解せます。

 

  このように[will+進行相]の組み合わせが、willの「意図」の意味を制限するという見方の根拠は他にもあります。 [will+完了相]の組み合わせでも同様に無意志を示す用法に制限が見られます。論文にある用例を引用します。

 

5) a. If there is a srtrike the day after tomorrow, we'll have worked in

         vain tomorrow.

          (あさってストがあると、あす働いても無駄になる)

 

    b. If there is a srtrike tomorrow, we'll have worked in vain today.

         (あすストがあると、きょう働いたことが無駄になる)

 

  c. If there is a srtrike tomorrow, we'll have worked in vain yesterday.

        (あすストがあると、きのう働いたことが無駄になる)

                                                   久保田正人『英語の時制をめぐって』1996

 

 これらの用例にある[will+have+worked]の型は、受験参考書では未来完了と呼ばれることがあります。実際には未来という時future timeを示すわけではありません。[will+完了相]は、意図という意味を制限され、「(きっと)完了することになる」という意味に限定されます。

 

 [法助動詞+進行相]、[法助動詞+完了相]の組み合わせでは意図、意向といった意味が制限され、客観性を帯びた「可能性」もしくは「推量的な意味」の方に振れると考えられます。

 [Will you be doing~?]が[Are you doing~?]よりも丁寧な響きになると言われます。これは[will+be+doing]には主語の意思を含意しないとということから説明できます。前者は「~するの?」と相手の意思を確かめるような表現にもとれますが、後者は「~することになっているの?」という客観的な聞き方になります。

 

 論文にある記述を引用します。

 

6) c. Will you put on another play soon?

    d. Will you be putting on another play soon?

                                                                           ――Leech (2004: 67)

  (6d) の未来進行形には意図の含みはなく、「そのうち新しい劇が出ますかjと情報を求めているだけなので、 (6c)りも気配りのきいた丁寧な質問になる (Declerck1991: 166,柏野1999:98, Leech 2004: 68)。

                               松井真人『英語における未来時を表す進行形の意味』2012

 

(6c)Will you put~?は形式的には疑問文ですが、実際には話し手が依頼するときによく使う形式の文です。

 例えば、以下のような用例です。

7) a. Will you be my partner, Grace?

    b. Do you want to be my partner, Lily?

――Timthy Goes to School | The School Play

 

 この用例は、一人の男子生徒がそれぞれ別の女生徒に「僕とパートナーになろうよ」と声をかけて回る場面です。この2例は形式は疑問文ですが、話し手の意図が表に現れた勧誘の意味として多用されます。

  映画『アナと雪と女王』で、アナがDo you wanna build a snowman?というセリフが、「雪だるまつくろう」と訳されるのも実際には勧誘だからです。

  (6c)Will you put~?の表現だと「次回作を創ってもらえませんか?」という話し手の意図のようにもとれるのです。これに対して (6d)Will you be putting~?では話し手の「意図」を制限し、単に次回作の予定を尋ねることを意味します。丁寧になるというより、「意図」を制限した客観性を帯びた表現であるということが明確に示すということでしょう。

 

  [will be doing]は単なる予定だけではなく、主語の意図に関係ないことから、「(当然)~になる」という意味に解せます。論文で取り上げられている他の用例を紹介します。

 

「ベストセラーの『ハリー・ポッター』の原文にも未来進行形がよく用いられている。以下に原文をその訳を紹介する。

 

8) a. We'll be putting these tents up by hand!

        (テントは手作りでいくぞ)

 

    b. You'll be supporting Irelannd, of course?

       (あなたはもちろん、アイルランドを応援するんでしょう?)

 

    c. They be talking about this one for years.

       (この試合は、これから何年も語り草だろうな)

 

    d. They be driving, of course?

        (当然、車で来るんだろうな?)

                                                          石本祐子『未来表現のニュアンス』

 

 ここに取り上げられた用例のうち、客観性を帯びたような例は(8c)でしょうか。他の(8b)、(8d)はof courseという語句を添えているので「当然」という意味が表へ出ています。「当然~っていうことになるよね」というのは、表現としては意図に関係なくそうなるということを意味します。形式上は客観性を帯びていますが、実質的には「意図」を示すことにもなりえます。

   (8a)ではof courseという表現こそ使っていませんが、「当然~ということになる」という意図を制限した客観性を帯びた表現が、再び主観化へ向かっていくように感じます。

 

  最後にもう1つの論文を紹介しておきます。

 

未来進行形のwill be doing、be going to be doingというのもあって、未来のある時に「している最中」と、未来の状況を描くのに用います。

 

9) I will most likely be watching TV when you call.

   「電話をかけてくれる時はおそらくぼくはテレビを見ている最中だろう」

 

 未来の状況をこれからの「予定」として述べると、その予定が相手の行動に何らかの影響を与え、「するから」「するので」のような意味になります。

 

10) a. We'll be eating at 6:00.

     「6時に食べるので」(そちらの行動を合わせるように)

 

      b. I won't be coming back for a while.

       「ぼくはしばらく帰ってこないので」

 

      c. I'll be studying for the exam all weekend, so I can’t go skiing with

         you guys.

       「週末ずっと試験の勉強をやっているんで、君らとスキーに行けないんだよ」

 

       d. Tom is going to be coming late. But we can begin the meeting

          without him.

        「トムは遅れてくるから。だけど、彼なしで会議を始めても良いだろう」

                                      テルキ デイブ『過去、今、未来の話を英語で』2016

 

 これらの用例でも、主語意思とは関係なく、「~ということになってる」という表現として解せると思います。

 

 willやbe going toも長いスパンで見ると意味が変化しています。言語は変化していくものなのです。今は [will be doing]は意図を制限した表現ですが、今後主観化が進行する可能性があるということです。言葉は新陳代謝を繰り返して行くものなのでしょう。

 進行相、完了相も屈折を失い無標になった述語動詞の意味を限定する形式として発達したものです。あまり表情のない単純相を様々な面aspectに変えて表現を豊かにする営為と言えるかもしれません。文法事項の中でも相の研究は歴史が浅く、用法も変化しています。今後もその変化に注目していきたいと思います。