いばら姫LOVE AGAIN

<第十七章>離婚宣告

 

 

翌日も、その翌日も

ユウは来なかった。

 

次に精密検査を受ける日は

二日後と決まっていたが、

今のところ日常生活に

支障は無いとのことだったので、

今度の検査が大丈夫なら、自宅に帰れるらしかった。

 

その連絡を母親に入れるために電話したが、

一通り話した後

ためらいがちに母親から切り出された。

 

「雅、山中くんのことだけど。」

「何?」

急に緊張が走る。

良くない話なのは、聞く前からなんとなく分かった。

 

「昨日彼がうちに来たの。」

「そう。」

雅は何を言われるのかと、

固唾を呑んで待った。

 

「あなた、山中くんの事だけ思い出せないんだってね?」

了に聞いたのか。

大事な話しだし、黙っておく意味も無い。

知っていても当然だと思った。

 

「うん。他はほとんど大丈夫なんだけどね。」

しぶしぶ彼女は言ったが、

 

『もうすぐ思い出せそうなんだけどなあ・・・』と思っていた。

 

「彼がね、このまま自分の事を思い出せないのなら

責任を取って、離婚したほうがいいんじゃないかって・・・・。」

母親がそう言うと、

彼女の目の前が真っ暗になった。

 

一瞬何も聞こえなくなる。

 

「雅!どうしたの?」

何度も母親に呼ばれ、意識が戻ってきた。

 

「・・・大丈夫。」

ゆっくりと言う。

 

“何だろう?ぜんぜん大丈夫じゃない。”

 

身体の一部をもぎ取られたような、苦しさだった。

だけど母を心配はさせたくない。

 

そのまま何とか電話を切ると、

その場にしゃがみこむ。

 

血の気が引いているのが、分かった。

 

 

しばらくその体勢でいると、

肩を叩かれた。

 

「大丈夫か?」

振り返るとユウだった。

スッと肩を貸してくれ、椅子まで連れて行かれる。

 

そして、いつものホームランバーを渡された。

 

雅はそれを受け取って、口にする。

アイスもそうだが、

ユウの存在が安心感を与えてくれた。

 

 

 

 

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