2208 :MEMSマイクの安全・確実な手半田法 By Shin | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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ズバ抜けた高音質の新しいMEMSマイク、しかし・・・

 

リフロー専用パーツである「MEMSマイク」は手半田失敗率100%。

当初手半田はことごとく失敗し、残骸の数々を経験してきました。

なぜだ?

コロナ前、メーカーからも公式に「それは不可能です」、「手半田は考えていません」という当然のダメ押し回答を得て、筆者がますますヤル気になったのがこの難題。

 

購入個数も3個・5個なので祈るような作業、すぐ10個、20個へと数を増やした。低温半田はむしろ意味がなく、0.2秒の瞬間半田付ワザで生きるものが出てきた。

それでも失敗は続いて・・・・・

 
 「不可能」を「可能」に変えるのがこのサイトの役割のはず、何としてもそれを可能にする道を夢中で探っているとき、あるヒントをきっかけに手半田法の完成に至った、それは一瞬の出来事でした。
 
人は「神が降臨した」とかいうが、「詰まったら発想を変えろ」というセオリー、道は必ずあることを学んだ。
 
筆者の目的は、優秀なMEMSマイクを使ったマイクの自作を誰でもがECMのような簡便さで実現できることだけにあります。
 
 
 
 
 そして1年後この記事、ProbeⅡ 発表と同時に公開したYOUTUBE音声は驚愕をもって迎えられ、これを境に皆無だったMEMSマイク使用の自作例はこのProbeⅡが刺激したか堰を切ったように顕在化した半面、半田付の難しさとの闘いは皆様おなじように苦しまれているのを危惧してきました。
 
 しかし多少の失敗の果てに手にいれたこの目の覚めるような異次元の音質、MEMSマイクの自作をおこなった者にしかわからない幸福感・充実感は格別です。
がんばった自分をほめてあげましょう、Shinはそんな皆様の勇気と夢の実現を今回さらに応援します。
 
クローバー あれから1年、2年とその先を追求してきましたが、これまでの蓄積を元にノウハウをアップデートします。
 
 私がリフローにはいっさい目もくれず「手半田」にこだわるのは理由があります。
量産するわけでもない自作マイクは「誰もが簡単に」「平等に」MEMSマイクを使った従来にない、次元を超えた高品位なマイクの自作をECM並みに楽しめるようにしたい・・・
それには「手半田法の確立」それに尽きることを学んできました。 
 
 
(ECMとはここが決定的に違うMEMSマイク)
!「ECM」の半田付けも熱には注意して短時間で済ませている、とおっしゃるでしょう。しかしMEMSマイクはその程度の気遣いなどまったく通用しないデリケートで量産工程一義的なデバイスであることを理解する必要があります。
 
 
(新しいMEMSマイクの特徴)
現状ほとんどのMEMSマイクの実態はチャージポンプ回路を備えた「DCバイアス型」コンデンサマイクです。
 
 2022年3月現在 国内ではいっさい販売されていません。
(廃棄品や10年前の残骸なら店頭にありますがアレは別物!)。
 
耳の穴にも入る超小型でありながら圧倒的ワイドレンジ・高S/Nの品種
 が僅かに存在する、これが狙い目である。
 
◎ 優れた物のSN比はECMより10dB程度上回っている、
 (採用できる最低値は「70dB」、それ未満では意味がない)
  AOP (THD10% 最大許容音圧)とSN比はトレードオフ関係にある。
 
電圧に注意するだけでECMとの互換性がある。
 
感度のバラツキがきわめて少なくペア化しやすい。
 
デジタルMEMSマイクなら自由自在じゃないのか?、いいえアナログ領域の未完成なマイクは「モノ」になりません。
ヨーロッパ老舗マイクメーカーなどが手をつけ、いまはすっかり影をひそめた「デジタル・コンデンサマイク」がその答えです。
 
 
 
この魅力あるマイクロホンデバイスは
生かすも殺すも半田付け次第だ。
 
 
 
 
【リフローパーツに手半田を許容させるために】
 
最初「SOLDERING PROFILE」あり
これはメーカー指定条件です、ソルダーリングのすべてはこれに尽きます
 
         (ICS-40730 SOLDERING PROFILE)
 
 
手半田用にはこれをアレンジして「PREHEAT」部のみ生かしました。
(Shinの手半田プレヒートプロファイル)
!後半はリフロー半田付工程ですので、前半のPREHEAT(プレヒート)部分だけを使う。
 
(プレヒート中のICS-40730)
写真では105~107℃ですが、幅がありますので100℃未満でもOKです。
キッチン用サーモメーターを使用
 
 
3個1000円のデジタル温度計を使用
 
MEMSマイクのプレヒート及び半田付はカッター台などに薄い両面テープ貼り付けが適切です、MEMSマイクはきわめて小さい為、「治具」などは考えすぎかつ不適切です。
 
温度管理はクッキング用温度計や3個1000円の温度計、どちらでもちゃんと計れます。
 
 慣れればこれを手で囲いながら手の感触だけで温度はわかります。したがって私は普段、温度計は使いません。
 
ヘアドライヤーも使えないことはありませんが熱風範囲が広く、風で飛ぶため対象物を狭く熱せられるヒートガンが必要、これは工業用の正式なものではなく写真のような簡易的なもので十分です。
 
