遂に橋下大阪市長が野田政権に真っ向からダメ出しをした。「絶対持たない」という真意を考えれば消費税増税どころではないのだ。

[5日 産経]橋下市長「政権持たない」 大飯原発再稼働要請方針を批判
大阪市の橋下徹市長は5日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働に向け野田佳彦首相が同県に協力要請する方針を固めたことに関し「安全性をしっかりチェックした上で動かすという当たり前のプロセスをすっ飛ばした判断だ。政権は持たない」と批判した。

同時に、安全基準をつくる過程が最も重要だとの考えを強調。「(原子力安全)保安院が、ぱっぱと安全基準をつくって、それでオーケーと判断するなら(政府に)もう統治能力はない」と苦言を呈した。市役所で記者団に述べた。

野田政権は、下記の橋本市長の声が国民の意思であると鑑みて再稼動を見直さなければ早々に失脚することになることを十分肝に銘じるべきだ。

「昨日の今日で暫定的な安全基準なんて作れるわけがない。本当に危険。これでは政権は持たない、絶対もたない。誰が考えてもわかる」

「(原子力安全)保安院が、ぱっぱと2日前に暫定的な安全基準をつくって、それでオーケーと判断するなら(政府に)もう統治能力はない」

「保安院という無くなる組織に安全基準を作らせ、誰がその安全チェックをしたかわからないまま動かすなんてプロセスが絶対間違っている」

「安全性をしっかりチェックした上で動かすという当たり前のプロセスをすっ飛ばした判断だ。原子力ムラから金を受け取っていないメンバーを集めて、号令をかけるのが政治の役割。こんな形で再稼働を求めたら本当に危ない」

福島原発事故を起こし、あれほどの被害を出し、まだ原発自体も収束していない状態で、安全基準に慎重になるのはある意味当然である。

それなのに政府は、数日間という突貫工事で事故対応に問題があった原子力安全・保安院に暫定的な安全基準を設けさせようとしている。

しかも暫定的な安全基準の作成は、福井県や滋賀県、京都府の知事が再稼働の条件の一つに求めたことで、要求しなければ作成もしなかったのだ。

如何に野田政権が原発問題でその場限りの場当たり的な対応を取っているのかが垣間見える。そして暫定的な安全基準はあってないのと同じだ。

そして原発事故の元凶である原子力安全・保安院が作成する。内容は(1)外部電源(2)建屋内の電気設備(3)原子炉冷却機能(4)水素爆発対策(5)事故対応の5分野で30項目が想定され代表的な項目は下記となる。

所内の電気設備や建屋の浸水対策の強化
非常用電源喪失を想定した電源車の配備
原子炉や使用済み核燃料プールへの代替注水機能の強化
防潮堤設置や指揮所となる免震施設の整備
原発に外部電源を引き込むルートの複数化
変電所設備の耐震性を向上
冷却装置の耐浸水性を強化と分散配置
常用電源設備や冷却装置の分散設置
冷却機能喪失に備えた消防ポンプ車などの配備
「ベント」を停電時に可能にする
外部からの送電網の多重化
放射性物質を濾過(ろか)フィルター付きベント設備
事故時の通信機能確保

