そして恋が降ってきた【後編】

<第二十七章>宴の後

 

 

「すっかりご馳走になってしまって。」

カナが帰り際に、ユキエに言った。

大仕事のあとで、一同食が進まない中

カナが一番食べていた。

 

「その細い身体に良く入るよな。」

翔が感心して言う。

「だって、美味しかったんだもん。

私、ユキエさんに料理習おうかしら。」

「そんなに喜んでくださって、嬉しい。」

ユキエが頬を染めている。

 

本当に人間なのかと疑いたくなるくらいの

儚い美人だ。

翔は、トオルを見た。

 

自分も人のことは言えないが、

お世辞にもイケメンとは言えない彼が

トモコといい、ユキエといい

美女に恵まれるのは、

その頭の良さと

情熱的な部分に惹かれるのだろうか。

 

なんとなく、翔は彼にシンパシーを感じていた。


「いつでもまた、いらしてくださいね。」

「ユキエさん、この子社交辞令通じないから

本当に通ってくるよ。」

翔が言うと、カナがむくれた。


「そんなこと!せいぜい週に一回程度よ。」

「・・・・充分じゃないか?」


彼が呆れて言うと、カナが赤くなった。

「意地悪っ!」

 

そんな二人を、博之とトモコが

温かい目で見守っている。

 

結局、約束の日時までは健太はトオルの家で

世話になることになったので

二人は一旦帰ることにした。

 

 

 

「・・・・あのね、お父さんがね

恋人同士は“一晩二人っきりで過ごさないといけない”

んだって、言ってたんだ。」

と、翔に健太が耳打ちする。

 

「だから、邪魔しないように

こっちにもう少し居るんだよ。」

 

「それは良い心がけだ。」

翔が返した。

「きっと大丈夫さ。

お地蔵さんにもお願いしたしな。」

 

健太が真っ赤になる。

「・・・それは言わないでよ。」

 

「良いじゃないか、全て上手く行ったんだから。」

「それもそっか。ありがとう、翔さん。」

にっこりと笑う。

 

一気に父親が二人に増えた健太は、

とても嬉しそうだった。

 

そんな彼の姿を見て、

翔の心も満たされていた。

 

 

 

 

 

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