最近のMさんは少し変だ。


そう思ったのは4月に入ってからだが、
もしかしたら、もっと前から、
私が気が付かないだけで、
夫婦という仮面を被って、
本当はずっと何か秘めていたのだろうか。


春だから?
ボーっとしてるだけ?



Mさんの事は本当に分からない。


この間もドライブ中に、仕事の話になり、
「これまでたくさんの資格を取ったけど、
 ○○の資格は取っておいて良かったよ!」
と、Mさんが言ってきた。


不運というのか…
Mさんは就職するけど、会社が倒産!
という残念な仕事運の人で、
失業中期間が度々やってきていた。

その期間はいつも資格を取得する時間となり
私が家計を支えることになっていた。

「そうね、失業手当が貰って、のんびりして
 資格も取れて良かったよね。
 誰のおかげなんでしょうかねー」
なんて、私が嫌味で言っても
「失業中でもお金貰えてたし…
 何でAちゃんのおかげになるの?」
と、暖簾に腕押し状態。


腹立つ。


「一人で生きて、一人で生活するなら
 どんな生き方しても良いよ。
 多分、私がいなかったら貴方死んでるよ。
 色んな意味で。
 失業中に遊んで、気まぐれに資格取って、
 その人生に付き合ってる私の有り難み、
 全く感じませんか?」
脅すわけじゃないけど、私はMさんに
ちょっとだけ事実として話してみた。
「…そうだね。ありがとう。」
Mさんは静かに言った。

本当にそう思っているのかどうか…


すると、Mさんの方から質問してきた。
「失敗したって思ってる?俺が相手で…」


ハイ?ナンデスカ?


この人、幸せだな。
馬鹿な質問だとは思わないのだろうか。
その質問に答えるのもバカらしいが、
私は理由を添えて答えた。

「失敗か成功か、で言えば、失敗でしょう。
 貴方の不運だけなら、100歩譲って
 失敗とは言わずにいるけれど、
 あの事があったら、失敗でしょうね。」
と、私が言うとMさんが不思議そうに言った。
「失敗?」


本当に大丈夫か?コイツ。


「分からない?不倫だよ。
 それがあったから『結婚して良かった』
 なんて言えない。」
Mさんは無言だった。
私は続けて話した。
「忘れないで。
 シタ側の幸せな不倫の裏には
 サレタ側の悲しみがあるんだから。
 痛みも、苦しみも、悲しみも、切なさも、
 消える事はないから。」

少し沈黙があり、Mさんが呟いた。
「ぼくたちの失敗って事?」
「僕なのか、私なのか、私達なのか…
 分からないわ。」
私は表情を変えないで答えた。


でも何で今更こんな愚問を?


それ以上はこの話には触れず、
好きな音楽を聞いて流れる景色を見ていた。

そういえば、ワンオク…
ここで流したらどうなるんだろう(笑)