いばら姫LOVE AGAIN 

<第十八章>告解

 

 

ようやく顔色が戻った雅に、彼が話しかけてきた。

「何か、あったの?」

 

一瞬、間が空く。

夫の存在をユウに話してもいいのか?

ためらわれる。

 

が、彼女が既婚である事は

指輪を見れば、分かる事だ。

隠しても仕方ないと思った。

 

「私、旦那さんがいるの。

でも彼のことがどうしても思い出せなくて。」

ポツリと告白した。

 

「そうなんだ。」

彼の受け答えがいつもと変わらないので、

少し落ち着いてきた。

 

「さっき実家の母に電話をしたら、

昨日旦那さんが家に来たらしくて」

 

そこまで言ったら、ショックがぶり返してきた。

 

“責任とって、離婚したほうがいいんじゃ。”

 

その言葉が頭を回ると、

雅の目から、涙があふれる。

 

ユウがハンカチをそっと差し出す。

「泣いても、いいよ。」

 

雅は彼にしがみついて号泣した。

ぎゅっと抱かれて、彼の体温を感じると落ち着く。

ユウの手が、雅の背中をさすっていた。

 

「旦那さんに、何かあったの?」

優しい声だった。

 

雅は彼になら打ち明けてもいいのでは?と思い

弟から聞いた話と、

先ほど母親から聞いた話をした。

 

「あなたは、旦那さんをどう思ってる?」

一気に話した後に、ユウに聞かれた。

真剣な目だった。

 

「思い出せないのは、旦那さんを憎んでいるからじゃないの?」

 

キツイ言い方ではない。

むしろ優しい言い方だったが

胸に刺さった。

 

「そんな事は、無いと思う。」

雅はゆっくりと言った。

 

「離婚って聞いたら、ショックで苦しいくらいだし。

ただ、どうしても彼を思い出そうとすると頭が痛くなるの。」

 

「じゃあ、なんで俺にはそんなに無防備なの?」

 

「え?」

確かに、そう言われればそうだった。

 

彼のことは、何も知らないのに

気付けば心を許している。

内藤くんには言わないような話でも、話していた。

 

「旦那さんがいても、他の男に目移りしてるんじゃないの?」

「そんなこと!」

・・・・無いとは言えない状況だった。

実際に雅は、ユウに惹かれている。

 

どうしてさっきまで優しかったのに、

こんなに意地悪になったんだろう?

 

でもユウの事が、気になるのは事実だった。

 

何も言えずにじっと彼を見ていると、

雅のほうを見ていた彼が、

彼女をぐっと引き寄せた。

 

「ユウくん!」

「・・・・・逃げないのか?」

 

深い闇を映したような

危険な目だった。

 

雅はどうしても、抵抗できなかった。

 

 

 

 

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