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「誰にも迷惑をかけたくない」──韓国・釜山の公益弁護士が伝える、“最期の自己決定”という優しさ
【はじめに】
韓国・釜山でたった一人の「専業公益弁護士」として活動するイ・ジュオン弁護士。
彼の取り組みが、いま多くの韓国市民の心を動かしています。
その活動の中心にあるのは、「遺言書の書き方を教える」こと。
一見、専門的で堅い印象があるかもしれません。
しかし、そこには“孤立死”や“無縁死”といった社会課題への鋭いまなざしと、
「自分の人生の終わり方を自分で選べるように」という、静かで力強い優しさが込められています。
今回はこのニュースを通じて、日本の地域社会や高齢者支援にもつながる学びや気づきを、
大阪で司法書士として高齢者の終活支援を行う私の視点で、丁寧に掘り下げてみたいと思います。
【釜山で広がる“最期の教育”──遺言書がつなぐ想い】
韓国・釜山市では、単身高齢者の「無縁死」が急増しています。
その背景には、急激な少子高齢化、自発的非婚、家族関係の希薄化といった、複合的な社会変化があります。
そんな中で、イ・ジュオン弁護士は2022年から地域に根ざし、
自分らしい最期を迎えるための手段として「遺言書作成教育」を市民に提供しています。
受講者の中心は高齢者ですが、20〜30代の若者も「将来を見据えて」と参加しているとのこと。
彼はこう語ります。
「誰でも、無縁死の当事者になり得る時代になった。遺言書は“人生の仕上げ”を自分で選ぶための道具です」
特に、身寄りのない方や関係が途絶えてしまった方にとって、
遺言書は葬儀の希望や財産の使い道を明確にできる“最後の意思表示”になります。
そうでなければ、亡くなったあとは自治体による簡素な「公営葬儀」によって処理されてしまいます。
【“自分の死に方”を考える若者たち】
とても印象的だったのは、遺言作成の教育を受けた若者のエピソードです。
保育施設で共に育った友人に、自分の葬儀を託したいと相談に来た自立青年。
あるいは、自分の財産が国庫に帰属するのではなく、自分が応援したい団体に寄付されるようにしたいと、遺言作成の方法を尋ねる若者。
彼らは、たとえ家族がいなくても、自分の想いや信念を形にしたいと願っているのです。
そして、イ弁護士はそうした想いを、法的なかたちにする手伝いをしています。
【「公営葬儀」をより良くする市民の力】
釜山では、公営葬儀の質的改善にも市民が関わっています。
弁護士の教育を受けた市民たちは「公営葬儀弔問団」として、地域で行われる無縁死者の葬儀に立ち会い、
葬儀が適切に行われているか、故人の尊厳が守られているかを見守ります。
たとえば、祭祀膳の質が劣っていないか、空き家での待機時間が短すぎないか。
実際、彼らの指摘を受けて、釜山市では公営葬儀の空き家の運営時間を4時間から6〜8時間に延長した事例もあります。
遺言書を書くことをきっかけに、「他人の死」にも関心を持ち、地域で支え合う仕組みが生まれているのです。
この姿は、まさに“地域包括ケア”を実践する形の一つとも言えるでしょう。
【日本でも広がる“無縁死”の現実】
この話は、決して韓国だけの特殊な問題ではありません。
日本でも、高齢者の一人暮らしは年々増加しており、
「誰にも看取られずに亡くなる」ケースは都市部を中心に深刻化しています。
厚生労働省の統計によれば、年々増える無縁仏の数。
そして、「遺体の引き取りを拒否される」例も、決して珍しくはなくなっています。
こうした現実に向き合い、「自分の死後のことをきちんと決めておきたい」と考える方も増えています。
【司法書士としてできるサポート】
私たち司法書士も、法的な支援者として「終活」に寄り添う役割を果たすことができます。
特に、遺言書の作成支援は、法律的な正確さと、個別事情への柔軟な対応の両方が求められます。
遺言執行者として、亡くなった方の意思を実現するお手伝いも可能です。
加えて、死後事務委任契約や見守り契約といった、死後の手続きを信頼できる第三者に託す仕組みも、日本では活用が広がっています。
大切なのは、「元気なうちに備える」ということ。
そうすれば、「家族がいないから不安」「誰かに迷惑をかけるかも」といった不安から解放され、
“今”を安心して生きることができます。
【まとめ：最期まで、自分らしく生きるために】
イ弁護士の取り組みは、法律家としての使命を超えて、「人としての尊厳を守る」活動だと感じます。
そしてその根底にあるのは、「一人ひとりの人生には意味がある」という信念です。
「誰にも迷惑をかけたくない」
「自分の想いをきちんと残したい」
「亡くなったあとも、他人とつながっていたい」
そうした声に寄り添うことが、これからの法律実務者には求められているのかもしれません。
大阪でも、高齢者や独居の方、相続に不安を抱えるご家族からのご相談が増えています。
私たちの事務所では、遺言や死後事務契約の作成支援を通じて、
“安心して今を生きるための終活”を、親身にサポートしています。
「終活」と聞くと、少し寂しい印象を持つかもしれません。
でもそれは、本当は「よりよく生きる」ための前向きな準備です。
もし、気になることや不安があれば、どうか一人で抱えずに、お気軽にご相談ください。
人生の最終章も、自分らしく、安心して迎えられるように──
地域の法律家として、これからも皆さまの人生に寄り添っていきたいと思います。
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司法書士しげもり法務事務所
繁森 一徳（しげもり かずのり）
相続・高齢者支援・終活のご相談、承ります
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