Mさん宛ての郵便物は銀行からで、
中には1枚だけの案内書が入っていた。
『身分証明書のご提出について〜』
と、書き出されていた。


嫌な予感しかしないし、
呆れて怒る気にもならない。


その日の夜、Mさんがリビングで
転がって寝ついた時にスマホを確認した。


もう、私は手助けしない。
勝手にしろ!





スマホを見ながら、
初めて借金を知った時の事を思い出した。

不倫中の彼女とは別れて、
家族でやり直すという条件で、
私はMさんの借金を肩代わりした。
返済のATMに吸い込まれる何枚もの1万円札を
ただ、ただ、ジッと見ていた。

でも、実際には、
不倫は続行し、彼女と別れてなどおらず、
水面下の恋をしていたのだ。

そして何より、完済後にまた借金。
『舐められたもんだな』と、
絶望感でいっぱいだった。

そんな悲しい過去を思い出した。


Mさんのスマホを見ていると、

金融機関のアプリがあった。
お小遣い程度の額の貸付が2、3回あった。
日付は最近。
ん?夜勤明けだな、どれも…


・・・・・、もしかして…
まだ女と続いているのか?
ふと、頭の中にそんな思いもよぎった。


もういい。
不謹慎かもしれないけど、思った。

『早く死なないかな』