【マリンの受験戦記6~特別支援学級移籍3~】
伝家の宝刀(笑)、それは…
“下っ端でだめならトップに掛け合え”の術☆
である笑
これは昔、教育事務所に勤めていた私の母の教え。
曰く。
学校はとにかく融通のきかない社会だけれども、校長先生にはある程度の権限があるので、そこを落とせばこっちのもの、と。
ということで翌日、早速学校にお電話。
「校長先生か教頭先生をお願いします」
この一言で大抵、受話口の先生の空気が一瞬凍り付く。
タテ社会なんやろな。
今回も例にもれず、息をのむ気配と共に、
「しょ、少々お待ちください」
と、やや焦った感じのお返事があり、程なく、教頭先生が電話に出られた。
「先日のお話では、持込教材を使うかどうか、約束はしていただけないとのことだったのですが、理由をお聞かせいただけますか?」
お聞かせも何も、理由は明白だ。
一次決定権は教科担任にあるわけで、先日の先生は明言を避けただけのことだ。
分かってる。
だけど、このまま放っておけば、全部有耶無耶のまま、適当なプリントとかを、他の子どもと同じように与えられて過ごすのは目に見えている。
とにかく現場は人手不足なのだ。
新一年生が何人、支援級に入るか知らないけど、うっかり大人数だった日には、マリンみたいな境界知能の子のサポートよりも、そっちを優先せざるを得ないのは、想像に難くない。
イチイチ一人一人のレベルに合わせて、なんて、実際にはどうせやってられないのだ。
ーー理由をお聞かせいただけますか?
というママに対して、電話口の教頭先生は、実に長々と言い訳をしはじめた。
「いえあの、お母さん、新学期に入ってくる一年生が、何人ぐらい、どんな子が入ってくるかもまだ分からない状態でして、
つまり何と言いますか、どの程度教員の人数に余裕があるかも分からないと言いますか…
要は、お一人お一人のご要望に沿っている余裕が無い状態でありまして…」
………びっくりするほど予想まんまやないかーい!!
打合せの時の先生は、
「その子のレベルに合わせて…」
とかのたまってやがってたけど、蓋を開けてみたら実際はこんなもんだよ。
ホンマにもぉ!
一通りの言い訳を聞き終えた後、ママは大きく息を吸って、きっぱりとこう言った。
「先生方の手が足らない状況は重々承知しております」
きっぱりと、というよりは多分、やや威圧的だったことは自覚している笑
「あー……はい、ですから、その、」
案の定、向こうの口調が引け腰になっている。
お気の毒に。
……ごめんね笑
でも、ここで手心加えたりしたら、何のために電話したか分かんないから!!
ホントごめんね!!
でも、
ここで容赦するとか
今は 無理なんで♡
「ですから!!
娘が一人で自学自習できる教材を用意したんです。
あの教材なら、娘は学校の教室で、一人で取り組めます。
先生は、娘がぼーっと空想タイムに入っていないかだけ、見ていただければ大丈夫です。
何をどれだけやるのか、全部私が事前に準備いたします。
それでもダメな理由は何ですかって聞いてるんです!!」
受話器の向こう側で、息をのむ気配がした。
「支援級って何を支援するためのクラスなんですか?
学校は、勉強をするための場所じゃないんですか?
一斉授業は理解できなくて、支援級でも自分のための勉強をさせてもらえないってそれ、
あの子が教育を受ける権利を、学校は何一つ保証してくれないってことですよね。
あの子はもうすでに8年間、学校の授業時間をドブに捨ててきました。
それは、本人が通常級を希望したんですから、誰を責めるつもりもありません。
ですが、そこでは自分は学べないと気づいて、あの子自ら支援級を希望したんです。
この一年だけは、本人のための勉強をさせてあげたいんです。
通常級で8年間頑張り通した子が、自ら支援級を希望する覚悟の程を、どうか馬鹿にしないであげてほしいんです。
~中略~
マリンの一番の問題点は、国語力の無さです。
特に、抽象語の理解がとびぬけて苦手です。
失礼ながら、小学校から中学校のどこの時点に遡ったとしても、通常の、文科省が定めたカリキュラムに則った学習方法では、あの子の苦手を克服するにはあまりにも非効率です。
はっきり言ってしまえば、教科書の国語をいくら学んだところで、あの子の問題点はクリアされないんです。
国語力の無さは、すべての教科に影響します。
数学で手一杯で、理社まで手が回らなかったのもありますが、理科も社会も、教科書の文章が読めてないから、全滅だったわけで、もっと簡単な文章や図解で学べば、もう少しはできたはずです。
理社に手が回らなかった要因の一つは、学校の授業時間を全部ドブに捨ててきて、帰宅後のわずかな時間だけが、本当の意味での学習時間だったからです。
国語力は、今あげておかないと、高校に入ってからも、社会に出てからも、ずっとずっと苦労します。
書類の全くない仕事なんてありませんから。
私が先日お持ちした教材は、その問題点にダイレクトにアプローチできるものです。
他の教科は、無理にとは申しません。
ですが、国語だけは、どうか、前向きにご検討いただけないでしょうか」
どうか、とか言っているけど、ほとんど恫喝である笑
しかも途中途中、諸々、明らかに盛りすぎであるwww
いやだってね、学校って本当に硬直した社会だから、これぐらい言わないと何一つ動きゃしないんだよね。
翌日、教頭先生から電話があって、マリンは全教科(※5科のみ)、ママ厳選の市販教材で新学期をスタートさせていただけることになった。
「お母さまのおっしゃっていたことが、筋が通っていると、私(教頭先生)も思いましたので…」
と。
言ってみるもんである。
ただ……ああ言った手前、ママはマリンの勉強のカリキュラムを一手に担うことになったわけだけれども。
ははは。
まぁ、それもよし。
ママは、いわゆる中の上でゆるっと学生時代をやりすごし、
受験も、A判定の学校しか受けなかったという、こと勉強に関してはナカナカに苦労知らずでやってきた身。
我が子の時ぐらい、少しぐらい苦労したって、ちょうどでしょうよ。
そんなこんなで迎えた最終学年の新学期。
続きは…つづく!