灼熱☆バケーション【後編】

〈第三十五章〉 大円団

 

 

旅行の翌日から、カナが

まともに歩けるようになるまでの二週間。

 

スーツ姿でリムジンに乗った翔が、

毎日会社まで、カナを送り迎えする姿が

目撃されるようになった。

 

翔のセレブぶりと、二人の仲の良さは

かなり目立っており、会社中の噂になった。

 

タカヒト以外の営業部の面子は、

あからさまにがっかりしていたし

ひろこ以外の分析室のメンバーは、

カナの彼氏の年収について、噂していた。

 

 

 

「すっかり公認になっちゃったね。」

駅前のいつものスタバで、

ひろこがカナに言うと、

彼女は恥ずかしそうに笑った。

 

「これが本当の怪我の功名だ。」

まだ少し腫れている右足を見ながら、タカヒトが言う。

「カナちゃんも、変なデートの誘いが無くなって楽になったんじゃ?」

 

「確かにこんなに楽なら、早く公にしておけば良かった。」

カナがふふふと笑う。

「黙っておく必要なんて、無かったわ。」

 

「男泣かせだよねー、カナちゃん。」

タカヒトが呆れて言った。

「営業部みんな、がっかりしてるよ。」

 

「タカヒト、大げさよ!」

と、カナが笑うが

実際は営業部どころか、社長以下の既婚未婚問わず

社内の男性陣はほぼ、カナの恋人発覚にがっかりしていた。

 

”知らぬは本人ばかりなり。“である。

 

タカヒトとひろこは目配せしあった。

『まあ、カナちゃんが幸せなら良いよね。』

 

そうこうしているうちに、翔がやってきた。

先日4人での旅行の間に、

九州に行っていたお父さんからの

大量のお土産を分けてくれると言う事で、

4人で集まったのである。

 

次は結婚式か?などと言いつつ、

割と気軽に集う事ができるようになって、

ひろこは嬉しかった。

 

「この際結婚式も、四人でやる?」

と、カナが冗談を言う。

 

「それも良いかもね。」とタカヒトが言った。

 

「おーい、ちょっと手伝ってよ!」と、

紙袋を大量に抱えた翔が、

店の扉の前で立ち往生している。

タカヒトが目を丸くした。

「あれ、4人分?」

 

「いや、私はもらったから

タカヒトとひろこ先輩の二人分じゃ?」

カナが言う。

 

店が開けそうなほどの土産に、三人は大笑いした。

 

「笑ってないで、誰か手伝ってよ!」

翔が、タカヒトを見ながら叫ぶ。

 

「・・・誰かって、俺の事めっちゃ見てるし・・・・。」

と彼がしぶしぶ手伝いに行くのを

ひろことカナは楽しそうに見ていた。

 

店の外では、アブラゼミがうるさく鳴いている。

 

今年の夏も、まだまだ賑やかになりそうだった。

 

 

 

 

灼熱☆バケーション 【完】

 

 

次灼熱☆バケーション〈あとがき〉へ

 

 

 

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