西五反田の老舗旅館「海喜館」を舞台にした、
地面師事件の発生から数年が経ちまして、
先日、巨額の金を騙しとられた「積水ハウス」から、
当該事件に関する詳細な調査報告書が公開されました。
※報告書へのリンクはコチラ(←積水ハウスHPより)
第三者委員会によって、
社内調査とは別に調査が行われたそうで、
事件の起きた経緯、分析、今後の対応に至るまで、
約130ページの超大作となっております。
とくに、不動産業界関係の方は、
一度ご覧いただくことをお勧めします。
司法書士目線で気になった事を以下に挙げます。
①法務局がなりすましだと確信したポイントは、
コピー添付された「保険証」が偽造だったこと。
⇒本事件では、登記済権利証を添付できない事情が発生し、
本人確認情報を用いて登記申請されたそうです。
その本人確認情報の一部に、
偽造された保険証のコピーが添付されていました。
真の所有者側から不正登記防止申出がなされていたこともあり、
綿密な調査が実施され、結果、偽造であることが判明したらしいです。
(もしかしたら普通の審査だったらスルーされていたかも)
結果としては、パスポートも偽造だったそうですが、
こちらもかなり精巧なものだったようですね。
⇒普段から、業務上、本人確認として身分証を提示してもらっていますが、
やはり、それだけをもって本人だとは確信してしまうのは、
とても危険だということですね。
話の内容や態度、書く文字、他に持っている資料等、
あらゆる情報を総合的に判断する必要があることを再認識しました。
(権利証代わりとなる本人確認情報を作成する際はとくに)
②違和感は確かにあったはずなのに、
売買決済自体を中止することができなかったこと。
⇒後から一連の報告書をみると違和感だらけな状況なので、
なんでこんなことになったの?と思う方もいるかもしれません。
ただ、いざ真っ只中にいた当事者の各目線からすると、
一つ一つの違和感は、「おかしいと確信できる」程の違和感ではない、
というのが地面師が入り込むポイントだったんだと思いました。
「自分の勘違いで取引を中止してしまった」なんてことになったら、
いち会社員にとったら死活問題ですから、(もちろん司法書士も同様)
やはり、確証できるレベルの材料がない限り、
現実に中断させるのは困難だったのだろうとは思います。
③あえて超大企業が狙われた、ということ。
⇒「手付で〇〇億円を現金で払ってくれる」
「〇億を早めに欲しいなぁ、と言われてポンと払える」
と、まぁこんな企業は限られていますよね。
あえて多数の人間が関わることも承知のうえで、
一人一人の”責任感“を薄める狙いもあったのではないでしょうか。
(上記②で記載した通り)
また、このレベルの大企業ともなると、日常的に動く金額もケタ違いなので、
「〇〇億円」の取引だと聞いても
きっと札束(もはや札の山ですが)のイメージは湧かないでしょう。
どうしても営業成績や目標としての、
単なる「数字」としてしか認識できないのだろうと思います。
(むしろ「数字」だと思わないと、仕事にならないですよね。)
”「大企業の案件だから大丈夫」とは限らない”
これは司法書士にとっても改めて意識しないといけないポイントです。
私なりの総括として…
イレギュラーな対応を求められる案件には、
必ず何か落とし穴があります。
何の問題も無い案件の場合には、
やはり普通の流れで打ち合わせが進むものなのです。
以前から何度も書いている気がしますが、
やっぱり「違和感」はとても大事で、決して無下にしてはいけません。
どれだけ小さな違和感だったとしても、
解決しないまま進むのは、本当に危険ですね。。
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司法書士 黒川雅揮
司法書士黒川雅揮事務所HP⇒http://k-legal.jp/