いばら姫LOVE AGAIN

<第二十章>逡巡

 

 

ユウは、雅に自分の事を

思い出して欲しい気持ちと

そうして欲しくない気持ちが半々だった。

 

本当の事を言えば、そうして欲しくないわけではなく

思い出されることが、怖かった。

 

思い出された上で彼女から『要らない』と言われるくらいなら

自分から潔く身を引こうと思っていた。

 

だが、携帯を握り締めてうずくまり、

立ち上がれない雅を見ていたら

放ってはおけない。

 

 

優しくしたい気持ちと、

思い出してもらえず悔しい気持ちが半々で

意地悪を言ってしまったのを後悔していたが、

思い出してもらえないのは、

自分をもう求めていないからじゃないか?と彼は感じていた。

 

“彼女が夫の存在を思い出せないまま

他の男を受け入れるのは、フェアじゃない。“

 

・・・・だが、それを言うなら自分も正体を告げずに

彼女に近づいた段階で、フェアではなかった。

 

自分から離婚を切り出した割りに

彼は彼女に気持ちが残りすぎていた。

 

 

彼はぎゅっと抱いた時、

彼女が抵抗しなかった事に、気付いた。

 

会社の若い男が、同じ事をした時には、

ナースコールを使っていたのは、知っている。

 

自分は彼女にとって“特別な存在”なんだ。

 

と、そう簡単に信じることはできなかったが、

心のどこかで『そうだったらいいな』と、彼は思っていた。

 

アンフェアな気持ちを抱えたまま

彼女を抱きしめたユウは、

雅の大きな瞳に映る

頼りない自分を見て、目を伏せそうになった。

 

 

だが、見慣れた顔を見ていると

彼女を愛しいと思う気持ちのほうが強くなる。

 

“もう、嫌われてもいい。”

 

彼はそういう覚悟で彼女を抱きしめ、

そして強引にキスをした。

 

 

 

 

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