兵庫県尼崎市には、近世城郭「尼崎城」があります。

この城は、2018年11月に復興天守として再建されました。

 

これまでずっと「行きたい」と思っていた城ですが、

関西移住をきっかけにやっと行くことができました。

 

城下町含めて見て歩いたので、その内容を書いていきたいと思います。

 

今回は、歩く前に尼崎城の歴史を簡単に整理していきます。

 

  近世尼崎城の概要

築城以前

尼崎が歴史に登場し始めるのは、平安時代末の事です。

 

治承年間の南都焼き討ちにより、東大寺が消失しましたが、

この時修築用の木材集積地として、尼崎の地が選ばれました。

 

その後も摂津の中でも重要な港として、中世は大覚寺という寺院を中心に発展していきます。

 

寺町に移転した、現在の大覚寺

 

 

中世尼崎城

そんな尼崎に「城」の存在がみられるのは、応仁の乱の頃です。

尼崎は大内政弘による焼き討ちを受け、この際に城郭の記録が出てきます。

 

その後も、両細川の乱で、細川高国方の拠点として整備され、

信長の時代には、荒木村重反乱の際に、有岡城から尼崎城に退去したと記載があります。

 

その後豊臣政権では、建部氏が尼崎郡代として城に入りました。

 

慶長十九年(1614)の大坂の陣の頃には、「尼崎天守これなく、櫓ばかり、四方の堀有之、五十間四方」

があったと記録されています。

中世尼崎城(大物城)の推定値

現在は阪神電車の車庫となっている

 

 

近世尼崎城の成立

 

元和三年(1617)に戸田氏鉄が近江膳所から移封してきたことが、近世尼崎城の成立の契機となりました。

移封前から築城準備は進められていたようで、移封から3か月足らずで築城が始められています。

 

この時、現在の多くの寺社が寺町に移転されるなど、城下町の形成が行われました。

 

戸田氏は5万石でしたが、城の規模はかなり大きく、

藩域を見ても東にかなり寄っているなど、大阪を守る壁としての役割が担われていたと思われます。

尼崎城の関係図

尼崎城は、大阪防衛のために築かれた諸城の中でも大阪に最も近い

(現代でもがんばれば歩けるくらい近いです)

 

 

 

歴代城主

尼崎城はその後順調に築城され、

元和五年(1619)には、2代将軍徳川秀忠が「構え」の視察に来たとの記録があります。

 

また、徳川家光も訪問した可能性があるとのことです。

 

その後尼崎城には、寛永十二年(1635)に戸田氏から青山氏が入り、正徳元年(1711)には、桜井松平氏が入り、明治維新まで続きました。

歴代城主一覧(『尼崎城研究資料集成』を参考)

 

廃城

その後、尼崎城は明治六年(1873)の「廃城令」で廃城となりました。

 

すでに明治期には一部の堀が埋め立てられ、

石垣は尼崎港の護岸として使われたとのことです。

 

さらに、本丸中心部は明治末期から大正期にかけて学校用地として利用され、

本丸堀も埋め立てられてしまうこととなりました。

 

尼崎城は、戦前の段階ですでに、その姿のほとんどを失っていたのです。

 

明城小学校に建てられた、昭和3年製の城址碑

この時点で本丸は学校用地として使用されていました。

 

破壊されつくした尼崎城

さらに、戦後になると開発の波はさらに激しくなります。

 

昭和38年(1963)の国道43号の敷設では、城下の中央部に道路が貫通し、

城下町が分断される状況となってしまいました。

 

また、尼崎城の東側の外郭線となっていた大物川も、公害を理由に昭和40年(1965)

には埋め立てられてしまいました。

(埋め立てられた大物川、今は緑地となっている)

 

そして復活

しかし、平成27年(2015)に旧ミドリ電化創業者、安保詮氏により、

尼崎城の建築費用12億円が寄付されました。

 

これにより、平成30年(2018)に、尼崎城が再建されました。

 

天守はコンクリート造かつ、当時と立地や形態も異なる部分がありますが、それでも尼崎のシンボルとして天守が復活したのは、喜ばしいことです。

 

 

尼崎城に訪れた際に、城下の様子も見てきたので、

次回からはその紹介をしていきます。

 

まずは、大物側から城下町を歩いていく予定です。

 

 

参考文献

  1. 『尼崎市史』第2巻,尼崎市,1968. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3020489 
  2. 『尼崎市史』第3巻,尼崎市,1970. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3020507 
  3. 兵庫県歴史学会 編『兵庫県の歴史散歩』上,山川出版社,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9573064
  4. 「大物城」「尼崎城」平井聖 [ほか]編修『日本城郭大系』第12巻,新人物往来社,1981.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12208284
  5. 『尼崎城研究資料集成』尼崎市教育委員会,2020.1.
  6. 「尼崎城整備に係る整備計画」尼崎市 

    https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/006/916/ama-shirotenjikeikaku.pdf

  7. 「尼崎城公式ホームページ」

     

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