 
 
(手半田法 by Shin)ICS-40730の例ですがすべての品種に適用できます
①手半田用プレヒートは「手半田プレヒートプロファイル 」使用。
100℃を基準に±10℃程度、おおむね1分程度が良いでしょう。
(慣れれば温度を測る必要はなくなります)
 
②コテは20~30Wのもの、温度調整式ならなお良い。
15Wペンタイプのコテなど小容量コテは長時間コテ先を当てることになり、この作業には使えません。
設定温度は370℃くらいでコテ先温度は250℃になり、この程度が失敗ありません。
 
③一般半田の使用は適しません、クリーム半田で0.2秒メド、0.5秒以内に済ます。直後に指をあてる又は吹くなど「ポイント的」な電極部の熱をすぐ冷却する。
 
素早い半田付が命になります、それは半田の濡れ性に大きく依拠します、その意味でここはリフロー同様に「クリーム半田」を用います。
 
クリーム半田とは:クリーム状の練りモノで、はんだごてで熱すると金属(半田)化するものです。
 
「60%半田」「鉛フリー半田」「低温半田」「共晶半田」など「一般半田」は事故の元、筆者の実験では失敗率が高くやめました。
まずは「クリーム半田」を求めてください。(アマゾンのものでOKです)
  
AMAZONのクリーム半田の例 (これを使用しています)
 
こちらも試しましたが粘度が低く使いづらいです。
 
 
!China製独特のわかりづらい表記しかありませんので、他の材料と間違えやすい。(筆者と同じものなら間違いはありません)
 
読者の中では「半田付用ペースト」「小手先クリーナー」「注射フラックス」などまったく違うものを購入してしまう間違いが多く発生しています。(日本製を探す、これまた変なものを買ってしまうようです)
 
疑問に思ったら同じものを使ってください、考えれば考えるほど失敗します。
 
 
(線材について)
撚り線AWG-28かAWG-32が適切、これ未満のAWG-36は芯線を剥き出すこともできず一般には扱えないでしょう。またAWG-28以上の太さは不向きかつ熱的に危険です。
極細エナメル撚り線も下写真の通りGND線には向いています。
 いずれにしても「あり合わせの線材は絶対に使うな」という原則です。
 
 
 
 
(手半田・線出しの実例)
カッター台の両面テープの上、クリーム半田による半田付・線出しを終えたMEMSマイク(INVENSENSE ICS-40730)
線材はAWG-28および0.1mm2本撚り エナメル線を用いています。
(ProbeⅡではさらに細いAWG-32を使います)
 
このあとの音出しテストは4本とも正常、出力レベルも±1dB以内、
どれとでもペアになれる感度の均一性。
 
 
半田付は1発で決めます、上写真4本の半田付はこれでOKです。
決定的にNGな半田付でないかぎり「綺麗に直そう」というのがMEMSマイクでは一番ダメな行為、ゴチャゴチャいじったモノは高確率で熱破壊を起こしています。熱ストレス=温度×時間で決まります。
 
特にGNDのリング状パターンへの半田付が難所かもしれません。
さりとてケースへの半田付は絶対禁止です。(やってみればわかります)
 
とにかく小さいので「ヘッドルーペ」など使いたくなりますが、そこから見える手先やコテ先の動きと実際との不自然な遠近感でかえって失敗の元。
Shinの場合はあくまで「肉眼」で、そして作業結果をルーペで確認するという方法をとっています。
 
以上、筆者がこれまでにたどりついたMEMSマイクの安全・確実な手半田法です。 (なお手指が震えるかたはこの作業は不可能ですのであきらめてください)
 
 

 
 
(番外ノウハウ)
 「熱破壊」したはずのMEMSマイクが壊れ方しだいで何割かが蘇生・救済できることもわかってきています、「メカトロデバイスの妙」ということでしょうか。
まあ救済されたそれを採用するかどうかは別ですが・・・
 
線出ししたが音が出ない、熱破壊したMEMSマイクの蘇生・救済

① 完全に生きているAMP部に接続し、音を出しながらMEMSマイクにヒートガンで熱風を送っていく 右矢印 バリバリした雑音とヒートガンからの風音が聴こえてくる 右矢印 風音がだんだん大きくなる 右矢印バリバリ音が消えて風音だけになる右矢印ヒートガンをOFFにすると周囲音が通常レベルで鮮明に聴こえ、正常に動作する。

 

②この手順で蘇生・救済したMEMSマイクはそれを採用するかしないかはあなたしだいです。

 

 

本記事の無断ネット盗用は犯罪です。

 

以上

 

 

 

虹 おしらせ

fetⅡ、fetⅡi、fet3、LZⅡb  など、読者のみなさまからのご注文により人気機種の製作領布を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作します)

MEMSマイク使用、話題のProbeⅡおよびFetⅡmemsも同様にリリースしています。

 

モノ作り日本もっと気出せ 

 

【おことわり】

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