東大阪市文化創造館の説明会に参加しました。 | 日報・シマコ

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演劇のある豊かな暮らし

 

2019年9月に、東大阪市では「東大阪市文化創造館」という新しい公共施設が誕生します。

東大阪の演劇工場、プラズマみかんも早速昨日、利用者説明会に参加して来ました。

 

【東大阪市文化創造館とは】

 

数年前に閉館した東大阪市市民会館(永和)に代わる東大阪の新しい文化施設です。 

八戸ノ里駅前に、1500席の大ホール、300席の小ホール、多目的ホールを備え、音楽練習室や演劇・ダンスの練習に利用できる創造支援室、キッズルームやカフェが併設されます。

 

外観や施設のパンフレットを見ると、吹田市山田にある「夢かがやき未来館」、旭区の芸術創造館、神戸アートヴィレッジセンターに近い感じでしょうか。しかし大小多目的の3つのホールを備るという点では前記の施設より格段に規模が大きいです。例えるのなら小ぶりのロームシアター京都と言ったところでしょうか。大阪市内にこのような公共ホールが皆無の中、すぐお隣の東大阪市に、しかも駅前に建設されるのはとても刺激的です。

 

東大阪に住んでいて良かったと初めて思いました(笑)

 

 

 

【利用者説明会】

私が参加した利用者説明会は、主な施設の紹介とその利用料金、具体的な施設の予約方法などが中心でした。ちなみに指定管理者はPFI東大阪文化創造館株式会社です。

 

PFIとは⇒ http://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000015432.html

 

利用者説明会は3回開催されましたが私が参加した会は参加者40~50名程度、ミドル世代が中心で、旧会館から利用されていた方が多数を占めていました。既にホールの利用を検討されている方が多く、質問は予約や抽選会、設備面の話題が多かったです。練習場所や大会での利用を見越して積極的に質問している吹奏楽部の高校生もいました。

 

私たちは利用を検討しての参加ではありませんでしたが、私たちを除く演劇関係者の参加は皆無に近く、温かく歓迎して頂きました。(ありがとうございます。)

 

しかし大阪市に劇場がない、公共ホールが無いと嘆く演劇人は多いのに、こういう場に興味を持って参加する劇団や制作者がいないのはこれいかに?と。我々のアンテナの問題なのか、東大阪市の広報の仕方にも問題があるのか、少し勿体ない気がしました。

 

【演劇での利用について】

◎大ホール・小ホール
大ホール、小ホール共に、音楽だけでなく演劇にもしっかり対応出来る設備を目指しているとのことです。大ホールではミュージカルや商業演劇、小ホールでは全国クラスで人気のある小劇場劇団なら問題無く上演出来そうです。
ただ、これらの規模のホールを私たちのような市民レベルの小劇場系劇団が普通に借りて使いこなすのは全く現実的でないので、創造館が積極的に集客できる作品を招致して稼働させていかないと、豊かな芸術作品を提供出来る空間としてはほど遠いと思います。
 
ちなみに芸術監督を置く予定は無いとのことでしたので、運営側の教養とセンスが問われそうです。
学生たちへの芸術文化鑑賞会など、ここで積極的にやって欲しい。
 
◎多目的ホール
唯一私たちのような劇団で唯一利用の可能性があるとすれば、こちらの多目的ホールでしょうか。
しかし小ホールといい、多目的ホールといい、壁の色が明るいグレーです。窓もあります。大黒幕でブラック空間、完全暗転の演出は可能だそうです。壁の色に拘らない演目だと良いと思います。

個人的には3つもホールを有するならひとつくらいブラックボックスがあって欲しいというのが本音です。音楽ライブや展示など様々な用途に対応出来るようにとのことですが、何でも対応出来そうな設計は、時に何をするにも中途半端で使いづらい設計にもなり得るということでもあります。完成してみないと分からないですが…。
 
ちなみに高さ7m、昇降バトン無し、キャットウォーク有りです。平台や箱馬、機材などの備品は検討中とのことですが、本格的な演劇公演で利用するとなると、幕吊りと高所作業にそこそこ人を割く必要が出てきます。増員、人件費が課題になりそう。。。くそう、せめてブラックボックスだったら…。
 
