恋愛ホンネ通信Vol.11:春の夜はかき混ぜる、想いも記憶も、未来も光も | 【しまうまの庭】@占い館バランガン

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バランガン占い師「いち木しま馬」のブログです。
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春の兆しと吸いこんだのは

 

過去と未来とが頭の中を行ったり来たりする。

もう何年経っただろう。

春の匂いのする夜の街に、あなたの思い出を嗅いだ気がした。


たくさん歩いてきたなぁ、、、、
 

あなたのいない世界を、あなたへの想いを心の片隅に置きながら。




あなたはとても無邪気に笑う人だった。

会いたいとせがんでは邪魔をしてしまったこと。

あなたからはとてもいい香りがした、香水なんてつけずとも。

何度も離れると言ってはあなたを不安にさせたこと。

あなたの隣にいると落ち着いた、わけもなく、無条件に、どこまでも深く。

用意した婚姻届が、引きだしの中で眠ったままになったこと。




ふとした静けさの隙間に、
あなたが、あなたの記憶が、あなたと描いていた未来が、心に漂ってくる。

春の陽炎のように、夏の夕暮れのように、

秋晴れの朝のように、冬の星空のように。



もう、どこからが実際にあったことで、
どこからが二人でしたかったことだったか、わからなくなってきた。

月日は巡る、ぐるぐると輪を描いて。
同じような春の訪れ、同じような春の匂い。
それを迎える僕の心にだけ、
ひとりあなたのいない毎日が折り重なって、
あなたとの思い出が色あせていく、鈍い光の中で。


あなたはこころがとてもきれいだったね。
見つめていると泣きだしたくなるくらいに。


あなたと、まったく別々の地で生まれて、
まったく別々の世界を見て生きてきて、
それでも同じ時代にこの国で生まれあって、
そうして二人の人生がスッと重なったこと。
たとえそれが、道往きすぎるまでの、わずかな時間だったとしても。

あなたと袖触れ合えたことを、なにかに感謝したい思いで。

その”なにか”が何なのかを知るまでは、

きっと死んじゃいけないんだろう。

手のひらのシワを眺めた。
とくん、と胸が苦しくなった。

この、手のひらを流れる血潮にも、

あの時一緒に笑い合ったあなたが流れている。

まぶたがぼんやりと熱く、重たくなった。

「ありがとう」

もうそれしか言えない。

届かない声を、宙に向けて放り投げる。
せめてもの、あなたが今日も、安らかに眠れますようにと。


目を閉じて深呼吸をした。
限りなく長く、ほんの一瞬だけ。

 

目を開けばそこには、

いつもと変わらない殺風景なダイニングがあった。