いばら姫LOVE AGAIN <第十一章>

もう少し、あと少し その2

 

 

「・・・・!?」

 

彼にいきなり人前で抱きしめられて

雅は恥ずかしかったが、

あまりに真剣なので、

止める事ができなかった。

 

筋肉質な身体から伝わる体温と、

心臓の鼓動が

雅の体にも響いてくる。

 

なんだかこうされていると、

とても切ない気持ちになってきた。

苦しいような、甘いような

しばらく忘れていた感情だった。

 

 

 

彼女が、何かを思い出しそうになったその時、

頭が割れるように痛くなった。

 

うずくまる雅を、

彼は心配そうに見つめていたが、

ゆっくりと彼女をイスに座らせた。

 

「ごめん。」

 

謝りながら、雅の背中をさする彼を見つめながら

彼女はあと一つ、記憶のパーツが見つかれば

全て思い出せるのに・・・・と、

悔しい気持ちだった。

 

 

 

この後、彼が肩を貸してくれ、

雅は自分の病室へと戻った。

黙って立ち去ろうとした彼に、

彼女は名前を聞く。

 

「ユウと呼んでくれ。」

そう彼は言って、去っていった。

 

「ユウ」

 

その名前には覚えがあったが、

思い出そうとすると、また

頭痛の波が襲いそうになる。

 

とりあえず無理はしないようにしようと

彼女は思った。

 

 

 

 

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