◎ホール利用料金について
興行の場合、チケット料金によって利用料金が変わります。機材費、楽屋使用料も別途。
まだ暫定とのことですが、現段階で発表されている利用料金は、私の感覚で、ホールの利用料としては妥当なところだと思います。
ですがあくまでも「ホールの設備として」であって、「利用者として」ではないので決して安くはありません。
(東大阪に在住・在勤・在学が無ければ加算料金もあります。)
 
利用者の立場に沿った価格では旭区の芸術創造館の方がよっぽ現実的だと思います。(芸術創造館はホールでは無く大練習室という位置付けですが)
 
ちなみに旗揚げ12年目のプラズマみかんの財政状況では「あー、ムリムリ!」という感じです。
やはり特別招致を受けるか、せめて助成金があれば…と一瞬考えましたが、東大阪市の施設なので大阪市の助成金は使えませんね。
あ、これ結構ネックかも…!!
 
◎その他の設備
創造支援室という、演劇やダンスに特化した練習場が3部屋あります。
22時まで使えます。区分利用の部屋と時間利用可能。
その他アート系や会議利用系の部屋もありますので、上手く使えば練習拠点としては良いと思います。
キッズルームや授乳室もあるので、ここからママさん劇団が育つ可能性もありそうです。
それはとても嬉しい。
 
こちらも、暫定料金はリージョンセンターや東成区民センターと同じくらいでしょうか。
設備が充実している分仕方ないかなとも思うのですが、芸術創造館と比べるとややお高めと感じます。
でも駅近だし、八戸ノ里は鶴橋から15分くらい。アクセスは良い方なので、そこも含めて検討すると良いかもしれません。
 

【基本方針や理念、ビジョンの話】

今回私が説明会に参加した理由は演劇の施設のことはもちろんですが、1番の目的はここにありました。
 
今回の説明会に参加して、担当の方とも直接お話もさせて頂いて、この施設に対する熱意は相当なものだと感じました。演劇やダンスにも高い関心を持たれており、設備面や環境面では相当自信を持って挑まれている頼もしさがありました。
 
しかし、だからこそ、「利用者のためだけの」施設で留まってはいけないよと。
「市民のための」施設になっていかないと。
そのための議論の余地はまだまだ残されていると思いました。
 
過去にロームシアター京都の説明会や、愛媛のシアターねこで開催された公共ホールの意見交換会に参加する機会がありましたが、そこではまず最初に民間劇場と公共ホールの代表者と芸術活動を行う市民団体や制作者が集い、文化芸術環境における現状を確認し、民間と公共が手を取り合いながら、劇場がどのような役割を担っていくべきか?という熱い議論がありました。公と制作者と市民がまず、私たちが文化芸術を通じてなりたいまちや人のビジョンを描き、そこからハコの中のコンテンツを考えていく―というやり方です。
 
最近劇団が会員になった浄土宗應典院の寺町倶楽部でも、「劇読み!!!」をやっている空堀でも、このような機会は意識的に設けられており、まちと場所、人について熱く語り合う場が増えましたし、そういうことに興味関心を持たれている方との出会いが増えました。
 
これらは決して大盛り上がりを見せる訳ではありませんし、完全なかたちであるとも思いませんが、市民の声を聞く、寛容に受け入れていく、という姿勢は持ち続ける必要があると思います。
 
東大阪がどのようなまち・人になっていくことを願って、そのためにこの施設がどんな役割を担うのか。
どうやってその成果を追いかけ、評価していくのか。
 
施設が賑わっている、ということよりももっと広義な意味でのビジョンを。
これが、施設の運営やスタッフの姿勢として求められると思います。
少なくとも私は求めます。
 
私は、学校以外の、世代を超えた友達が作れる場であって欲しい。
学校に行けない子どもたちに、仕事に行くことがどうしても難しい人たちに、
家に帰るのが苦しい人たちに、「ここに居ていいよ」と言える場所であって欲しい。
介護や子育ての悩みをシェアできる場所になって欲しい。
介護や子育てがあっても好きな事を諦めないでいられる場であって欲しい。
豊かな体験によって、気持ちや行動を健康に繋げられる場であって欲しい。
 
そしてそれらが、文化芸術活動によって提供出来るともっと嬉しいです。
 
【東大阪市文化創造館 WEBサイト】
 
せっかくだから、オリザさんの本をあげておこう。