灼熱☆バケーション【後編】〈第二十五章〉 

ワルイ夢 その5 狼狽

 

 

夢の中で抱き合う

タカヒトとカナの前に、ひろこが現れた。

 

「二人とも、何をしているの?」

彼女が咎めるように言い、

ひろこの顔色が変わった。

 

二人は全裸で抱き合っている。

言い訳はできない状態だった。

 

「タカヒトも、私を裏切るの?」

ひろこの目が暗い色になる。

いつか見たような、表情だった。

 

「ごめん、違うんだ!」

タカヒトが慌てて叫ぶ。

 

夢の中でもひろこの傷ついた顔を見るのは

イヤだった。

 

誰かのせいではなく、自分のせいで

彼女が傷ついている・・・・と思うと

苦しかった。

 

「何が、違うの?」

言い方こそ優しいが、

どこか突き放すように聞こえてくる。

 

「タカヒトの本気は、その程度だったのね。」

彼女は言うと、

薬指に光る指輪を外した。

 

タカヒトが、やっとの思いで買ったあの指輪だ。

 

それをひろこは彼に握らせる。

「これ、返す。もういい。」

 

「ひろこさん!!」

彼女が出て行く音がして、

タカヒトが慌てて起き上がる。

 

「カナちゃん、ごめん!」

と言った途端に、目が覚めた。

 

 

 

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