この中で設備が完成するまで1年以上要する項目もある。しかし、おそらく今回は早期に実施できるもののみとなりそうな気配である。

そして時間の要するものは中長期的に取り組むものと位置づけとして順次暫定基準に継ぎ足される形で正規の安全基準に持っていくようだ。

まずはこの暫定的な安全基準の判断を野田総理、枝野経済産業大臣、細野原発事故担当大臣、藤村官房長官という原子力の素人で下すようだ。

野田政権は現段階でも津波による全電源喪失、炉心溶融は防げるとの認識だが、このような項目を協議して判断するだけで問題がないのだろうか。

福島原発事故は人災と言われただけに原発事故対応の指揮命令系統や緊急マニュアル、想定シナリオなどは完成しているのだろうか。

さらに福島原発の建設からかなりの年数が経過している旧式の原発自体の欠陥は本当になかったことが証明されているのだろうか。

また、安全確保も重要だが、少なくとも原発事故で想定される最悪の被害状況は範囲に含まれる地域の首長には通知すべきだろう。

あの惨事を考えればこれくらいは必要不可欠な事項だ。

そして国民が脱原発と判断しているのであれば、橋下大阪市長が下記のように述べた計画停電已む無しとなるのが常識的な発想だろう。

「計画停電もあり得ると決めれば電力供給体制を変えられる第1歩になる」

「原発が全部止まっている状況でも、明日あさって関西府県民が死ぬ状況になるわけじゃない。ピーク時にちょっと我慢して乗り越えられる」

「産業(部門)は外して電力使用制限令を出すことは可能か、基礎自治体の長として最後は住民にお願いする前提で物事を進める」

しかし、野田政権の対応を具に見ていくと何が何でも原発再稼動ありきの考え方で国民の意見など聞く耳を持たないのである。

すでに週内にも大飯原発が暫定的な安全基準をクリアと判断し、枝野経済産業大臣が8日にも福井県に説明に訪れる予定となっている。

しかも藤村官房長官は、定期検査により停止中の原発の再稼働に関して地元の同意は必ずしも前提条件にならないと下記の認識を示した。

「定期検査で検査中の発電所の再稼働について、法律などで同意が義務づけられているわけではない」

これまで民主党の他の閣僚と同じような言葉尻を捉えての発言に怒り心頭である。国民の生命を守る責任をどのように考えているのだろうか。

そして2日の予算委員会で「現時点では反対だ」と威勢よく啖呵を切った枝野経済産業大臣も急転原発再稼動に前向きとなった。

「昨日昼の段階では記録を精査していなかったので賛成ではなかった。政府がどう判断するか政府の一員として合議のうえで決める」

野田政権はどうして拙速に原発再稼動に突き進むのか。

表向きは夏場の電力需給の逼迫を見据え、経済停滞や市民生活への影響を回避するためとしているが、様々な理由が考えられよう。

まず、夏場のピーク時の電力需要において計画停電なし又は数日間の計画停電で済んだ場合は、間違いなく原発自体が必要なくなるからだ。

次に、関西電力株主の大阪市など地方自治体による関電株主提案で原発全廃や発送電分離が出される前に再稼動で既成事実化したいからだ。

参考記事:関西電力で筆頭株主の大阪市が6月に関電の株主総会で原発全廃や発送電分離などを株主提案の骨子案に

また、再生可能エネルギー買い取り価格決定が迫っており全原発停止の状況では再生可能エネルギー普及を図るため低価格での決定を許すからだ。

参考記事:調達価格等算定委員会(再生可能エネルギー算定委)が買い取り価格を5月決定、何%の普及を目指すのか

全ては既存の原子力発電を全て再稼動させ、再生可能エネルギーの普及促進を阻止し、事故以前の供給状態に戻すことが至上命題なのだ。

やはり野田政権のエネルギー戦略は原子力エネルギーに主軸があり、完全に原子力ムラに完全に取り込まれているとしか考えられない。

消費税増税しかり、原子力再稼動しかり、国民の過半数を占める多数派の意見を尊重しない頑ななその姿勢に洗脳の恐ろしさを感じる。

橋下大阪市長には是非とも関西電力の株主提案で原発全廃や発送電分離を行っていただきたいし、今後も脱原発への発信力を期待したい。

そして再び国民による国へのアクションも必要とされよう。

参考記事:日本や世界で「脱原発」を訴えるデモや集会が歴史的な動員数に、なぜ既存メディアは大きく報じないのか

参考記事:原発住民投票の署名が大阪市に続き東京都でも法定数超え、全国に波及で脱原発と電力自由化となるか

脱原発の流れは確実に野田政権を崩壊に向かわせている。