灼熱☆バケーション【後編】

〈第二十七章〉 空白の時間

 

 

タカヒトが慌てて目覚めると、

ベッドには誰もいなかった。

真夜中だし、

外は嵐である。

 

出かけられるはずも無いのに

他の部屋にも、風呂にもひろこの気配は無かった。

 

何が起こったのか、不安で仕方ない。

変な汗をかいたので、

空調を入れた。

 

どれだけ待っただろう。

一時たって

ひろこの戻ってきた音がした。

中庭に通じる出口が開く。

 

「起きてたの?」

と、彼女はタカヒトに聞いた。

雨に濡れている。

 

「カナちゃんがね、熱を出したの。

中野君が氷を貰いに行く間だけ、となりに居たんだけど

びっくりしたでしょ?ごめんね。」

そう言いながら、

水滴をタオルで拭いていた。

 

彼女の左手の薬指に

リングが光っているのを確認して

タカヒトは安心した。

 

「ちょっと、お風呂に入るね。濡れたし。」

ひろこが言うと、

タカヒトは、その背中を抱きしめた。

 

「どうしたの?一緒に入る?」

ひろこが笑いながら言う。

 

タカヒトはゆっくりと頷いた。

 

 

 

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