そして恋が降ってきた【後編】
<第二十八章>オンナの友情
翔が、マスターの家に二人を送り届けると
トモコはすぐに、あずさに電話をした。
2コールで彼女が出る。
「トモママ、どうだった?」
“分かってるくせに”
そ知らぬふりで聞いてくる
あずさがおかしくて、
トモコは笑った。
「ヒロさんから、三人で暮らそうって。
婚姻届にサインしてもらったよ。」
あずさは無言で、泣いているようだった。
思えばトモコも、彼女が手術に成功したとき、
そして女性の戸籍になり、彼氏と結婚したときに、
同じように泣いたものだった。
「トモママには、報われない恋はして欲しくなかったけど
中野のパパは、ママの心の支えだったから。
私何も言えなくて。」
そう言いながら、彼女は泣きじゃくった。
「ヒロさんが現れて、本当に良かった。
本当に、本当に良かった。」
「色々心配かけたね、あずさ。ありがとうね。」
トモコは彼女をねぎらって、電話を切った。
博之が、遠慮がちに彼女の肩を抱く。
空には三日月が浮かんでいた。
そっと彼は、トモコの目に滲んだ涙を拭うと、
そのまま口付ける。
三日月だけが、そんな二人を見ていた。