合同会社では、
出資した人が「社員」となり、「持分」を保有します。
※ここでの「社員」は従業員のことではありません。
「社員」が複数いる場合には、
その中で業務執行する人を選ぶことができて、
選ばられた人は「業務執行社員」といいます。
さらに、「業務執行社員」が複数いる場合には、
その中から、代表権を有する「代表社員」を選定することができます。
とくに業務執行社員や代表社員を決めない場合には、
社員全員が、業務執行社員でもあり代表権を有することになります。
※この辺りが株式会社とは大きく違う点かもしれません。
株式会社に出資した人は「株主」となり、「株式」を保有します。
株主は、業務執行する人(取締役)を選任します。
この取締役は、株主である必要はありません。
(もちろん、株主自身を選ぶこともできます)
株主が選んだ取締役の中から、
代表権を有する代表取締役を選定します。
(細かい論点は省略しますが)
さて、
合同会社の話に戻ります。
AとBが、それぞれ出資して社員となり、
AもBも業務執行社員となっていて、
いまは、Aが代表社員となっているケースを考えてみます。
このとき、諸事情により、Bに代表社員を交代する場合、
(Aは、業務執行社員としては残留します)
どのような手続が必要となるでしょうか?
尚、この会社の定款には、業務執行社員が2人以上いる場合、
業務執行社員の互選によって代表社員を選定する、という規定があります。
正解は・・・
業務執行社員AとBの話し合いによって、次の内容を決定します。
①Bを代表社員とすること
②Aは代表社員の地位を辞任すること
登記手続の添付書類は次の通りです。
・業務執行社員の決定書(同意書)
・定款
・Bの就任承諾書
※定款は互選規定があることを証明する為に添付します。
※Aの辞任届は不要ですが、
Aが辞任することについての同意書は必要です。
申請内容(登記すべき事項)は次の通りです。
「社員に関する事項」
「資格」代表社員
「住所」東京都大田区〇〇〇丁目〇〇番〇〇号
「氏名」A
「原因年月日」令和3年〇月〇日辞任
「社員に関する事項」
「資格」代表社員
「住所」東京都品川区〇〇〇丁目〇〇番〇〇号
「氏名」B
「原因年月日」令和3年〇月〇日就任
ちなみに、代表社員は、
業務執行社員の互選ではなく、定款に直接的に定めることもできます。
(例:「当会社の代表社員はAとする。」)
このとき、代表社員をBに変更する場合は、
定款変更にかかる「総社員の同意書」が必要となります。
(この場合、別途、Bの就任承諾書は不要です)
この場合も、実質的にAは辞任するものとみなせるので、
登記原因は「辞任」でよいとのことです。
また、もともとは、Aひとりの合同会社で、
Aが当然に代表社員になっていた状況下で、
新たにBが社員として加入してBを代表社員にする場合は、
Aの退任の登記原因は、「退任」とすることが考えられるとのことです。
(これはAが代表権を喪失すると考えられるから、とのこと)
なかなか合同会社は奥が深いですね。
※参考書籍①
「商業登記実務から見た合同会社の運営と理論」
著/立花宏氏 監修/金子登志雄氏
※参考書籍②
「商業登記ハンドブック」
著/松井信憲氏
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司法書士 黒川雅揮
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