ネッシーが映ってる写真を見たことはあるだろうか?ネス湖の湖面に首の長い恐竜のようなものが浮かんでいる超有名なアレである。

私が小さい頃から何度も雑誌などで取り上げられたあの写真。20世紀が終わるころショッキングなニュースが世界中を駆け巡った。あの写真はおもちゃの潜水艦を使って撮影したトリック写真だったと告白した男性が現れたのだった。
 

私が子どもの頃、世界は未知の驚異にあふれていた。

世界七不思議のひとつピラミッド、ツタンカーメンの呪い、カッパの手のミイラ、どこかにあるロストワールド、アダムスキーの空飛ぶ円盤搭乗記、地球空洞説、ノストラダムスの大予言、そしてネス湖のネッシー。

 

今も昔も子どもは恐竜が大好き。当時私はこの広大な地球のどこかに人が踏み入ってない場所があって、そこにはとっくの昔に絶滅したとされる恐竜が生きている、そうであってほしいと大部分は自分の願望だが信じていた。

その根拠として信じていたのがあのネッシーの写真だった。自分が想像していた通りの理想的な構図の写真、雑誌に掲載された恐竜の想像図の中の首長竜、まさにそのものだった。

スコットランドのネス湖では大昔から目撃の伝承があるというし、ネス湖のネッシーは必ずいると信じていた。日本でも話題になった池田湖のイッシーなどはガセでも、ネッシーだけは本物だと信じていたのだ。


その確信があの告白によって、心の中で目の前のレンガ壁が文字通り音を立てて崩れ落ちた。ガラガラと崩れる音さえ聞こえた気がした。子どもの時から半信半疑ではあったが、まだ信じる余地があると思っていた様々な未知の驚異は私の中から消え去った。

この事件こそがわずかに残った子供時代の終焉。
この時を境に逃れることのできない大人時代を生きることとなった。

 

私はこの世の中でこういった決定的証拠写真を捏造しようと考える人間がいるとは想像もしなかった。だがその考えを改めなければならないと突き付けられたのが、このネッシーショックだったのだ。

大昔から、本人はそれほど悪意を抱くこともなく他人を驚かそう、からかってやろうと考える人間は常にいたという事実を確信させられた。

 

あらためて思い出してみると同時代に存在した写真…庭で少女を撮ったもので、その周りにまるでティンカーベルのような絵に描いたような妖精が飛び回っている、そんな写真があった。その当時でもこれは合成だろうと思っていたが、まさかネッシーまでも…とは。

人は自分が見たいものを見せられたときには信じてしまうという事か。その後も現在まで雪男ビッグフットの動画や宇宙人の解剖動画、ミステリーサークルなどとても魅力的な画像が次々と登場した。

昔は文章と違って写真だけは真実を記すと考えていたが、もはや写真や動画などCGを用いればどうにでもなる時代、大変な労力を伴なうが、それでもなお嬉々として証拠の捏造をしようとする人は確実にいる。こんな時代はどう生きていくべきなのか?哀しいかな地球上の未知なるロマンは次々に絶滅していくばかりだ。